惣菜弁当の殿堂(12)吟米亭 浜屋「バーベキュー弁当」 駅弁からソウルフードに

2013.07.01 412号 16面
550円

550円

 「浜屋のバー弁」とは、千葉県木更津市の弁当店「吟米亭 浜屋」(3店舗)の「バーベキュー弁当」のこと。1962年の誕生から半世紀以上、絶大な支持を誇るソウルフードだ。内容は、豚ロース肉を甘辛だれに絡めて直火焼きし、白飯にのせた焼肉重弁当。味の決め手は、ウナギのかば焼きにように、長年、肉汁を注ぎ足してきた甘辛だれ。これが実に絶妙で、食通から“木更津のXO醤”と評されるほど。販売実績は3店舗で年間約15万個(平均日販約400個)。バー弁だけで売上げの75%を占める看板ぶりを見せている。また、高価な駅弁として誕生した後、ソウルフードに根付いた、普通とは逆パターンの歴史も珍しい。

 ●営業概況:木更津の食文化をコメ卸・泉屋が継承

 誕生は1973年。大正時代に創業した駅弁販売「浜屋」の肉好き店主が開発した。当時、豚ロース肉は高級素材であり、こぎそう感をイメージして「バーベキュー弁当」(以下、バー弁)と命名されたらしい。そして駅弁から店舗販売、仕出しに発展し、名物駅弁からソウルフードに定着した。

 2000年からは地元の米卸業者、泉屋が事業を継承。屋号を「吟米亭浜屋」に改めた。

 創業から味を守り、現在、市内に直営3店舗を展開している。

 ●調理概要:素材力で勝負!国産限定かつ高原価

 豚ロース肉は鹿児島県産と宮崎県産。コメはおもに千葉県産コシヒカリ。素材力勝負のシンプル弁当なだけに国産限定と高原価にこだわっている。

 豚ロース肉の焼き方はウナギのかば焼きと同じ。甘辛だれを豚肉に絡めながら直火網焼きにする。そして甘辛だれをかけた白飯に豚肉をのせる。副菜はジャガ芋の素揚げ、きんぴらごぼう、漬け物。単調な味わいを引き立てる名脇役となっている。

 サイズは3種類で、普通550円(白飯280g、豚肉2枚約80g)、大盛り650円(白飯340g、豚肉2.5枚約100g)、特盛り750円(白飯300g、豚肉3枚約120g)。

 ●販売実績:バー弁が75%、驚異の看板ぶり

 販売実績は3店舗で年間約20万個。平均日販は約400個だが、仕出しも含めた数字なので、1店舗の平均日販は約150~200個。サイズ別の構成比は普通50%、大盛り30%、特盛り20%。

 レギュラー弁当は10品あるが、バー弁だけで売り上げの約75%を占める。2番手の「あさり飯」は浜屋の礎でもあり、売上げは約5%にすぎない。バー弁の圧倒的な人気ぶりがうかがえる。

 ●ポイント:ウナギかば焼き同様、たれつけ直火網焼き

 半世紀以上、注ぎ足してきた甘辛だれが味の決め手だ。原料はヤマサ醤油、日本酒、みりんをベースに数種類。直火網焼きする豚肉は、甘辛だれに浸けては焼き、浸けては焼きを繰り返す。その際、焼いた豚肉の肉汁が甘辛だれに落ちる。長年の積み重ねが秘伝の甘辛だれに凝縮されているというわけだ。

 直火網焼きで豚肉の余分な脂を落とすのもポイント。脂のうま味だけを残して、脂のクセを抜く。この手間がフライパン焼きとは別次元の味わいを生むという。

 ◆食材の決め手

 ヤマサ醤油、千葉県産コシヒカリ

 硬めのコメが甘辛だれにマッチ

 創業以来、地元・千葉県出身のヤマサ醤油を使用。2種類をブレンドして甘辛だれのベースにしている。そして千葉県産コシヒカリも欠かせない。コメの硬めの食感が甘辛だれにベストマッチ。甘辛だれがコメに染み込むことなく、コメの表面にコーティングされ、抜群の舌触りが演出されるという。

 ◆会社概要

 所在地=千葉県木更津市貝渕3-6-5/事業内容=江戸時代から続く地元のコメ卸。2000年「浜屋」の営業権利を引き継ぎ「吟米亭 浜屋」(直営3店)を手掛ける他、国内・海外で惣菜弁当の商品開発コンサルティングを展開。

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