地域ルポ 本郷3丁目(東京・文京区) 本郷・春日通りで分断、点と線の街(2)

1995.08.07 82号 7面

ドトールの真向かい、ビルの地下一階に昔懐かしい名曲喫茶の看板を掲げた「麦」が出店している。

本店が浦和にあったが一〇年前に閉店したので、店は本郷店だけになった。

昭和40年ごろからの営業で地域では老舗格の喫茶店だ。店舗面積二〇坪、客席数六〇席で、コーヒー四五〇円、スパゲティ六五〇円などを提供しているが、落ち着いた雰囲気と名曲(クラシック)が売りものなので、東大生をはじめサラリーマンやオールドファンに支えられており、独自の客層を吸引している。

ドトールの左側に隣接して、ビルの四階に老舗の洋風居酒屋「ぶどう亭」が出店している。

洋食レストランとして戦後間もないころにオープンしたが、現在のスタイルにしたのは今から二〇年前のことだ。にしんの塩漬五〇〇円、甘えびのから揚げ六五〇円、牛フィレ肉の網焼八五〇円が人気メニューだが、アルコールは黒生を加え二種類のビールほか、スコッチウイスキー、バーボン、ブランデーなどもおいている。

営業時間は午前11時から午後2時までがランチタイム、午後5時から同11時まではパブタイムで、日・祝日は休み。

日中は若いサラリーマンのほか、夜は四〇~五〇代の男性が主体になる。夜の客単価は三〇〇〇円くらい。

本郷通りに出て周辺をウォッチングすると、「加賀屋」「駒忠」といった居酒屋が目に入る。

加賀屋が一〇年前、駒忠が二〇年前のオープンで、地域サラリーマンの夜の憩いの場として賑わっている。

本郷通りを東大方向に歩いて三丁目の交差点に出る。左側角七階建てビルの一階に例の「かねやす」がある。かねやすは江戸時代の初期に京都から出てきた老舗で、明治時代までは歯磨粉の「乳香散」(にゅうかさん)を製造販売していた、いわば今でいう“薬局店”といった性格だ。

かねやすは現在、高級和洋小間物店に変身してしまっているが、江戸時代から続く老舗に変わりはない。現在の当主は一二代目兼康祐悦氏。

春日通りを渡って交差点角の交番前に立つ。ビル二階に「千石ステーキ本店」が目に入る。昭和60年のオープンで、店舗面積二二坪、客席数三七席のコンパクトな店だ。

リブロース一八〇g一四〇〇円、二五〇g二一〇〇円、三〇〇g二六〇〇円、四五〇g三七〇〇円が看板メニューで、他にはステーキハンバーグ二〇〇g九〇〇円、三〇〇g一四〇〇円、ステーキサンド一〇五〇円なども提供している。

客層はサラリーマン、OLに加え地域のファミリー客やカップルなど。この店は定休日なしの営業だが、日・祝日はファミリーが主体になる。

客単価はランチ九〇〇円、ディナー一六〇〇円。休日のディナーはサイドメニューやアルコールが出るので、客単価二〇〇〇円と二割強アップになる。

この店の一階では同じ経営でとんかつの店も出店しているほか、東大近くにステーキレストランの二号店がある。肉料理で地域の飲食ニーズをキャッチしているということだ。

春日通りに面して魚料理、ふぐ「虎の子」が出店している。交差点から一二~一三mのところ。店舗面積一二坪、客席が小上り二三席、カウンター六席という小さな店で、昭和53年秋のオープン。看板どおりに魚料理が売りものだ。

新鮮な魚介類は築地から、ふぐはもちろん下関からの直送だ。ふぐは通し・皮・ぬた・煮ごり・刺身・ちり・雑すい・香物・フルーツなどをセットにして提供する。

価格は八九〇〇~九八〇〇円。単品のちり、刺身は各四五〇〇円。ポストバブル時代の格安料金ということだ。

ミニ会席料理もある。前菜からフルーツまで七品目くらい。価格は三八〇〇円、四八〇〇円の二種。

アルコールもビール、地酒と豊富に揃えている。客層は企業の部課長クラスを中心に、若いカップルもくる。客単価は五〇〇〇円弱。営業時間は午後5時から10時30分。基本的にはサラリーマン主体の店なので、日・祝日は休みにしている。

交差点角の交番の後方、本郷通りを東大方向に歩くと、喫茶、スナック、居酒屋など小さな飲食店が散在するが、賑わいをみせているのは交差点から五〇~六〇mの範囲だ。

交番のうしろ側に朱色の鳥居が存在する。「本郷薬師堂」だ。江戸時代の寛文10年の創建というから、今から三二五年ほど前のことになる。

案内板に本尊は世田谷に移ったが、江戸時代は毎月八・一二・二二日に露店が出て大いに賑わったとある。

しかし、今は小さなホテルとビアレストラン、居酒屋、スナックなど数店がひっそりと出店しているだけで、活気はない。

薬師堂入口右角のビル一、二階に新旧のアンバランスさでマクドナルドが出店している。地域唯一のファストフードショップだ。本郷は古い街なので表通りには他のFFが出店する余地がないということだ。

マクドナルドは平成4年2月オープン。一、二階合わせ店舗面積四六坪、客席数九〇席(二階のみ)。客単価は五〇〇~六〇〇円前後(推計)だが、ヤング層やファミリー客の利用で、連日の賑わいをみせている。

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