インターネットカフェ特集:復活するインターネットネットカフェ

2003.11.03 277号 4面

今、インターネットカフェ(以下ネットカフェ)が熱い。さまざまなスタイルのカフェの登場により、利用者が増加。単体のみならずさまざまな既存業種と複合により、集客効果やプロモーション利用、空き物件の利用などさまざまな恩恵をネットカフェはもたらす。ネットカフェは、前年二桁割れも珍しくない外食産業の救世主となりえるか。

(経営コンサルタント・(有)マネジメントプロセス代表取締役 三浦紀章(中小企業診断士))

日本でのネットカフェの登場は一九九五年の京都。一般市民にインターネットの存在がまだ知られていない、ウインドウズ95の時代に、大学などの研究目的での利用を中心として始まった。その後、話題性やPRから、外食産業やデベロッパーなどが相次いで参入したが、携帯情報端末の普及、家庭やオフィスでのパソコン普及率の上昇に伴い、九七年ごろをピークに下火となり、都内では最盛期の四分の一ほどまで減少したともいわれた。

ところが、二〇〇一年ごろから状況が急変。さまざまなスタイルでネットカフェが復活し、不況の中で注目を浴びることとなった。

ネットカフェといっても厳密な定義は存在しない。フリードリンクや自動販売機なども含め飲食サービスがあり、インターネットにアクセス可能なパソコン端末を客が自由に利用できるということであれば、ネットカフェといわれ、近年では、複合カフェとも呼ばれている。

日本においてのネットカフェは、大きく四つに分類できる(表1参照)。ビジネスユース型は、ビジネスマンが対象なので立地が限られる。飲食サービス型は、飲食店内にパソコンを設置するもので、一部ハンバーガーショップで見られるが融合が難しい。現在の主流はマンガ喫茶型。これらは、ビリヤード、ゲーム、映画鑑賞など多機能を有していることも多く「複合カフェ」のゆえんとなっている。最後に今後確実にニーズが増えていくと思われるのがオンラインゲーム型である。表2・図1を参照して欲しい。

ネットカフェは、歴史が浅いため、店舗数や市場規模などの統計数値はないが、マンガ喫茶系ネットカフェが台頭している事実を踏まえると、約四〇〇〇店以上はあるのではと推測される。ちなみに国力を挙げてのネット先進国として取り組んでいる韓国の状況は図2のとおりである。

ネットカフェの復活はマンガ喫茶がキッカケといわれている。低迷が見えはじめたころ、一商材として導入された。当初はウイルス発信やアダルトサイト閲覧などダークな使われ方も多かったが、会員制を導入することにより解決した。現在は、DVDや映画、ゲームなどの利用も多くなっているため、著作権問題の解決、また、健全に業界を発展させるためにと、二〇〇一年日本複合カフェ協会が設立されるまでに至り、八二社、約五〇〇店が加盟している。

このようにネットカフェは、複合カフェとも呼ばれているようにニーズの幅が広い。ニーズに合わせた店舗設計を行い、時間当たりの料金体系を敷き、席を稼働させればもうかる。ネットカフェの売上高の算出式は、表3で表せる。

ポイントは席数と稼働率だ。席についてだが、大きくはオープン席と個室に分かれる。完全な自分の空間が保たれる個室だが、個室ばかりだと怪しい雰囲気になり、スペースをとるので坪効率も悪い。店頭のオープン席で客だまりを作り、入りやすさを演出して、店奥の個室に引き込むという演出が良い。問題は個室とオープン席のバランスだが、立地と地域ニーズによって分かれよう。

近年のニーズは、アダルトサイト閲覧や休憩などの古典的ニーズに加え、カップルがデートのスポットを探しにきたり、女子高生が親や学校にばれずにアルバイトを探しにきたり、子供が集団でオンラインゲームにきたりと幅広い。ニーズに合わせたレイアウトがポイントだ。

また、近年の傾向から禁煙にして喫煙ルームを設け、トイレを完備、席はパソコンのほか、DVDデッキ、ビデオデッキ、CCDカメラ、ヘッドフォン、座り心地のよいイス、もしくは、ソファを設置することが必要であろう。TV、CS/BSチューナーまでつけるかどうかは疑問符がつく。

一方、稼働率である。表4は、ある郊外駅周辺の複数のネットカフェの定時観測による稼働率調査の結果である。平均すると三一・四%となるが、さまざまな店舗やチェーンの聞き取り調査においても特殊な立地を除き、だいたい三〇~五〇席で三〇%が目安となっているようだ。

稼働率が下がる深夜を長時間で割安なパック料金にしたり、リスクは上がるが会員制を敷かずにフリーにしたりと工夫が見られるが、注目されているのがオンラインゲームである。表2・図1にもあるように、近年はオンラインゲームのニーズが高い。また、オンラインゲームは、一人ではなく仲間と集団で来店し、長く利用していただけ、坪効率も良いという利点がある。オンラインゲームを狙うのであればシングルオープン席を多く取るべきだ。

ネットカフェの魅力は、低投資ということにある。あるチェーンにおいては、投資額の目安は一坪五〇万円という。場合によっては二年、多く見積もっても五年で回収できると予測される。

また粗利益が高いことも魅力だ。もともと売上高がそのまま粗利益みたいなビジネスなので、雑誌やフード原価をどの程度にすべきかがポイントであるが、八五~九〇%の粗利益率は見込まれる。稼働率アップのために週刊誌などの雑誌は必要であろうが、単行本のマンガまでは必要ないと思える。

主だった費用は、まず人件費。三〇坪程度であれば一人でオペレーションが可能と思われる。また、通信速度の速い光ファイバーのFTTH回線と液晶画面のパソコンは必須であろう。パソコンシステムについては、インターネットに加え、ゲームなどのコンテンツが大事であるが、このような管理を自分で行うか、FCに加盟してFC本部の協力を仰ぐかは判断の分かれ目だ。トラブルや保守、今後のコンテンツの充実などを期待するとFC加盟の方が無難と思われる。

問題は家賃であるが、これは認知と集客に関係がある。ネットカフェは、二階立地など家賃の低い物件でも成立するが、そのため、オープン後の認知率が低く、軌道に乗るまでの時間が長いことが上げられる。そのため、一等立地が望ましいが、やはり家賃が高い。そこで、集客力がある物件との複合化も一考ではないか。事実、マンガ喫茶を始め、書店、ビデオ店との複合、パチンコ店の二階などの例があり、今後は飲食店の二階や飲食ビルのテナントなども考えられよう。

この場合、本業のプロモーションとしてネットカフェの一時間利用できるチケットを配布しても、本業の収益には響かず、ネットカフェの稼働率を上げられる。表5でも分かるように、ネットカフェを利用したことのない人は六一%。認知が課題であることは間違いない。

また、歴史の浅い業界であり、全般的に接客サービスやオペレーションレベルも低い。既存業種において、高いサービス技術、オペレーション技術を有している企業は、競合レベルが低い今が参入のチャンスであろう。

この業界は、変化のスピードが早く、図2の韓国においても二〇〇二年末の店舗数の減少はこのことを表していよう。日本でも今後は、マンガ喫茶型からオンラインゲーム型へと変化することが予想される。オンラインゲームの市場規模は二〇〇一年一四億円が二〇〇二年には六〇億円まで拡大し、二〇〇三年は二二五億円と予測されている。

オンラインゲームを踏まえた新しいネットカフェを早期に確立し、消費者に提案できれば市場を席捲することも可能であろう。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら