ヒットメニュー列伝 近代メニューに名を残す逸品(41)モダン焼き

2006.12.04 322号 14面

お好み焼きといえば「粉モノ料理」という風に思われている。でも本当に「粉を焼く」のがお好み焼きを作ることかというと、「実はそんなことはないんだろうなぁ」と、大阪のお好み焼きを食べると思う。

お好み焼きは、キャベツに代表される野菜や具材を最小限の粉でつないで焼き上げた料理だ。つまり「粉が必要」な料理なのだけれど、「粉を食べる」料理ではない。そんなことを如実に感じさせるお好み焼きが大阪からやって来た。商業施設「TOKIA」(東京都千代田区丸の内)に出店した「お好み焼き きじ」の「モダン焼き」である。

モダン焼きは、お好み焼きで焼きそばを挟んだものだ。お好み焼きの本場、大阪においても同じ認識だろう。つまり「粉料理の一派」なのだが、この店のモダン焼きは粉料理とは思えない。焼きそばが粉と一体となって口の中に入ってくる不思議な味わいで、まるで「焼きそばで作ったお好み焼き」というような食感にビックリする。

麺一本一本がバラバラにならずにまとまっている。粉を糊のようにして焼きそばを固めているからほどけないのかというと、そんなことはなく、口の中に入れた途端に、パラッとほどけて普通の焼きそばに戻っていく。

ジェルで固めるのでなく、最小限のスタイリング剤の助けを借りて、抜群のテクニックで整えられたナチュラルなヘアスタイル、といった感じである。クニュクニュとした小麦粉麺の食感がなんとも楽しい。

山芋、卵、粉。それに絶妙なるタイミングと豊富な経験で麺が見事に群れをなして一つにまとまっている楽しい料理。何より、焼きそばをコテにのせてパクリと食べることができる意外性。「…ならでは」というのを実感する料理だ。

◆「お好み焼き きじ」(東京都千代田区丸の内2─7─3 東京ビル TOKIA B1階 電話03・3216・3213)

((株)OGMコンサルティング 代表取締役社長 榊真一郎)

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