自然はおいしい、ナチュラルミネラルウォーター
「ただの水」の代わりに有料のナチュラルミネラルウォーターが商材となりそうだ。ヨーロッパ産のナチュラルミネラルウォーターは必須アイテムになりつつある。今年の夏の猛暑、水不足は、消費者のナチュラルミネラルウォーターの認知度を一気に高めた。ヨーロッパ産はファッション性のある容器、ヨーロッパの町や泉からとったネーミングなど魅力ある商品が揃う。
◆レストラン「ヴァンサン」
低価格で本格的なフランス料理を提供するレストラン・ヴァンサン。六本木のメーンストリートからはやや離れている。ナチュラルミネラルウォーターはエビアンとペリエ。特にエビアンは市販価格と変わらない価格で提供、食事と一緒に飲まれる。
ヴァンサンのシェフの城氏は銀座のレカンから二年半前に独立した。後発などの理由で差別化を図った。昼食は三五〇〇円。夜は平均客単価七五〇〇円だ。一品当たりの単価は一五〇〇円。
城氏は低価格で本格的な味を支え、素材を安く入手するために野菜、魚などの価格は早朝、城氏の自宅にファクシミリで市場から情報が送られてくる。それをほぼ産地直送の状態で仕入れている。
エビアンはガラスボトルをシャンペンのように氷の入ったバケツに入れて提供する。フランスの一流のレストランと同じスタイルだ。
価格はほとんどマージンをのせていない。この理由について城氏は、ナチュラルミネラルウォーターは価格が知れ渡っているためとする。この理由をさらに深く掘り下げると、以前は無料で提供していたので、実質的には値上げなのだ。
・店名/ヴァンサン
・所在地/東京都港区六本木五‐一八‐二三・イナックビルB1F
・電話/03・3589・0035
◆バー「キャナリー」
銀座日航ホテル地下にあるバー・キャナリー。週末にはピアノの生演奏とシャンソンの歌声が響く。ヨーロピアンスタイルの内装と世界各国のウイスキー、カクテルなどがある。落ち着いて飲める雰囲気のバーだ。ここではヴィッテルの五〇〇ミリリットルが水割り、チェイサーに使われる。顧客の邪魔にならず、店内での持ち運びにも便利で、ウイスキーの味をまろやかにするという。
キャナリーは知る人ぞ知る、シャンソン喫茶の発祥の地。昭和34年からスタートしている。菅原洋一氏らが巣立っていった。経営体制は変わったがシャンソンを聞かせる伝統は脈々と受け継がれているのだ。
顧客は銀座界隈の大手企業のビジネスマン。平均客単価は五〇〇〇円くらいだ。銀座のバブル崩壊の影響で、ビジネスマンも節約ムードとなっている。
ヴィッテルはボックス席ではサイドテーブルを使い、カウンターでは顧客の目の前で供給する。
五〇〇ミリリットルを選んだのは一・五リットルや一リットルでは大きすぎて余ってしまうためだ。また、三五〇ミリリットルでは小さすぎ、足りなくなってしまい、二度手間になるためという。
・店名/キャナリー
・所在地/東京都中央区銀座八‐四‐二一
・電話/03・3571・4911
◆ヨーロッパ産の水を選ぶ基準
ナチュラルミネラルウォーターの基準は厳密にいうとヨーロッパと日本は異なる。
日本は加熱、ろ過などの処理を認めている。安全性は厳密な検査で確保しているので問題はないが、ヨーロッパは手を加えることを許していない。したがって、ヨーロッパ産は日本国内ではそのまま表示できるが、逆はできない。
現在、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機構)の下部組織、CAC(食品規格委員会)でナチュラルミネラルウォーターの世界規格について検討が進められている。
ヨーロッパ産のナチュラルミネラルウォーターを選ぶポイントは硬度だ。硬度とはカルシウムとマグネシウムの含有量から算出したもので、硬度が高い水がミネラルが多いと考えて良いだろう。硬度が高い水ほど風味のあるナチュラルミネラルウォーターになる。
水割り用にした場合、酒の味をまろやかにするのが硬度の高い硬水で、そのままの味を引き出すのが硬度の低い軟水だ。
無味無臭だからこそ、腕の見せ所で、実際に確かめながら、水を選ぶのも客へのサービスだろう。
ヨーロッパ、特にフランスは「ヴィッテルは新陳代謝を高める」など薬理効果を表示できるが、日本では薬事法上できない。もっぱら風味で食事や酒との相性を考えていくのが良いだろう。
◆ワントンウェルス
高田馬場のWANTONWELLS(ワントンウエルス)は無国籍居酒屋だ。アジア全般の料理、洋酒、できないものはないというカクテルがセールスポイントだ。使っているナチュラルミネラルウォーターはボルヴィック。水割りやウイスキーのシングルには料金の中に含め、ボトルをキープした顧客にのみ、一・五リットルと五〇〇ミリリットルを販売する。
ワントンウエルスは俗語で騒がしい泉の意味。その名の示すとおり、二〇代の後半をターゲットとする。場所柄で学生も多いという。平均客単価は二七〇〇円。ホテルで修行してきたバーテンダーがメニューに乗っている五〇種類以外のカクテルもつくる。つまみは五〇種類以上、日替わりもランチメニューで使う材料をうまく使う。
ボルヴィックは担当者の好みで決めた。名前がしゃれていて、味も日本人好みと判断した。
顧客が「水」を要望すると水道水ならば無料だが、ボルヴィックならば有料と説明する。ボルヴィックを注文するのは今のところ半々だが、一度頼んだ顧客はリピートしてくるという。
・店名/ワントンウエルス
・所在地/東京都新宿区高田馬場四‐九‐九
・電話/03・3369・0806