飲食店成功の知恵(75)繁盛編 儲かるメニューの考え方

1995.10.02 86号 18面

儲かるメニューとはどんなメニューか、と聞かれれば、たいていの人は「材料原価が低いメニューだ」と答えるだろう。売上げとしてとらえれば薄利多売ということも考えられるが、客数に限度のある小規模店では、常識的にはそれはあり得ない。限られた販売個数で儲けるためには、原価を低く抑えるしかない、という理屈である。

しかし、この考え方には大きな落とし穴がある。たとえば、原価三〇〇円でハンバーグ定食をつくったとしよう。この売り値が一〇〇〇円なら原価率は三〇%だが、競合店との対抗上八〇〇円の値づけしかできなければ、原価率は三七・五%にハネ上がってしまう。それなら原価を二四〇円にすればいいのかというと、そうはならない。原価が低ければ、一般にはそれなりのメニューしかできないからだ。したがって売り値も低く抑えざるを得ないため、利幅は小さく、よほど数を売らないと儲けにつながらないことになる。結局、薄利多売のカベにぶつかってしまう。

この落とし穴に陥らないで儲けるには、どうすればいいのか。その答えは強力なオリジナルメニューの開発である。オリジナルメニューが大切なのは、たんに他店との差別性を高めるためだけではない。たとえ看板商品に育てても、利幅が薄いのでは何にもならない。つまり、いちばんよく出るメニューがいちばん儲かるメニューでなければならないのである。

ふつう、いちばん売れるメニューはポピュラーメニューだが、ポピュラーであるということは、お客がその商品をよく知っているということだ。家庭でも簡単につくれ、スーパーでも安く売っているハンバーグなどはその最たるもの。いいかえれば、お客に原価が見えてしまっているわけだ。

ところが、オリジナルメニューは違う。たとえば、そば・うどん店は一般に、どこのお店も大体横並びのメニュー構成だが、なかにはユニークな創作そば・うどんを開発して繁盛している事例もある。原価のかからない野菜を中心に豪華な盛りつけにして、儲かる看板商品に仕立て上げていたりする。もともとそば自体の原価が低いのだから、なおさら儲かることになる。

オリジナルメニューは、オリジナルということだけで高い付加価値がつく。他のお店では食べられないからだ。しかも、ポピュラーメニューと違って、お客の原価意識は低くなる。いま野菜をメーンにしたそば・うどんの例を出したが、野菜が安いことくらいお客は知っている。しかし、野菜がおいしく食べられ、しかもヘルシーであるという付加価値がお客を釘づけにしてしまうのである。また、お客の関心を引きつけ、心をとらえるネーミングも大切な要素になる。

もちろん、高付加価値だからといって、むやみに高い値つけをしてはいけない。金額として高すぎれば、やはり売れ筋にはなりにくい。値段をある程度抑えても、原価自体が低いから儲けを確保できる。そういうメニューを開発することが大切なのだ。そのためには、まず売り値と利幅を決めて、その原価率の範囲内でどういう工夫ができるかに挑戦してみることだ。天ぷらに車エビを使えば高くつくのは当然。それなら、小エビと野菜、それにそば・うどんによく合う餅などを使って、彩りよく、しかもボリュームたっぷりの種ものに仕立てる。そういう発想の柔軟さを持たなければいけない。こうすることで、当店だけのオリジナル天ぷらそば・うどんが出来上がるのである。

儲かるメニューを実現するには、仕入れ努力も大切である。いい材料、他店で未使用の材料を、いかに安く仕入れるかということだ。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら