’96業態別展望 カジュアルレストラン=動き活発/決め手は看板料理

1996.01.01 92号 25面

バブル熱冷めて

客単価一五〇〇円から三〇〇〇円までをカジュアルレストランという。今年最も派手な動きが起こりそうな業態である。この業態は『ケの食事』日常食の上限業態であるファミリーレストラン(FR)と『ハレの食事』業態のディナーレストラン(DR)の中間に位置している。つまりFRでは物足りないがDRでは高すぎるという一般のお客様のニーズに対応するものだ。この業態に脚光を当てたのは、すかいらーくグループの藍屋であった。バブル期に急速に売上げを伸ばし、新規参入を促し、バブル崩壊で一気に売上げを落とした。原因にはいくつかがあげられるが、藍屋のコンセプトはFRのグレードアップでありFRのシステムを下敷きに、店づくり、商品を着飾らせただけのものだった。バブル景気で舞い上がっていたときは分からなかったが、冷静になってみると「あんなものに高い金を出していたのか」とのお客様の評価でおかしくなってしまったのだ。

流れは価格破壊

今この業態の洋食部門が活気を呈している。ロイヤルのシズラー・イルフォルノ、三笠会館のアジオなどである。三笠会館はDRを数多く持っており、またロイヤルはロイヤルホスト中心ではあるがもともとDR志向の強い企業である。そして何よりも調理人を抱えている企業である。つまり「DRの味とサービスをDRの価格の半分で」という価格破壊の流れにうまく乗っているのだ。以前の「FRの味とサービスを厚化粧して高く頂きます」とは根本的に違っている。この傾向の一つとして、以前はフレンチ・イタリアンのDRであったが、コンセプトを変更し価格を落とし、カジュアルレストランに変身して見事に成功を収めているレストランが出てきている。またこの業態で食材/商品をアピールするコンセプトも出てきている。ロティサリーチキンのファームグリル、ケニーロジャースやローストビーフを売り物にする店などだ。

トライ難しいが

和食では、藍屋の失敗にこりてか、全く動きが見られない。わずかに濱町が生き残っているのと、都心部に、うなぎ、天ぷら、すしなどの老舗が頑張っているが、今の時代にあったコンセプトに変えて店舗展開して行くという動きは見られない。もっとも、店舗展開のポイントは調理人を抱えているかどうかであるため、育ててきていないところは当然無理な話だ。

中華ではこの部分が全くない。FRのバーミヤン、街場の中華・ラーメン店と、DRの中華飯店の間が皆無である。聘珍楼のワンチャイ、飲茶などトライはしているが難しいようだ。世の中が落ち着きを取り戻しており、日常食よりちょっと良いものを食べる風潮が出てきている。特に和食、それも藍屋、濱町のようなすべてをカバーするメニューではなく、職人の得意料理を中心としたしゃれたカジュアルレストランが出てくるだろう。

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