DATAにみる外食マーケットの動向 そば・うどんFC
そば・うどん店のFC(フランチャイズチェーン)は早くから始まっている。「そばのスエヒロ」がFCを開始したのは一九六五年(昭和40年)のことであったし、「山田うどん」がFCをスタートさせたのは六八年のことであった。
その後毎年一~二チェーンずつ増えていったが、参入が活発だったのは七〇年代いっぱいと八〇年代初めにかけてまでであった。その後に参入したのは、八四年(昭和59年)の「さぬきうどん天霧」、九四年(平成6年)の「そば蔵」の二チェーンだけである。
サービス形態からみると、そば・うどん分野でFC展開されているのは、古い時代も今も、「立ち食い形式」または「スタンド形式」が主体である。したがって、価格的には安くて薄利多売の戦略をとることから、立地は駅前などの人通りの多い場所が主であった。
もっとも、山田うどんのように、郊外にドライブイン形式の店舗を開拓していったところもある。
また最近は郊外立地におけるファミリーレストランタイプのうどん店が注目されている。
各チェーンごとをみても、また業界全体をみても、そば・うどんFCの成長力は弱かった。今日でも、店舗数は五〇〇店強、売上高は三〇〇億円弱となっているに過ぎない。
なぜ成長しなかったのか? その要因の一つは、投下資本効率があまり魅力的でなかった点にあると思われる。
投下資本回転率は一・五回転前後。特に開業後、採算分岐点に乗るまでに他の業種に比べ格段に時間がかかるから、初年度の投下資本回転率は一回転前後となることが多い。
もう一つの要因は消費者ニーズに適切に対応してこなかった点にあろう。
時代が変化したのに、ボリューム一辺倒で、品質と価格に鈍感なコンセプトを押しつけたり、価格一辺倒でサービスや店の清潔さを忘れていたりした。
また従業員の作業環境を劣悪なままにし、良い人材の定着を図っていかなかった。
これでは成長力を培うことはできないのは当然であろう。
外食産業総合調査研究センターの調べによると、日本全国のそば・うどんの市場規模は一兆円であるという。一方、店舗数の方をみると、商業統計では三万七〇〇〇店(平成4年)である。
これでみると、店舗数、売上高ともラーメン市場より一~二割大きいとみてよい。にもかかわらず、ラーメン分野では活発な動きがあるのに、そば・うどん分野は沈滞している。そこで、そば・うどん店がこれから活路を見いだす方向について考えてみたい。
過去に急成長した業種業態を見てみると、新しいマーケットを開拓していったものに限られる。たとえば、ハンバーガー店、宅配ピザ店、ラーメン専門店、弁当店、持ち帰りずし店(主婦と子供マーケットを開拓)、居酒屋(若い女性とヤング層を開拓)などだ。また、既存マーケットに新しい切り口で迫った立ち飲みコーヒー店などもある。
こうした事例を参考にすると、そば・うどん店も、たとえば女性客や子供客、あるいはテークアウト客を開拓できるようなファストフード業態を開発することが一つ考えられよう(一〇年ほど前に「じょ庵」がうどんのFF店を実験したが、これは成功しなかった)。
既存の立ち食い方式のそば・うどん店はファストフードではないかといわれそうだが、品質(特に品質の安定的な維持の面で)、接客サービス、店舗の清潔さなど、どれをとっても洋風ファストフード店のレベルには到達していない。これでは女性客を獲得することには無理がある。またテークアウトの可能性を探るとすれば、全く新しい発想に基づいた業態開発が必要だ。
うどんのファストフード化という点では「さぬきうどん天霧」が参考になると思われるが、もっと簡素化した業態で考えてみるべきであろう。
もう一つの可能性は、そば・うどんをメーン商品にしたファミリーレストランの展開である。これはすでに「味の民芸」が実証済みだし、近くは「そば蔵」がチェーン展開を進めている。
いずれにしても、そば・うどん分野が活性化するには、新しい顧客層の開拓や新しい利用動機を提案する革新的な業態開発が求められていることは確かである。