メニュートレンド:スペインと大阪が料理でタッグ たっぷりチーズは二つのおいしさ
スペインのバルと大阪の庶民料理、両方の食文化に共通するものをご存じだろうか。答えはなんと「鉄板焼き」。大阪出身の飲食経営者とスペイン出身の料理人の偶然の出会いをきっかけに、二つの食文化を同時にラインアップする異色のバル「カネコ バルセロナ」が誕生。その看板料理として開発した異色のお好み焼き「フロマージュバルセロナ」もやはり異色なおいしさだった。
●山芋とメレンゲでスフレな軟らかさ
直径10cm、高さ5cmほどのきれいな円形はまるでスフレケーキのよう。食べてみると食感もスフレ同様にフワッフワで、その中にキャベツのシャキシャキ食感が加わる。お好み焼きのイメージから想定していたお腹にたまる食べ応えではなく、ワインのアテにもなる軽くて香ばしい味わいだ。
「東京・恵比寿という立地だけにお客さまは食に敏感です。見た目のインパクトだけでなく、ヘルシーさも追求したところがポイントでした」と、金子健治社長は語る。同品は、お好み焼きでありながら小麦粉不使用のグルテンフリーを実現。生地はなんと山芋の高級品種「大和芋」とメレンゲを主原料にしている。
鉄板にセルクル(円形の型)を置いて生地を流し込み、片面を6分焼き、コテとチリトリそっくりなターナーを駆使してひっくり返し、さらに6分じっくり加熱する。「熱が入りすぎると固くなるし、弱いと火が通らない。絶妙な火加減が要求されます」と金子社長。ようやくお好み焼きが焼き上がったら、客席に備え付けの鉄板に持っていき、客の目の前で特製のチーズソースを気前よく流しかけていく。“ジュー”という音とともにチーズの香ばしい匂いが広がるが、こうした提供時のパフォーマンスは客が動画をSNS投稿する絶好の理由になっている。
「チーズの味にはとことんこだわりました。結果として同品の原価率は50%もかかっているのですが、そのほとんどがチーズのコストです」と、金子社長は採算度外視、クオリティー重視の姿勢を見せる。それ故にお好み焼きにかかったチーズはもちろんおいしいが、さらには鉄板に流れて焼かれたチーズの“おこげ”もカリッとした歯応えで香ばしく、ダブルでおいしさを楽しむことができる。
同品は他にトマト、イカスミ、ウニクリーム、トリュフクリームの4種のバリエーションを揃える。とりわけチーズに目がない若い女性客からの支持が高い。スペインと大阪のいいとこ取りという意外性が個性となって輝いている。
●店舗情報
「カネコ バルセロナ」 経営=G’Style/店舗所在地=東京都渋谷区恵比寿西1-3-10 田中ビル1階/開業=2019年4月/坪数・席数=15坪・28席/営業時間=17時~翌2時(土曜・祝日15時~)、日曜15時~翌1時。不定休/平均客単価=4000円
●愛用食材
「パプリカパウダー・ドゥルセ」 輸入販売元=イベリア貿易(東京都世田谷区)
独自製法で香りが違う
本場スペイン産のパプリカパウダーで、スモークで乾燥させる独自製法が特徴。同店ではバルの定番料理であるタコのガリシア風などに使用している。「香りにインパクトがあるので定番料理をワンランク高めてくれます」と、金子社長は愛用の理由を語る。
規格=370g
【写真説明】フロマージュバルセロナ 1,480円(税抜き)
チーズソースを流しかけると鉄板から湯気とともに香ばしい匂いが広がる。仕上げにかけるブラックペッパーがさらに食欲をそそる
見た目はスフレケーキそのもの。フワフワの軟らかさに焼き上げているため、型崩れしないよう慎重さが要求される。チーズソースをかける前に塗った特製のお好みソースが隠し味だ。店の入口付近は料理人が鉄板焼きする様子が臨場感あふれるバル、奥は鉄板テーブルの大衆お好み焼き屋っぽい造りに。肩肘張らない雰囲気が共存している。