外食史に残したいロングセラー探訪(9)モスバーガー「モスライスバーガー」

2007.07.02 330号 12面

今年で誕生20周年を迎える「モスライスバーガー」。発売当初は「ライスを挟んだバーガー?」と勘違いしたお客もいたというほど斬新な商品であり、売り切れる店も続出した。今でこそ「ライスバーガー」というカテゴリーは日本人の食生活に定着しているが、発売までには大変な苦労があったという。

「開発当初、コメは具材と考えていた」と話すのは、(株)モスフードサービス商品開発部購買戦略グループリーダーの寺本和男氏。

日本人のコメ消費量が減少し、コメ余りが問題となった1980年代半ば、農林水産省からの話もあり、「コメを使った商品開発はできないか」と同社のライスバーガー開発プロジェクトがスタートした。

コメをひき肉と合わせたり、卵でくるんだりと、さまざまな具材をバンズに挟んで試してみたが、しっくりこない。そこで、「日本人はコメをどうやって食べるか?」と原点に戻って考えた末、「おにぎり」にたどり着いた。当時は、コンビニエンスストアでおにぎりが販売され始め、各社がさまざまな具の開発に躍起になっていた。バンズのかわりにご飯で具をくるんだり、挟んだりすればいいのではと発想を転換した。

そしてコメを使ったプレートの開発が始まったが、もちろん、世の中に「ライスプレート」を製造するメーカーなど存在しない。そこで当時、外食産業で急成長中の回転寿司に着目し、シャリ玉を形成する「すしロボット」からヒントを得てライスプレート製造機の開発に着手した。

だが、ご飯を型に詰めただけでは崩れやすく、逆に崩れにくくするために水分を多めに炊き圧力をかけるとコメの“粒感”がなくなってしまう。かといって、自然の食材にこだわる同社では、増粘剤などのつなぎは使いたくなかった。

そこで取り入れたのが「焼きおにぎり」の技術。表面に醤油を塗って焼くことで、崩れにくく、中はふっくらと仕上がり、さらに香ばしさが加わる。こうして、コメの「粒感」を出し、食感もよいライスプレートが完成した。

具材は、ハンバーグや焼肉をはじめ数多くの候補の中から「醤油風味の鶏つくね」に決定した。鶏肉がヘルシーであること、先に販売された「テリヤキチキンバーガー」が大好評だったこと、そして創業当時から「日本人の味覚に合ったハンバーガー」を作り続けてきた同社の理念にかなった「和のハンバーグ」であったからだという。付け合わせは、鶏肉との相性と色どりや食感から、インゲンと玉ネギのソテーになった。

そして1987年12月、日本初、いや世界初のライスバーガーが発売された。

ハンバーガーショップにあまり縁のなかった客層の足を運ばせるきっかけとなったライスバーガー。時代に合わせて具材のバリエーションを変化させながら、これからも日本独自の“バーガー”としてロングセラーを続けることだろう。

●企業データ

「モスバーガー」/経営=(株)モスフードサービス/所在地=東京都新宿区箪笥町22/開業=1972年6月/店舗数=1452店(直営76店、FC1376店、2007年4月末現在)

◆モスライスバーガー・クロニクル

1987年12月:「モスライスバーガー」新登場

1990年 3月:二代目「モスライスバーガー」※初代のリニューアル

9月:「きんぴらライスバーガー」(300円)※このとき「つくねライスバーガー」へ名称変更

12月:「やきにくライスバーガー」

1999年 2月:「モスライスバーガーえび竜田(たつた)」

10月:「モスライスバーガー六彩(ろくさい)がんも」「モスライスバーガー豚しょうが焼」※沖縄限定/期間限定

2000年 4月:「モスライスバーガー豚しょうが焼」※京都・滋賀限定/期間限定発売

2001年 3月:「モスライスバーガーかきあげ」(つくね終売)

12月:「モスライスバーガー海鮮かきあげ(塩だれ)」※定番として発売(かきあげ終売)

2002年10月:「モスライスバーガー黒ごまつくね(甘みそ仕立て)」※期間限定発売

10月:「モスライスバーガーハヤシ(ヒレカツと玉子)」※期間限定発売

2004年 3月:「モスライスバーガー豚しょうが焼」※全国で店舗限定発売

4月:「モスライスバーガー味噌カツ」※東海エリア限定(定番)

10月:「モスライスバーガー海老竜田」「モスライスバーガー蒟蒻(こんにゃく)(田楽風味)」※期間限定発売

2006年 2月:「モスライスバーガーカツカレー」※期間限定発売

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