アポなし!新業態チェック(194)「蕎麦処 大戸屋」田無店

2023.10.02 536号 10面

 ●大戸屋、新業態「蕎麦処」を出店 「ごはん処」「おかず処」に次ぐ、新たな「処」事業の柱となる

 大戸屋ホールディングス傘下の大戸屋は、新業態のそば専門店「蕎麦処 大戸屋」を東京・西東京市の青梅街道沿いに出店した。同店は、西武新宿線の花小金井駅から徒歩10分ほど、他の外食チェーンが入居していたロードサイド型の独立店舗への出店となる。

 同店のそばは、茨城県産そば粉を店内で製麺する自家製麺が売り物。麺は注文後にゆで上げ、かえしには「醤油かえし」のほか「ゆず塩かえし」がある。また同店の天ぷらは、子会社であるアメリカ大戸屋が2015年、米国・ニューヨークにオープンした「天婦羅まつ井」のノウハウを継承する本格派。「天婦羅まつ井」は7年連続でミシュラン一つ星を獲得した名店だ。

 定番の「ざる蕎麦」(650円)や「かけ蕎麦」(680円)などにも、「“まつ井”天ぷらせいろ蕎麦」(1290円)、「“まつ井”天ぷら蕎麦」(1320円)のように、すべて“まつ井”ブランドを冠した天ぷらが添えられる。この天ぷらは単品でも販売。さらにそばメニューには、具材の入ったつけ汁にそばをつけて食べる「大戸屋の鶏つけ蕎麦」(980円)などの「つけ蕎麦」と、具材とそばを混ぜて食べる「四川風ピリ辛麻辣まぜ蕎麦」(1030円)などの「まぜ蕎麦」があり、メニューの選択肢は豊富だ。

 丼物は「“まつ井”天丼」(1220円)、「かつ丼」(1300円)など。小ぶりの「小丼」もある。サラダや甘味、日本酒も用意され、ディナーにも対応。すでに翌7月には神奈川・淵野辺に2号店を出店済みだ。(価格は税込み)

 ★けんじの評価:すでに2店舗、今後の出店に注目

 そばは、代表的な和食アイテムであるにもかかわらず、大規模な専門店チェーンが存在しない外食分野だ。現在、業界トップである「ゆで太郎」が200店舗前後、老舗の「富士そば」やファストフードではないレストラン業態「そじ坊」など、多くのチェーンは100店舗台であり、400店舗以上のチェーンが複数存在するラーメンやうどんに比べて強力な上位企業のいない市場といえる。今回、大戸屋もそのそば市場を狙う競争に参入するのだろうが、臨店した限りでは、このブランドがどのあたりのマーケットを狙った業態なのか、ややわかりにくかった。

 店舗で製麺し注文後にゆで上げているというそばは十分においしいが、セールスポイントの天ぷらに関しては衣の状態がいまひとつだったように感じた。しかし重要なのは、おそらく天ぷらのクオリティーではないだろう。各メニューの完成度はそれなりに高いのだ。だが、この価格で呼び込むロードサイド客層とはどのような人たちなのだろうか。

 同社は、従来の定食店「大戸屋」を「ごはん処」、2021年2月にスタートした惣菜の小売業態を「おかず処」と名づけており、今回の「蕎麦処」をこうした「処」事業の第三の柱として位置付けている。「おかず処」は当初、百貨店への催事(期間限定)出店から始まったが、今年2月には東京・調布の商業施設に常設店舗をオープンし、今後の方針が確立したようだ。今回、同タイプの店をすでに2店舗出店した「蕎麦処」だが、次はどのような店舗になるのだろう。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「蕎麦処 大戸屋」田無店

 開業=2023年6月23日

 所在地=東京都西東京市芝久保町4-15-24

 ●編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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