施設内飲食店舗シリーズ 聖路加ガーデン(東京・中央区)

1994.11.07 63号 20面

地下鉄有楽町線の新富町か、日比谷線築地駅を降りて明石町(隅田川)方向に行くと、二棟の超高層ビルが見えてくる。地上五一階と三八階建ての都市ビルで、この二棟のビルは三二階の高さに位置するブリッジでつながっている。これら二棟のビルは「聖路加ライフサイエンスセンター構想」に沿って建設されたもので、歴史的に知られた聖路加国際病院の広大な敷地(一万二〇〇〇坪)を再開発しての都市ビル計画だ。

聖路加レジデンス

聖路加病院といえば、施設のシンボルである十字架を載せた礼拝堂(チャペル)が有名だが、この建物部分は歴史的建造物として保存することが決まっている。

再開発事業は一~三街区にゾーニングして推進することになっており、今年5月18日に二、三街区が竣工している。

・第一街区=旧病院跡地の礼拝堂を歴史的建造物として保存し、地上六階、地下一街建ての看護大学、トイスラー(病院創設者)記念館、病院関連施設などの複合ビルを設置する(計画)。

・第二街区=新病棟として地上一〇階建ての最新の医療設備を誇る聖路加国際病院を建設(完工)。

・第三街区=地上五一階「セントルークスタワー」、三八階「聖路加レジデンス」の二棟の超高層ビルが建つエリアで、この街区は「聖路加ガーデン」と称している。

再開発事業は一街区を残して二、三街区が完工しているわけだが、一街区は今年7月に着工、平成9年3月に完工する予定。

「聖路加ライフサイエンスセンター構想」は、隅田川に面したリバーフロントに展開する計画地に、医・職・住・学・スポーツ・商業などを集約した複合都市施設を建設するというもので、この再開発事業は東京都が推進する「大川端地区整備事業計画」に連動して具体化している。

「聖路加ガーデン」の施設内容は次のとおりで、明石町に誕生した新しい“街”として注目されている。

セントルークスタワー

地上五一階、地下四階は新宿西口の副都心並みの超高層ビルで、地上三~四六階がインテリジェント対応のオフィス空間、四七階が展望室とスカイレストラン、一~二が商業ゾーンで物販、飲食店舗、地下一階がスポーツ施設、同一~三階が駐車場というフロア構成。

飲食店舗は、四七階の展望レストランをはじめ、中華料理「玄海」、和食「稲穂」、信州そば処「そじ坊」、ラーメン「天鳳」、割烹「慶亭」、パスタ「すぺっついえ」、とんかつ「和幸」、スナック「ミセス・ガリレオ」、喫茶・軽食「カフェ・エクセシオール」など計一〇店を展開している。

オフィス関係の入居は、築地に本社ビルのある電通とその関連会社を主体に、日本生命などが入居しており、オフィス入口は約三〇〇〇人。

来街者はこの倍の六〇〇〇人で、これを合わせるとビル人口は、一日平均一万人前後。さらに、ホテル、病院関係や入居者、地域からの来街者を含めると、トータルで一日あたり約三万人の人が出入りしているとみられる。(施設運営・管理会社/(株)エスエルタワーズ)

地上三八階、塔屋一階、地下三階。一~三一階が医療・介護・介助サービス・在宅生活サービスなどトータル的なケア付きマンション(一七五室)、三二~三八階がホテル(九三室)、四階が入居者のためのクリニック、一階が英国商業会議所の会員制ビジネスクラブ(「ザ・ブリティッシュクラブ・オブ東京」)、地下一~二階が会員制スポーツクラブ「SPORTS109ELIX聖路加ガーデン」(セントルークスタワー共通)というフロア構成。

ホテルは東京新阪急ホテル築地で、客室は七層吹き抜けのアトリウムを囲むようにして配置しており、室料はシングル一万八〇〇〇円~二万三〇〇〇円、ツイン三万~四万円、ダブル三万円、スイートルーム六万円。

もちろん、飲食施設も付帯している。和洋レストラン、鉄板焼、ラウンジ、バーなど。宿泊客は地方から出張のビジネマンが主体。稼働率は八〇%以上と高い。

施設データ

・名称/「聖路加ガーデン」

・住所/東京都中央区明石町八番

・竣工/平成6年5月18日

・土地所有者/(財)聖路加国際病院

・建築主/三井不動産、日本生命保険、東急不動産、松島興産、藤和不動産

・敷地面積/二八〇〇坪

・延床面積/五万一七五〇坪

・建ぺい率/七一%

・容積率/一一六八%

・オフィス棟/地上五一階、地下四階

・レジデンス棟/地上三八階、塔屋一階、地下三階

・附帯施設/ホテル九三室、ショップ&レストラン二二店、スポーツクラブ、駐車場

◆南欧風料理「レストラン・ルーク」

オフィス棟「セントルークスタワー」の最上部四七階、地上高二〇〇mでの出店で、店舗面積一六〇坪、客席数一六二席の大型店だ。

客席は九〇席、八四席がオープンデッキになっており、天気のいい日には展望が開けた屋外で食事を楽しむことができる。

この店の料理は“和の素材を活かす”をコンセプトに、日本人の味覚に合わせた南欧風料理で、長野・南アルプス産の肉・野菜を使用した「地鶏の赤ワイン煮」や「ミックスプロシェット」、千葉・銚子港で水揚げされた新鮮な「魚介類の白ワイン蒸し」など、フレッシュな素材に醤油、酒、かつおだしといった日本伝統の調味料を使って、あっさりと仕上げている。

