真っ黒のオムレツは見た目のユニークさだけでなく、イカスミのほか隠し味を加えたことでツウ好みの味わいになっている

得盛　1人前825円（税込み）　写真は2人前。同店の一番人気メニューで、創業以来値上げしておらず破格値で提供。来店客のほぼ全員が注文し、伝票整理の際は「注文しなかった人を数えて計算している（笑）」（田中店主）と言う

店頭には店で使った貝の殻が貝塚のように山積みに

【愛用食材・資材】「松印　粉わさび」テーオー食品（東京都豊島区）

　世にウニ好きは多く、食材としての実力はすこぶる高い。魚料理を専門に提供する「海三昧　おさしみ家」の「生ウニオムレツ」は、見た目のインパクトだけでなく味の調和という点でも完成されており、多くの人を引きつけている。

　　　＊

　「海三昧　おさしみ家」は魚一筋にこだわる居酒屋で、枝豆、おしんこ、サラダといった定番料理は扱わず、メニューはほぼすべてが魚料理、と徹底している。2001年の創業当時、店主の田中譲二氏が「焼き鳥、煮込みなどを出す居酒屋では老舗の居酒屋に勝てない。こだわりを持つ専門店で行かないと」と考え、「日本人なら魚」と、田中店主自らが毎日仕入れする魚をメインに扱う姿勢を決めた。

　そのこだわり通り、本マグロ脳天の刺身やボラのヘソ、ブリやヒラメの卵を使った自家製カラスミなど珍しい魚介メニューを数多く取り揃えているが、「生ウニオムレツ」の魅力が何といっても強烈だ。「ウニも卵だから卵同士で間違いなくおいしい」（田中店主）と考案。当初は卵の中にウニを入れたり、オムレツの上に木箱ごとのせるなどの提供を試した後に、卵とウニの双方の魅力を互いに引き立てるこの形に行き着いた。箸でつまみやすい細めの形状で、少し強めの塩味に仕上げたオムレツは、ウニをのせて箸でつまんで食べやすく、醤油不要でツマミとして楽しめる。見た目の迫力と“卵＆卵”のベストマッチで、来店客の9割以上が生ウニオムレツを注文するという。

　生ウニオムレツはウニの量に応じて、スタンダードな「生ウニオムレツ」（1595円）、その約3倍量のウニをのせた「もっと生ウニオムレツ」（2145円）、そしてどっさり100gのウニがオムレツを覆い尽くす「生ウニオムレツfull」（3740円）の3品を揃えている。思い切った量のウニをのせる「もっと」「full」は、コロナ下の時期「店が活性化し、お客が笑顔になってくれるように」（同）と新たにメニューに加えたそうで採算度外視。さらにイカスミを使った「生ウニオムレツ“ブラック”」も同時期に考案し、全6品の名物「生ウニオムレツ」シリーズが完成した。

　たっぷりのウニは主役食材として、そのインパクト、魅力は申し分ない。それだけに単独でシンプルに提供したくなるところだが、ひと工夫加えると、お客を呼び寄せる強い看板メニューとなり得るのだ。

　●店舗情報

　「海三昧　おさしみ家」

　所在地＝東京都渋谷区恵比寿南2-3-11 グレース青山1階／開業＝2001年／坪数・席数＝10.5坪・22席／営業時間＝17時～22時30分。土日祝休／平均客単価＝5500円／1日平均集客数＝20人

　●愛用食材・資材

　「松印　粉わさび」　テーオー食品（東京都豊島区）

　鼻に抜ける辛味が魅力

　水で練って使用するきめ細かい粉ワサビ。鼻に抜ける強い辛味と香りが特徴。「ツンと突き抜けた辛さがいい。本ワサビをすりおろす、といった提供も考えたが、うちのような気軽に利用してほしいタイプの店にはコスト面でも合わない。滑らかで魚の味を引き立ててくれる、誰もが好む味で気に入っている」と田中店主。

　規格＝350g（常温）

　【写真説明】

　「生ウニオムレツ“ブラック”」　1,795円（税込み）

　“ブラック”は定番の黄色い生ウニオムレツに＋200円の価格設定。イカスミを使うことで海の風味が加わり、酒に合う

　「もっと生ウニオムレツ」　2,145円（税込み）

　2番目に生ウニの量が多いタイプで、シリーズ6品の中で一番人気。オムレツは細めの形状で高級感のある和風ウニ卵焼きの風情だが、付け合わせのキャベツを添えたことで気軽な雰囲気に。楽しくシェアできる一品に仕上がっている