フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(34)ピエトロ 「はじまりは一軒のレストラン」
◆創業はイタリアンレストラン
最近では、女性タレントを使った全国放映のTVCMの影響もありドレッシングやパスタソースの知名度が上がっているせいか、同社をもともと食品メーカーだと認識している向きは少なくない。ところが当社の創業は、30年以上前に「洋麺屋ピエトロ」として福岡市の中心、天神にオープンしたレストランが始まりの、れっきとした外食企業なのである。
もっとも、開業の翌年(1981年)からサラダドレッシングの店頭販売を開始、83年には早くもデパートでのドレッシングの販売を始めたため、ドレッシングやパスタソースなど主力の食品事業が当社の業績拡大に貢献したことは間違いない。
◆レストラン店舗数は毎年減少が続く
イタリアンレストランとして創業したが、ドレッシングやパスタソースの方が売れたため、結果として食品事業が主力事業となること自体は、経営戦略に沿った展開だったり成長過程における自然な流れであれば、もちろん何ら問題はない。
業績も直近3期を見ると、2012年3月期の売上高110億円、経常利益4.5億円に対して、2014年3月期は売上高96億円、経常利益5.4億円と、まさに「ぜい肉を落として筋肉を付ける」ような堅調な業績なので、一体何を「モノ申す」のかといぶかしむ向きもあろうが、問題は冒頭に指摘したように、あまりにも食品メーカーとしての色が強くなりすぎており、創業のレストラン事業がこの10年弱の間ですっかり存在感が薄れてしまったことである。
この原因を探っていくと、まず目につくのが店舗数の減少が続いていることだ。IR資料で確認できる範囲では、2010年3月期が69店舗(FC店含む)であったが、直近の2014年3月期には48店舗(同)まで減少している。この間わずか4年で21店舗、約3割も閉めているのである。このペースが続くようだと、単純にあと10年で店がなくなる計算になる。「はじまりは一軒のレストラン」だったが、「レストラン事業の終わりも一軒のレストラン」とならなければよいのだが。
次に、店舗閉鎖が続く要因を考えてみるため、久しぶりに首都圏にあるお店をいくつか訪ねてみた。筆者が抱いていたピエトロのレストランとしてのイメージは、約15年ほど前になるが、「フレッシュ」で「ボリューム」がある料理と「賑やかな」店内という印象だった。
ところが、今はどうであろうか。いずれのお店も集客はできており、ホールスタッフもテキパキとソツなく接客をこなしていたが、かつての店内の賑わい、華やかさといったある種独特の雰囲気はすっかり消えてしまっていた。これには店舗の老朽化とも関係があるため仕方のない部分ではあるのだが、チェーンとしての勢いがある頃を知るお客さまには、「これはピエトロじゃないな」と感じさせる残念な雰囲気がすっかり出てしまっている。
そして料理はというと、一言で表現するなら料理も「ソツない」のである。無難ともいえようか。「ハズしてないけど、印象にも残らない」、まさにこれである。読者の皆さまもピエトロのお店に行かれれば、きっと同じ感想を抱かれるに違いないと確信している。言い過ぎかもしれなが、いわば客単価2500円のチェーン居酒屋で飲んで騒いだけれど、何を食べたかはよく覚えていないことと同じになってしまっている。料理にもう少しスクラッチ感が出せると、大分違って見えるはずなのだが。
◆レストラン全店リニューアルを
同社HPに掲載されているように、「はじまりは一軒のレストラン」だったはずならば、レストラン事業の現状を経営陣はどのように感じ、考えているのであろうか。
もし、本気でレストランのテコ入れを考えているのであれば、なるべく早い時期に「レストラン全店リニューアル」をお薦めしたい。これが今回の「モノ申す」の締めである。
●フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。