主力メニューは、ランチでパスタ類八〇〇円、中華料理九八〇円、若鶏のフリカッセ九八〇円、焼きたてステーキ(ライス/パン付き)一〇八〇円など。

ディナーはバイキング形式(男性三五〇〇円、女性三〇〇〇円、子供一二〇〇円)で、カツオ、タコのマリネ、イカのトマト煮、ムール貝のワイン蒸し、各種サラダ、パスタ類、肉料理など。

この店の運営システムは変わっていて、平日のみがレストランサービス、土・日・祭日は挙式・披露宴をおこなうブライダルレストランという展開になっている。

しかもレストランサービスは、セルフサービスの「フリー・フロー・スタイル」で「ランチタイム」(11~14時)、「ティータイム」(14~17時)、「ディナータイム」(17~22時)、「バータイム」(22~25時)の時間帯別の営業形態を採っている。

客単価は昼一〇〇〇円、ティータイム六〇〇円、ディナータイム三五〇〇~四八〇〇円、バータイム一八〇〇円となっている。

客層は男女オフィスワーカーをはじめ、カップル、ファミリー客など。レストラン分野の売上げ目標は初年度二億四〇〇〇万円。

土・日・祭日のブライダルサービスは10時30分~20時、一日二組の対応。

◆中華料理「玄海」

オフィス棟一階での出店。店舗面積四〇坪、客席数五六席。小盆で単品価格八〇〇~一〇〇〇円前後の大衆中華料理を売りものにしており、客単価は昼八〇〇円、夜二〇〇〇~三〇〇〇円の範囲。

人気メニューは、昼が皿うどん、肉そば各八〇〇円、ネギそば、たんたん麺各七〇〇円など。夜は前菜類でピータン四〇〇円、棒々鶏、やき豚各八〇〇円、クラゲ三杯酢和え一〇〇〇円、魚介類でホタテ貝のクリーム煮、イカと野菜の辛子炒め各八〇〇円、芝エビのチリソース煮九〇〇円、肉類が若鶏とカシューナッツの炒め、若鶏の辛子炒め、酢豚各八〇〇円、牛肉とピーマン炒め、牛肉とニンニクの茎炒め各九〇〇円(各小盆)など。主力メニューは麺類を含め小・中盆別に約三〇種。

客層は昼はもちろんサラリーマンやOL、夜はファミリー客や女性のグループ客が主体になる。営業時間は、平日が午前11時から午後9時30分まで。土曜日は午後3時まで。日・祭日は休み。

営業時間も、営業日数も短い運営形態だが、施設の集客体制がまだ十分に機能していないので、こういった“変則的”な運営システムになっているということだ。

店は今年9月にオープンしたばかりだが、日商三〇万円はクリアしている。姉妹店が内幸町、築地にあるが、この店は周辺に住宅が多いので、ファミリー客が多く来店するというのが大きな特色だ。

◆日本料理「稲穂」

今年6月1日オープン。店舗面積五〇坪、客席数六四席。高級感のある和風造りの店で、入口正面にカウンター席、左手にテーブル席、その奥右手が座敷二部屋、カウンター席の後が厨房というフロアレイアウトだ。

主力メニューは昼が「松風」(造り、小鉢、ごはん=海鮮丼、みそ汁、香の物)一二〇〇円、「初音」(天婦羅、小鉢二品、ごはん、みそ汁、香の物)一五〇〇円、「紅梅」(牛ヒレ稲穂焼、小鉢、ごはん、みそ汁、香の物)二〇〇〇円、「明石」(松花堂弁当、揚物、牛ヒレ、刺身、酢の物、和え物、煮物、洋物、香の物、ごはん、みそ汁)三〇〇〇円(要予約)など。

夜は「舞」=串会席(箸付、前菜、刺身、串焼、串揚、雑炊、香の物、デザート)四八〇〇円、「雅」=蒸籠会席(箸付、前菜、揚物、海鮮セイロ、焼物、雑炊、香の物、デザート)七五〇〇円の二種。

このほか、予約で特選和牛会席一万円、和牛と海鮮の宴一万五〇〇〇円の二種がある。

アルコールはPBの「稲穂」(生貯蔵酒三〇〇ミリリットル)が評判。これは秋田・高橋酒蔵の淡麗辛口の吟醸酒だ。

この店の料理提供は価格の高いものは予約制になっているわけだが、高単価の料理が売れなくなった現在、材料にムダを出さないという考え方だ。

料理はこの道二五年のベテラン高木茂チーフが作る。食材はすべて新鮮だ。材料の仕入れには自らが隣接の築地に出かけていく。

「旬の材料を使って満足していただくものを、リーズナブルな価格で提供する。コストの問題と料理人としてのこだわりをどうバランスさせていくか、この点が大変に苦労するところですが、収益力を上げるには、やはり客単価が大きく取れる予約客、宴会客を多く集客していくことが大きなポイントと考えています」(高木チーフ)

客単価は昼一三〇〇円、夜五〇〇〇~六〇〇〇円。客層の中心はサラリーマン、OL、ファミリー客、女性グループなど。

平均月商一〇〇〇万円。土・日・祭日は休みなので、奮戦しているという図式だ。

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