百花繚乱!立ち食いそば:「そばよし」おろしそば/どんぶりご飯

2004.08.02 288号 23面

東京は中央区日本橋の「そばよし」は、老舗鰹節問屋の一三代目が三年前に開店した立ち食いそば店。

この店の注目すべきは濃厚なうまみの“つゆ”である。温かいかけつゆをすすった瞬間に広がる風味は、「香」というよりも「味」に近い。

つゆのだしには、ソウダ節やサバ節をほとんど使わず、本カツオだけを使用している。鰹節問屋だからこそできるぜいたく極まりない手法だ。

このだしに加える甘みと塩分は必要最小限。主役のカツオだしを演出する脇役にすぎない。当然、注文ごとに一人前ずつ温めて提供している。

また、辛み大根を使用した夏季限定の「おろしそば」は、そば好きを唸らせるこの店の風物詩。大根は一人前ごとに縦長の棒状に切り揃えておき、注文ごとにフードプロセッサーで一気におろす。こうすることで、大根の末端部分と先頭部分を均等に切り分け、一人前ごとの辛みのばらつきを防ぐ。また、おろしたての鮮度を常時提供している。

このおろしそばは、おろしたてならではの鮮烈な辛みが、暑さでだれた身体をシャキッと目覚めさせてくれる、まさに夏向けの名品である。

この店のもうひとつの、そして最大のお楽しみが、カウンター上に置いてある粉カツオの小瓶だ。ほかほかの白飯の上にたっぷりと振りかけ、醤油を数滴たらして食す。これ目当ての常連客も多い。

このほど近隣の人形町に初の支店を開業。関西風うす味やいりこだしのうどんがもてはやされる中で、カツオ中心のだしを売り物に人気を博している。だしの取り方の秘密は、「普通の取り方とは違う」とだけしか教えてくれず、残念。

◆「そばよし」(東京都中央区日本橋本町一‐一‐七)営業時間=午前7時30分~午後8時、土日祝休

◆青木剛理=立ち食いそばの発展・認知高揚を目的に、ホームページ「立ち食いそば紀行」(首都圏の立ち食いそば店ランキングなど/http://www.gori.sh//)を主催運営。当連載は約六〇〇軒強の食べ歩き実績から超必見店を紹介。

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