地域ルポ 本郷3丁目(東京・文京区) 東大の街一色から脱皮(1)

1995.08.07 82号 6面

古川柳に“本郷も兼康までが江戸の内”と詠まれた本郷は江戸時代は、現在の本郷三丁目交差点あたりまでが江戸市中だったようだ。

このあたりは江戸城の北東(いぬい)の方向にあって鬼門であったので、加賀藩のような大大名屋敷や譜代、親代の大名、旗本の屋敷があったということだ。旧地名に弓町(現在の本郷二丁目付近)というのがあったが、この地域には文字どおりに、破魔弓を祈願して弓同心を住まわせていたと伝えられている。

それはともかくとして、現在の本郷は明治以来“東大の街”としてイメージが定着しているほか、昭和60年代に入っては、道路の拡幅や古い民家のスクラップ&ビルドで、オフィスビルやマンションが建ち並んで、住宅とオフィスが混在する“ビジネス街”としての顔も合わせもっている。

しかし、街としての賑わいは地下鉄本郷三丁目駅および本郷三丁目交差点周辺に限られており、まとまって商店街を形成するボリュームゾーンはない。

これは街が南北方向の本郷通りと東西方向に延びる春日通りに分断される形になっているからで、店舗はこれら道路沿いに散在するという立地特性をみせている。つまり、本郷は商業活動の視点でみれば、“点と線の街”ということだ。目立った大手の飲食施設といえば、ハンバーガーチェーンのマクドナルドとコーヒーチェーンのドトールくらいで、他のFFショップやファミリーレストランなどが出店するチャンスは小さいといった様相だ。

営団地下鉄丸の内線本郷三丁目は“東大の街”として広く知られているが、しかし、地域には種々の学校施設に加え、オフィスやマンションなどの施設も多く、日中はビジネス街としての顔も合わせもっている。

駅は本郷通りにリンクする「東大口」と、裏手の本郷二丁目地区に接する「弓町口」の二つの出入口に分かれる。

駅の表玄関は東大口で、乗降者の八、九割はここを利用するといった趣にある。駅の一日あたりの利用者は六万三〇〇〇人で、朝夕のラッシュ時には学生とサラリーマンで大混雑といった状況を呈する。

参考までに記述しておくと東大の学生数は、学部、大学院生などを合わせて約二万六〇〇〇人、教授陣(講師、助手含む)が四〇〇〇人。

このほか病院をはじめ関連機関の医師、看護婦、職員などが四〇〇〇人と東大関係者はトータルで約三万四〇〇〇人にものぼる。

単純にみれば、地下鉄利用者の半数以上が東大関係者ということで、数字の面からみても本郷は“東大の街”ということが証明される。

もちろん、残りの半数は地域の住民をはじめ、オフィスワーカー、商店、学校関係者および地域への来街者ということだ。

東大口を出る。前方に本郷通りが南北に走るが、それまでに長さ五〇mほどの狭隘な商店街が展開する。

このエリアで一番大きな商店は、出口左角にある衣料ディスカウンターの「ペントハウス」だが、飲食店舗はビルの地下一階や地上一、二階に七店ほどが出店している。

最も目につくのは「一八〇円コーヒーチェーン」のドトールコーヒー。レストランから転業したFC店で、平成元年10月のオープンだ。

店舗面積は一、二階合わせ四二坪、客席数八〇席。客層は地域のサラリーマンやOLを主体にして、学生や近在の主婦など。

客単価三五〇円で、月商一〇〇〇万円をクリアしているが、これはドトールの中でも上位クラスの売上げレベルだという(ドトール店舗開発部)。

営業時間午前7時30分から午後9時。定休日は設けていないが、日曜日は会社が休みになるので、平日に比べ来店者は三分の一くらいにダウンする。

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