スタンドそば店の二毛作戦略 「食事処あっちゃん」夜は本格的和食の一品料理

1995.11.06 88号 2面

「食事処あっちゃん」は、午後5時から居酒屋に衣替えする二毛作のスタンドそば店だ。日中は一般のスタンドそばと同様だが夜は本格的な一品料理が楽しめる。売り物である刺身、すし、焼魚、煮物、天ぷらをはじめ、数々の和食を取り揃えている。日中は天ぷらが並ぶショーケースも、夜には魚と氷がギッシリ詰まり、さながら小料理屋といった雰囲気だ。

スタンドそばで本格的な和食。そんなミスマッチな組み合わせをこなせるのは料亭経験二〇年という高橋店長の腕前があってこそ。「スタンドそば店のような狭く貧弱な厨房であっても、和食で培った技術を生かせば何でもできる」と自信をのぞかせる。一見客をターゲットに始めたはずが、いまや常連客ばかりになってしまったという。

同店がオープンしたのは五ヵ月前。当初はスタンドそば専門であったが、ビジネス街立地で夜が暇なため三ヵ月前から居酒屋を複合した。午後5時以降の客数は一日約三〇~四〇人で以前と変わりないが、客単価は三七〇円から三〇〇〇円にアップ(居酒屋時)、売上げを一〇倍近くにまで伸ばした。苦肉の策が好結果をもたらしたわけだ。

仕入れや仕込みで忙しい毎日だが、「やはり常連客商売はやりがいがあって楽しい」と、料理人の情熱を垣間見せる。

「スタンドそばも居酒屋も要は立地。立地さえ良ければ二毛作なんてやらなくても儲かる。立地が弱いからアイデア、品質が必要となる。それを実行したまでのこと」と、二毛作の核心を指摘する。そうした思いが念頭にあってこそ、二毛作の仕切りと品質へのこだわりを実行できるのだろう。

今後、同店は弱い立地でも展開可能なスタンドそば店のノウハウを構築して行く考えだ。

◆食事処あっちゃん=東京都港区新橋四‐五‐一アーバン新橋ビル1F、03・5472・9607、一〇坪・一五席、一日一二回転(夜二回転)、客単価/昼三七〇円、夜三〇〇〇円、月商三〇〇~三五〇万円、営業時間/午前11時~午後11時、日祝休

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