トップシェフの旬菜塾:2月 菜の花
アブラナ科。地中海沿岸原産。「菜の花」とは、アブラナ属の植物(油を取るものは菜種とも)のツボミと花茎の呼称。弥生時代には中国から渡来しており、安土桃山時代には採油目的で栽培されていた。明治に、キャベツ類をかけあわせて改良された西洋種が入ってきてこちらが主流になる。日本で食用に用いられるようになったのも、明治時代から。優れた緑黄色野菜で、β─カロチン、ビタミン類、鉄、カルシウム、カリウム、食物繊維が豊富。エネルギー100g中28キロカロリー(ゆで)。
(野菜提供=(株)つま正)
○分とく山 野崎洋光店主
◆菜の花松前漬
〈使用食材〉(10人前)
菜の花(2束)刻み昆布(50g)ニンジン(60g)調味料A(水80ml、酒20ml、醤油60ml、みりん40ml、砂糖20g)
〈調理方法〉
(1)菜の花を2つに切り分け、歯ごたえが残るよう塩を入れた熱湯でゆで、水にさらし、熱がとれたら水気を絞る。ニンジンは3cmの織切りにする。
(2)調味料Aを鍋に合わせ、ひと煮立ちさせて冷ます。
(3)(1)と刻み昆布を(2)に漬ける。
〈ポイントと応用のヒント〉
ご飯によくあう、簡単松前漬。同じ方法で、ゴボウ、タケノコ、葉ワサビなどに応用できる。菜の花をゆで過ぎず、水にさらし過ぎないように。
〈菜の花を生かすポイント〉
他の葉野菜に比べばらつきがなく、煮物、焼き物、揚げ物とさまざまな調理にあう使い勝手の良い野菜です。しばらく切り口を水に漬けてからゆでると、シャキッと歯切れよく仕上がります。春を表現する穂先の美しさが魅力ですが、茎も利用すると料理の幅が広がります。ゆで過ぎ注意です。
○アクアパッツァ・日高良実オーナーシェフ
やわらか菜の花のスパゲティ
〈使用食材〉(2人前)
スパゲティ(160g)菜の花(120g)ニンニク(みじん1/2片)、赤唐辛子(種をとったもの1/2本)EXVオリーブ油(適量)塩(適宜)
〈調理方法〉
(1)たっぷりの熱湯に塩を入れ、パスタと菜の花をゆでる。
(2)鍋にEXVオリーブ油、ニンニク、赤唐辛子を入れて火にかけ、ゆっくり香りを出すように炒め、ニンニクが色づいたらパスタのゆで湯を少々入れて火からはずす。
(3)アルデンテに仕上げたパスタと、軟らかく煮えた菜の花の水気を切って(2)の鍋に入れ、菜の花を潰すように混ぜ、ソースにからめる。塩、コショウで味を調え器に盛る。
〈ポイントと応用のヒント〉
あえて菜の花を軟らかく煮て、クリーミーさを出しソースとした。赤唐辛子のピリ辛がアクセント。アンチョビを加えるとよりイタリアンらしくなる。キャベツ、ブロッコリー、マメ類で応用できる。
〈菜の花を生かすポイント〉
黄色と緑の色合い、独特の風味、そして季節感を演出できる点が魅力です。今回はプーリア地方の料理、「チーユ・ディ・ラーパを使ったオレキエッテ(耳たぶ形パスタ)」をヒントに作りました。野菜好きなイタリア人が好む、野菜を軟らかくゆでてソースにする手法は、イタリアンらしさが出てお薦めです。
○ヒルトン東京ベイ「王朝」 宮本莊三料理長
◆菜の花と海鮮の黒酢マスタード
〈使用食材〉(3人前)
菜の花(10本)エビ(5皿)イカ(50g)ホタテ(3個)長ネギ(細切り適宜)卵白(1/4個分)調味料A(黒酢大1、マスタード大1、塩小1、ごま油小1/2、マヨネーズ大1.5)調味料B(塩適宜、コショウ適宜、片栗粉小1)
〈調理方法〉
(1)イカ、ホタテは薄切り。エビは半分割りに切り、卵白と調味料Bで下味を付ける。
(2)菜の花は硬い部分を切る。
(3)1リットルの熱湯に対し、塩大0.7、サラダ油20mlを入れ、(2)を八分程度ゆでてザルに取る。
(4)同じ湯で(1)をボイルしてザルに取り、水切り後キッチンペーパーで水気を取る。
(5)あわせた調味料Aで(4)をあえ、別皿に取り、残りのたれで(3)をあえる。 (6)器に盛り付け、細切りネギを添える。
〈ポイントと応用のヒント〉
相性の良い黒酢とマスタードにマヨネーズを加えてマイルドな味に仕上げた。湯葉で巻いてたれを付ける形でも良い。豆板醤を加えてピリ辛にしたり、海鮮のかわりに豚ばら肉にするなどアレンジしやすい。調理のオペレーションを合理的に構成。
〈菜の花を生かすポイント〉
歯ごたえと色味が魅力的な食材です。調理前には、必ず塩とサラダ油を入れた熱湯でさっとボイルを。色止めができ、うまみを引き出すことができます。また、中華では余計な水分が出ないでほしい調理法が多いので、下ゆで後、水にさらさず水分を飛ばします。炒める時は下ゆでしたものを最後に投入し、全体とあわせる程度にします。