フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(26)イートアンド(大阪王将)
○好調な今こそ店舗売上げ開示を
◆大阪と京都
中華業態で「王将」と呼ばれるチェーンは、イートアンド(大阪王将)と、「餃子の王将」(京都王将)として親しまれている王将フードサービスの2社がある。いずれも上場(イートアンド=東証2部、王将フード=東証1部)していることから、さすが「王将」の名称にふさわしい両社である。
両社の比較については、また別の機会に譲るとして、今回は飲食チェーンに加え、中食惣菜類も好調なイートアンド(大阪王将)を取り上げる。
◆好調が続く
イートアンドは、主力業態の「大阪王将」をはじめ「よってこや」「太陽のトマト麺」など、中華業態の人気店を次々と生み出す業態開発力には定評がある。ここ数年は都内でも出店を続け、先行する餃子の王将を追撃する体制を固めつつあるようだ。
業績も好調で、確認できるデータでは、上場前の2008年3月期は売上高98億円、経常利益2.9億円に対して、直近の2013年3月期は、売上高198億円、経常利益9億円と、上場(2011年6月)をはさんで売上高は2倍、経常利益ではなんと10倍と急成長を遂げている。
また、主力の大阪王将を中心とする店舗数でも、2009年3月期が260店舗(FC加盟店含)だったが、2013年3月期では410店舗まで順調に拡大してきている。
◆「臭わない」ギョウザで中食市場を開拓
特筆すべきは、外食チェーンながら売上構成を見ると、外食事業と中食事業がほぼ拮抗している点である。直近2013年3月期を見てみると、外食事業の比率は53%であるのに対して、食品販売事業が47%となっている。
この中食事業の躍進の原動力となっているのは、ニンニクの臭いを約8割カットしたギョウザの開発である。
国産の食材を使い、国内の自社工場で生産されたギョウザは、同社の店舗はもちろんのこと、全国のスーパーや生協など約1万店の小売店で販売されている冷凍ギョウザカテゴリーの人気商品となっており、中食市場においても大阪王将ブランドが徐々に存在感を増している。
◆京都王将は店舗売上げを開示
勢いに乗る同社に対して、あえて「モノ申す」とすれば、店舗売上げの開示を求めたいことである。本紙読者の皆さまにはおなじみだが、弊社では毎月、主要外食チェーンの既存店売上げの昨年対比ベースのデータを集計し、本紙上にて「2013年○月度、外食動向調査」とのタイトルで、データと分析記事を発表している。
外食動向調査のうち、同社と同業のラーメン業態で店舗売上げを開示している先は「幸楽苑」「ハイディ日高」のほか、餃子の王将も開示しており、主要チェーン7社がデータを公表している。
もちろん、上場企業だからといって店舗売上げについて開示義務を課せられているわけではないが、外食動向調査は、オープンから13ヵ月以上を経た既存店売上げを前年と比較したデータであるため、そのチェーンの真の実力を示している。
特に、外食チェーンは業態や規模の大小を問わず、既存店舗の不振を新規オープンで補う傾向が強いことから、そのチェーンの業績動向や経営の実態が把握しにくいとの指摘は、機関投資家だけでなく個人投資家からも聞こえている。
そうであればこそ、既存店舗の売上動向というチェーンにとって真の実力を積極的に開示することで、IRに積極的であるというプラスの企業イメージ向上に加え、投資家が実態を把握できることで株式投資にも取り組めるという実利としてのメリットも大きいと言える。この機会に同社にもぜひ、店舗売上げの推移を開示していただきたい。
●フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。