外食の潮流を読む(70)コロナ禍で誕生した「ステーキ五郎」、売上げの半分以上が営業利益に

2021.04.05 506号 11面

 フェイスブックで「ステーキ五郎」というランチタイム限定のステーキ屋さんのことを知った。商品は「ステーキ」のみで、見るからにインパクトがある。シングル(150g)980円、ダブル(300g)1660円、1ポンド(450g)2200円とボリューム別に価格が設定され、これに無料で、ヤサイ(無し・普通・マシ・マシマシ)、トロトロ脂すじ(無し・あり)、ニンニク(無し・あり・マシ)、脂〈バター〉(無し・あり1枚・マシ2枚)を顧客が好みで選び、さらにトッピングとして生卵50円がある。ライスは食べ放題。

 このブランドを運営しているのはダイヤモンドダイニングで、2月8日現在、都内の「ワインホールグラマー・ネクスト新橋」「ワインホールグラマー赤坂」「酒房フタマタ浜松町店」「酒房フタマタ西池袋店」、広島市内の「マンデー」の5店舗で行っている。

 このブランドが誕生した背景と動向について、開発を担当した井比政貴氏が解説してくれた。

 「ステーキ五郎」は「昼のクローズタイムに営業する」「ランチタイムの売上げが芳しくないところでの売上げ対策」として2019年10月から構想が練られていて、それが20年に入り、コロナ禍でにわかに具体化した。

 商品設計では「インパクト」「味」「商品力」がポイントとされ、ターゲットは「20~40代のスーツを着ていない男性」で、「10人中10人がおいしいと評価するのではなく、10人中の3人がドはまりする食事」「商品が来店の目的となること」を基軸として考えた。

 Web上では「ラーメン二郎インスパイア」と発信されているが、これもこの商品設計のストーリーであり、ターゲットとしている顧客に分かりやすく伝わるように組み立てたものだという。ステーキの肉はUSビーフのミスジで、ヤサイはゆでたモヤシである。

 最初に導入したのは昨年の5月で新橋であったが、それは適した業態の既存店舗があったから。そのため、新たな設備投資は不要で、新橋でかかったコストはポスター代の1万8000円のみであった。

 新橋では「ステーキ五郎」を11時30分から15時まで営業。営業開始から3日間「560円」(ステーキ150g)で販売したところ1日30食が売れたが、それが終了してからは5食程度となった。井比氏はそれを巻き返すために人気ユーチューバーにダイレクトメッセージで営業を行った。これによって作成されたYouTubeの映像がファンに視聴されるにつれて売上げは1ヵ月後に回復。現在では1日当たり、新橋55~60食、赤坂50~55食、浜松町68食、池袋30食、広島は30食限定だが45分で完売している。

 客単価は1109円で原価率47.9%、社員だけで営業しているので、原価以外は水道光熱費が若干上がるもののそれ以外は営業利益となっている。コロナ禍で誕生した利益を生み出す仕組みである。

 (価格は税込み)

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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