回転寿司 元禄寿司、元祖ゆとりの店舗オペレーション
「回転すし」といえば、「持ち帰りすし」と並んで和食ファストフードの代表格だが、この業態はイートインとテイクアウトの二つの機能を有しており、フードサービスの中でも極めて高収益のビジネスだ。同業態は元禄寿司が例の「ベルトコンベア式」の特許技術を確立して、長く市場を独占していたのだが、一一年前に特許が切れたのを契機に、新規参入チェーンが増え、その結果、独自のすしマーケットを形成している。この市場規模は数千億円とみられているが、根強いすし需要に支えられて、市場の伸びにはまだまだ可能性を秘めている。しかし、消費の低迷と同業者および異業態間の激しい競合、競争もあり、市場は新たな局面を迎えている。単なる効率、スケールの追求から、ゆとりとクオリティの店舗オペレーションへと、回転すしチェーンも意識改革を求められてきているのだ。
元禄寿司(東京本部‐豊島区池袋)は、今さら説明するまでもなく、“回転ずし”の元祖として知られており、関東地区を中心にして東北、札幌などで一二五店、このほか、関西地区において別法人で二〇店をチェーン化している。
回転ずしのパイオニアであると共に国内有数のチェーンであるわけだが、しかし、一一年前に回転式(ベルトコンベア)の特許が切れたことから、その後は多くのライバルチェーンが登場することになり、ハード面での決定的な優位性はなくなってしまっている。
だが、ライバルチェーンが多く登場してきたことにより、一方においては回転ずしの存在を消費者に強くアピールすることになり、市場を大きく拡大させる結果にもなっている。
元禄寿司にとっては競合チェーンが増えてきたことで厳しい面もあるわけだが、しかし、それによって質的向上を高めることにもなっているのだ。
店舗出店については、市街地型と郊外型の二本立てでおこなっているが、この規模は前者が三五~四五坪、後者が五五坪というのが目安で、とくに東京圏においては市街地での物件確保が難しいことから、環状七号線を境にするサバーバンブの出店に力を入れているところだ。
メニューは四〇種。価格は以前は一皿一二〇円均一だったが、昨年7月から一二〇円、一六〇円、二四〇円の三つの価格導入に踏切った。
これは食材コストの上昇分を吸収するための価格政策であるが、逆に低コスト商品を高く売らないという消費者環元の考え方の実現でもある。
店舗当たりの売上げは、東京地区が月間売上げ一五〇〇万円、仙台地区で同一二〇〇~一三〇〇万円、札幌地区一二〇〇万円で、全体売上げでは九二年度が一三〇億円(直営部門六九億円)、九三年度は四%増の一三五億円(同七三億円)を目標にしている。
今後のチェーン戦略については、店舗オペレーションや質などソフト面で、他社と差別化を図っていくとしており、徹底して“すし専門店”としてこのクオリティと、やすらぎのある空間づくりを志向し、独自の市場を創造していくとしている。