トップインタビュー:麺食・中原明代表取締役社長

1994.04.18 50号 5面

‐‐最近、街中でナマコ壁の蔵をイメージした“キタカタラーメン”の店をよく見かけますが、あれは社長のところのチェーン店ですか。

中原 店舗造作などは似たところがありますが、いろんなチェーンがあるようです。現在、私どもの出店数は直営四店、フランチャイズ二四店の計二八店で、チェーンビジネスとしてはまだまだのスケールです。

‐‐似た店が多くて、傍目にはどれがどれだかわからないわけですが、他チェーンとはどう差別化されていますか。

中原 かつてのサッポロラーメンチェーンの乱立のようにハードでは差別化しにくい面がありますから、やはり味づくり、メニュー構成、店舗運営といったソフト面で、オリジナリティをアピールしていかないとダメですから、私どもはこの点での差別化です。

‐‐たとえば、どういった点ですか。

中原 最大のポイントはメニューがシンプルだということです。私どものメニューは醤油味一つで、喜多方ラーメン(五三〇円)、喜多方ねぎラーメン(七〇〇円)、喜多方焼豚ラーメン(七〇〇円)、喜多方ねぎ焼豚ラーメン(八五〇円)、喜多方冷やしラーメン(六五〇円)、餃子(三五〇円)といった商品構成で、数の上では六種類になっていますが、冷やしを除くスープラーメンはトッピングが違っているだけで、基本的にはたったの一品目です。

スープは醤油味一つですから、あとは具を変えるだけでいいわけです。これだとアルバイトの人間だって調理ができます。ということは店舗のオペレーションもよりシンプル、低コストになるということであるわけです。

‐‐非常に合理的な考え方ですね。スープはどういう作り方ですか。

中原 トンコツベースですが、これは店で作りますと、バラツキが出てきますから、すべて仕様発注で専門の業者に作らせています。麺はもちろん、共同出資者の坂内食堂からの供給です。

しかし、野菜など鮮度の要求される食材については、地元との交流を密接にする意味でも、店サイドで地元から仕入れるシステムにしています。

また、焼豚は高度な技術は必要ありませんから、店で作らせています。これら店サイドでの自由裁量が二割くらい。少しは店での手づくり要素を残しておかないと、従業員のヤル気も出てこなくなります。

‐‐なるほど、スープ、麺がプロ任せ、売りもののメニューは一つ、店サイドの手づくりも少しはある。マニュアルとハンドメーキングのシステムで、よく考えられた店舗オペレーションだと思います。

中原 このほかにも、店舗で使う食材を含め備品、消耗品をトータルで九〇アイテム以下におさえるなど、ムダをかかえない、営業管理が容易という考え方も取り入れているわけです。まあ、こういったオペレーションシステムが、他チェーンとの差別化になっていると思うのです。

‐‐かつてのサッポロラーメンがそうでしたね。どこもかしこも似たような店舗で、以たような味、メニュー構成。それが今では古いスタイルのものとして、消費者にそのインパクトを与えなくなってきている。

中原 実は私どもは単に喜多方ラーメンということではないわけです。私どもの店のコンセプトは装った女性が一人でも入れるということなんです。

サッポロラーメンチェーンは、どちらかというと男性志向の店構えになっていますが、私どもはテーブル席が主体ですし、常に清潔感(QSC)を重要視していますから、女性の感性に合った店づくりになっているわけです。

‐‐なるほど。ところで、今後のFC展開については、どういうお考えですか。

中原 現在、月間一〇〇件を超える問い合わせがありますが、いたずらに店舗数を拡大していく考えはありません。本当に私どもと末永くパートナーとしてやっていける方だけ、加盟店契約を交わしていきたいと考えておりますから、出店はより慎重に一店一店を積み重ねていく方針で、年間ペースで一〇店を考えております。

FC展開は大変に難しいビジネスです。出店数が多くなると、その中からどうしても不満をもつ加盟店が出てくることになるんです。

ですから、量より質の展開を実現していく方針で、適正規模では一〇〇店、年間売上げ一〇〇億円、それ以上いっても一五〇店舗くらいがコントロールできる限界と考えております。

‐‐現在、FC店は二四店ということですが、加盟はどういう条件ですか。

中原 いろいろと厳しい条件がありますが、まず基本的には1加盟者の人間性2二号店ができるまで、加盟契約者本人が直接店舗の運営に携われること3物事の価値観がわれわれと共通していること。

それと、立地条件につきましては、1総投下資金の一・五倍(年商)を売上げられる場所2月商六〇〇万円以上が確保できる場所(一二時間営業)3郊外型立地の場合は、店舗面積二〇‐三〇坪(駐車場一五~二〇台)、商圏一〇km、一〇万世帯(三〇~四〇万人)4都心型(テナント出店)店舗は一階、間口一・五間以上、一五~二〇坪‐‐といった内容です。

‐‐開業資金はどのくらいですか。

中原 不動産取得費を別にして、都心型の標準一五坪の店で、保証金を含む加盟料が二八〇万円、内装費二〇〇〇万円、厨房器具五〇〇万円、什器備品その他四〇〇万円の計約三二〇〇万円です。

これに対して、店舗コストは原材料三八%、人件費二五~二六%、この人員は店長ほかサブの正社員一人、パートおよびアルバイト二人の計四人体制で、営業時間は午前11時から午後11時、基本的には定休日を設けないで、月間売上げ七〇〇~八〇〇万円、営業利益が二四~二六%。

年間で約一億円の売上げになりますが、五年間で償却するシステムです。高収益チェーンビジネスといえますが、私は決して是非私どものFCをやりなさいとはいいません。店を開業しても月間五〇〇万円以下の売上げならサラリーマンの方がいい。何も苦労することはないわけです。

ですが、自らがヤル気があるなら、ビジネスとして成功のチャンスはありますよということなんです。本部にくる前に自分の足と目でいろいろと研究、リサーチしてくること、こういった初歩的な努力が成功の一歩になるわけで、本部の話を黙って聞くだけでは中身は判らないんです。

‐‐ありがとうございました。

(文責=しま・こうたつ)

◆取材メモ

“キタカタラーメン”の元祖。昭和63年5月、「会津・喜多方ラーメン坂内」のFC化を目的に、株式会社麺食を設立。しかし、その後、類似店が増えてきたので、平成5年度から他チェーンとの差別化を強化する目的で、会津・喜多方ラーメン「小法師(こぼし)」に店名を変更。

現在、直営四店、FC二四店の計二八店を出店しているが、人間性の尊重と信頼関係(和の精神)を基本に、チェーン化を推進中。本年度から年間出店ペース一〇店、目標一〇〇店、年商一〇〇億円。

・本社/東京都大田区大森本町一‐一〇‐一三

・資本金/一五〇〇万円

・年商/三四億円(5年度)

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