厨房のウラ側チェック(56)魚介類の鮮度を鑑るその6

1994.08.15 58号 22面

魚介類の理化学検査法であるアデノシン3リン酸(ATP)の分解生成物比であるK値やHx比(ヒポキサンチン比)のデータおよび揮発性塩基窒素(VBN)のフォローデータなどから各種の検査結果を鑑てみよう。まず、マグロの検査結果は、冷凍の作マグロのK値は上物で一一%以下、並で五%~二〇%である。Hx比は一%~二%程度で、VBNは一八mg%以下となっている。

これらを冷蔵庫で保管すると五%~一〇%程度は一日当たりK値がアップする。しかし、保管温度が高いとK値の上昇率はさらに高くなるので注意されたい。基準は冷蔵で五度C以下を保つことである。

次に、ハマチであるが、これには活〆、野〆、造りなどがある。これらのK値は、活〆ハマチ一五%前後、野〆ハマチで二〇%~四五%、造りハマチで一五%~四〇%とばらついている。保管する場合は、活〆ハマチで鮮度の良いものは三日~四日程度生食が可能であるが、野〆ハマチでは仕入日の一日~二日程度である。いずれも良い冷蔵庫内においての話である。

その他、築地市場から仕入れた魚種のK値、Hx比、VBNをら列する。カツオではK値三〇%~五〇%、Hx比一%~二%、VBN二〇mg%~二五mg%。銀ザケではK値二〇%前後、Hx比一%~二%、シロサケではK値三五%~四〇%、Hx比一〇%~一二%。マイワシではK値五%~一〇%、VBN一五mg%~一八mg%。トビウオではK値七%、VBN二三mg%。

最後に生食の判断基準からはずれる生マグロやイカなどの検査データを示してみる。生マグロでは、メバチマグロのK値が三四%~六〇%、ホンマグロではK値四〇%~六〇%、Hx比三%~八%、VBN二〇mg%前後であった。スルメイカではK値が六〇%程度、Hx比五八%、VBN一五mg%~二〇mg%であった。

このように、生マグロやイカなどではK値が異常に高い数値となるのでHx比を参考にし、さらにVBNの数値や細菌学的データを参照した方が良いと思われる。そして、官能的検査によって最終チェックをすることである。

次回は、冷凍作マグロにおける解凍法と保管の影響を述べてみたい。

(食品衛生コンサルタント 藤洋)

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