外食史に残したいロングセラー探訪(89)総本家にしんそば 松葉「にしんそば」

2014.09.01 426号 15面
刻んだ青ネギが添えられる

刻んだ青ネギが添えられる

 ◆にしんそば発案から130年 ニシンの大きさは「松葉サイズ」 「むっくり」しただし目指す

 国内だけでなく世界中から観光客が訪れる京都。人の流れが絶えない四条大橋すぐ、歌舞伎発祥の地にある劇場「南座」のとなりに、元祖にしんそばの店「総本家にしんそば松葉」がある。江戸時代末期に創業してから153年、二代目松野与三吉氏が、にしんそばを考案してから130年以上もたつ老舗である。山に囲まれた京都で、貴重なタンパク源だったニシンをそばと組み合わせたにしんそばは、京都名物になっている。

 ●商品の発祥:おばんざいがヒント

 四代目現社長、松野泰治さんは、「京都は、食べものに関して、質素なものを上手に加工するのが得意。にしんそばは、おばんざいを食べながら、二代目与三吉が、直感で、ニシンとそばが合うとひらめいたんやと思います」と話す。明治15年頃のことだった。

 京都の一般家庭でつくる惣菜「おばんざい」の一つに、ニシンとナスを一緒に煮た「にしんナス」がある。当時、貴重なタンパク源だったニシンと野菜との組み合わせは、元気になるといわれ、よく食べられていたという。

 ●商品の特徴:伝統の技術で仕上げる

 だし汁は、昆布と、鰹節、鯖節、目近(めじか)節からとっただしに、みりんと薄口醤油を加えて作る。泰治さんが四代目社長に就任してしばらくは、「厳しい味のチェックは母。最上級の表現がむっくりした味で、次いでまったりなど、評価してもらってました」と、振り返る。

 身欠きにしんは、一般的なものより少し大きい20cm前後の「松葉サイズ」。上質なにしん棒煮を作るため、仕入れに妥協はない。味付けは、一滴の水も使わず、酒やみりん、醤油などを使って仕上げていく。同店のにしん棒煮は、身欠きにしんの欠点といわれる、小骨が多い、独特な匂いが強い、硬いを感じさせない仕上がりになっている。

 ●販売実績:大晦日は2000杯

 シーズンによって差はあるものの、通常、本店では日に150杯ほどにしんそばがでる。最も混雑する年末は、3店合計で1日2000杯という人気ぶり。本店では、大晦日は翌朝の3時まで営業する一大イベントとなる。

 子どもの頃から、当たり前のように手伝っていたという泰治社長は、「石垣の隙間を埋めていくように、にしんそばのレベルをもっと上げていきたいですね。京都で生まれたにしんそばを、じっくり味わってもらえたら」と語る。

 ●企業データ

 社名=(株)松葉/本店所在地=京都市東山区四条大橋東入ル川端町192/店舗数=本店、本店から徒歩2~3分の場所に北店、京都駅新幹線コンコース内に京都駅店がある。合計3店/事業内容=飲食業務及び、ニシンを中心とした加工食品の製造販売。本店は、地下~3階までが店舗、4階は調理場になる。

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