お店招待席 ラーメンと食事の「風見鶏」(茅ヶ崎) 女性主体の店造り
「いらっしゃいませ!」「ありがとうございます!」。スタッフの大きな声が元気いっぱい店内に響く。ラーメンと食事の店「風見鶏」はJR茅ケ崎駅北口から歩いて三分、イトーヨーカドーの裏手にある。白い洋館のトンガリ屋根には風見鶏が立っており、女性の目を引くような建物。
オーナーの岩沢秀季さん(四一)は父親忠正さん(七八)の食品関係事業を手伝っていたが一九八七年、それまで温めていた夢を実現させるため独立を決心、東京都八王子市の中華料理店に無給で入り、経営や調理技術について修業。その後現在地(土地は父から借用)に四五〇〇万円の資金で三一坪の店舗を建設した。
店内はテーブル二九席、カウンター九席。設計図を四度も書き直しながら構想を練り上げただけに、動線の効率化をはじめ、オーナーのコンセプトも随所に具現化されている。
直線の多い客席のなかで、カウンターは厨房を囲むようにカーブを描いて、店内にソフトなイメージを与える。この幅が六〇㎝と意外に奥行があり、カウンターの客もゆったりした気分で食事が楽しめるという心憎い配慮も。
また、壁や天井には東南アジアの民芸品が飾られており、清潔で明るい感じがあふれている。
周りは大型店舗や商店街が軒を接するという立地に恵まれて、昼食時はその従業員たちが来店し並んで待つほど。日商の五割は昼の二、三時間で売り上げる。さらに日曜日ともなると買い物客の往来が多くなり、来客は一日中絶えることがない。
店の造りからして、客層の狙い目はズバリ女性主体。それだけに料理は油脂分控え目で、あっさり仕上げている。
メニュー構成は麺類が六割、ご飯類が四割で、売上比率もほぼ同じ。麺類の主力メニューは、ヤングにうけている三八〇円のうらめんは別格として、ごま味噌らうめん、豆腐らうめん(各六〇〇円)、五目野菜らうめん(六五〇円)、ネギピリらうめん(六八〇円)、ちゃーしゅうらうめん(八〇〇円)など。ご飯物では、ぎょうざはん(五八〇円)、チャーハン(六〇〇円)、マーボ豆腐はん(七〇〇円)、印度はん(七六〇円)、きのこはん(八〇〇円)。
この中で人気メニューは五目野菜らうめん。味の秘けつは白菜、クワイ、ニンジン、ギンナンなど八種類の野菜を、まず油通しすること。歯ごたえがよく野菜のうま味が引き出せる。これを豚肉といためてあんかけし、麺の上にのっけてうずらの卵をつける。ボリューム感がありながらヘルシーさがうけて人気があり、岩沢さんは「コストなど考えず、店の看板と思ってサービスしています」。
ラーメンのスープは八〇リットルの寸胴に一五キロの豚骨、鶏ガラを入れ、弱火で約二時間炊いている。この中には玉ネギ、ニンニク、ショウガ、ネギ、昆布も一緒に。一方、タレは通常のブレンドのほか、牛すじを入れて炊くのが特徴ともいえる。
繁盛の理由は地の利や好みの味のほか、調理時間の短縮にもあるようだ。時間帯により、短時間で食事を済ませたい客も多い。「時間をかければうまい料理ができるのは当然。いかに早く提供するかに苦心しています。もちろん、短時間で調理しても味は絶対くずしてはいけないので…」(岩沢さん)と、調理技術の研究や周辺機器の整備などを実践、クリアしている。
開店して五年、日商は二〇万円で平均来客数は三〇五人、月間売り上げは五〇〇万円に成長した。しかし「日商三〇万円が目標です。空き時間帯の効率化など、まだまだ研究する余地があります」と岩沢さん。一方、「誠意をもって接客や調理に励んでいれば、必ず反応があるものです」と自信ものぞかせる。
スタッフは男性三人、女性四人で妻みき子さん(三八)も貴重な戦力として加わっている。ユニホームは岩沢さんが中華風をイメージしてデザインしたオリジナルで、帽子は丸く頭にフィットし、エプロンは活動しやすいように配慮、紺色で統一している。
新しいメニューの開発にも意欲的で、近々風見鶏の名を冠したパーフェクトな料理を、ぜひ完成させたいと意気盛ん。閉店後ほっと一息ついた時など、将来は多店舗化を目指したいと、四一歳の夢は限りなく大きくふくらんでいく。 (はろ・いさむ)
住所/神奈川県茅ケ崎市新栄町一〇‐一三
営業時間/午前11時~午後8時30分
電話/0467(87)5245
休み/毎週火曜日