お店招待席 マグロ料理専門店「まぐろ家」(東京・九段下) 客層は管理職が90%

1993.11.15 40号 9面

地下鉄東西線九段下駅から二~三分のところ。この店は新潟鉄工系列のマグロ料理専門店として知られており、オープンしてすでに一五年になる。

店舗面積約三〇坪、客席は入口から奥に向かって広いサービス導線(通廊)があり、これを軸に左右にテーブル二〇席、すしカウンター六席、座敷二部屋(三六人)をレイアウト、トータルで七二人を収容できる。

内装はもちろん木造りで、そのやわらかさが心を落ち着かせる。店内のポイントに生花をディスプレーしてあり、これも心を和ませる。生花は一週間に一回の割で取り換えているとのことで、プロがアレンジしている。

この店の売りものは屋号のとおり、マグロ(ミナミマグロ)料理で、単品メニュー(六〇〇~八〇〇円)から会席料理(五〇〇〇円から)まで多様な料理を楽しむことができるが、マグロ以外にはスッポン、牛すきなども提供している。

店のおすすめメニューは、中トロたたき一五〇〇円、みなみまぐろ刺身一六〇〇円、中トロ盛合せ六五〇〇円、まぐろカマ一七〇〇円などで、酒のツマミによく出るという。

このほかの人気メニューとしては、まぐろステーキ一八〇〇円、まぐろ照焼一〇〇〇円、まぐろぬた九〇〇円、さらには特選料理として、まぐろ燻製一二〇〇円、まぐろ玉子の天ぷら一二〇〇円、まぐろホルモン香り揚げ一八〇〇円、まぐろちちころからし和八〇〇円、まぐろ皮酢五〇〇円などがあり、マグロ料理の通には大きく支援されているメニューだ。

日本料理には酒がつきものだが、この店の日本酒は新潟の銘酒朝日山、越乃寒梅、越乃白梅、信州の辛口烈火と銘柄を限定している。価格は五〇〇~一二〇〇円。

「あくまでもマグロ料理の店ですから、日本酒は控えめにしているんです。お客さんの中にはほかの酒を置いてくれという声もあるんですが、料理主体のお客さんが多いものですから、酒は添えものということなわけです」(渡辺源治取締役店長)

酒は常温状態でストックしてあるが、冷やが欲しい客にはクーラーで冷却したものを提供する。酒は七日以内に売り切るという考えで、常に質のいい状態で提供するという方針にある。

客層は四、五〇代の企業の管理職が主体(九割)で、全体の四割が会社関係の接待利用。客単価は昼九〇〇~一〇〇〇円前後、夜八〇〇〇~九〇〇〇円台で、昼三回転弱、夜〇・八回転、日商八〇~九〇万円といったところだ。

質の高い客層に支援され、バブルがはじけても比較的安定した経営状態にあるが、これは渡辺店長の人柄によるところも大きいようだ。

店長はこの店を任されて七年になる。三年間の約束が七年になってしまった。やる人がいないからと謙孫するが自然体で気負ったところがないので、客に安心感とやすらぎをアピールしているのだ。

この店を任される前は、本社の新潟鉄工でマグロ船の設計、積算、農機や船のエンジニアリングセールスを担当していた。それが一転してマグロ料理を売ることになったわけだ。

「最初はとまどいもし、反対もしたのですが、会社がお前のいうとおり、願いどおりにするから引き受けてくれということで、全包囲のお膳立てをしてくれていましたので、やむをえず引き受けることにしたのですが、いまではいろんな人に会えますし、すっかり気に入った仕事になっています」と渡辺店長。

①店の雰囲気②サービス③味というのは渡辺店長の店舗運営の三本柱。これは見事に体現されている。店内の清潔さがそれを象徴的に物語っており、トイレ回りはその証として強い印象を受ける。

サービスは常に自然体。とくにミセスの従業員が、着物姿の美しい立ち居振舞いでキビキビしている。味づくりは本家上又調理師会(宮内庁御用達)出身の中沢虎夫板長が担当、料理が画一化しないよう創意工夫に余念がない。

はやる店、グレードの高い客層を集客する店というのは、本質的な面が違うのだ。

(しま・こうたつ)

・住所/東京都千代田区九段北1‐2‐8

・電話/03(3264)7289

・営業時間/午前11時~午後1時30分(ランチタイム)、午後5時~10時(土日祭日休み)

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