海外通信 外食ビジネスの新発想(82)外食用テイクアウト容器の今
アメリカの学校給食は任意のところが多く、かつてはブラウン・バッグ(茶色の紙袋)にツナサラダのサンドイッチや、ピーナツバターとジャムのサンドイッチ、ニンジンのスティック、リンゴ、ポテトチップスの小袋などを入れて持たせることが多かった。今では、ランチの外見も中身もアップグレード。日本の幕の内弁当のように複数のコンパートメントがあり、汁がこぼれない構造になっている/Amazon.com から
サンドイッチは、大きな耐油性の紙にくるくるとくるんで渡されることが多いが、少し高めのグルメ・サンドイッチの店では、きれいな紙箱に入れてくれる。ニューヨークのカフェ「セミ・コロン」では、食べやすいように紙袋に立てて入れている
新興のファストフードやファストカジュアルの店は、繊維成形品を使うところが多く、かなりコスト高になっていると推測される。スプーンやフォークなどのカトラリーにはコンポスト(堆肥化)可能なものを使うことが多い。生分解性は、時間の経過と共に自然の成分に分解されるが、堆肥化可能なものは、栄養豊富な堆肥に分解される
●リサイクル、生分解可能な環境にやさしいパッケージ 紙製品への切り替え進む
日本では食中毒の責任問題などもあり、なかなか料理の残りを持って帰ることはしない(あるいはできない)ようだが、アメリカの外食店では出される料理の分量が多いので、食べきれない分は持ち帰ることが多い。中には、持ち帰り分を含めて1回の外食で2食をまかなうことにしている人もいるし、年配者の間では、1つの料理をシェアする夫婦もいる。店側はサービスでテイクアウト用の容器を用意しており、皿に食べ残しが多いと、「テイクアウトなさいますか」と声を掛けてくれる。
テイクアウトやデリバリー、あるいはサーブするのに使われる食品用の容器は、素材がかなり進化してきている。発泡スチロールは、ヨーロッパではすでに使用禁止、アメリカでも禁止する自治体が広まっており、現在ニューヨークなど8州と首都ワシントンで禁止となっている。やはり一番よく見かける食品用容器はプラスチック製だが、最近では紙製品が台頭してきている。
元々、個人経営のサンドイッチの店では、大きな紙にくるくるとくるんで渡すことが多かった。グルメ・サンドイッチの店では、紙に包んだ後、きれいな紙箱に入れることが多い。サラダやスープも、内側を加工して水分が浸透しにくい紙製の容器を使うところが多くなった。包装材のコストは高くつくが、これもブランドイメージを高めるための販促の一つだ。
ここ数年、繊維成形品が、原料が植物由来であること、サステナブル(持続可能)であること、生物分解性で環境にやさしいことから注目され、繊維成形品を使用する店が、大型チェーン、個人経営店共に増えている。繊維成形品は、ススキ、スイッチグラスなどさまざまな植物のほか、小麦や稲のワラなどの農業バイオマス廃棄物などを繊維源として使用できる。シングル・ユースの場合は問題ないが、重さや熱に弱いという弱点を持つ。食べている最中に水分を吸い取ってふやけてしまうことも多々ある。コスト高ではあるが、こうした容器を使うことで、環境保全の取り組みをアピールすることができ、顧客の信頼を勝ち取ることができる。また、消費者も多少の不自由は、環境保全のためには惜しまない。
生物分解性の容器を使う店は、サラダ専門、オーガニック系などヘルシーな選択や新しいコンセプトの店に多い。伝統的な肉とジャガイモ(meat&potatoes)料理を好む人よりも、ヘルシーな選択をする人の方が、より環境問題に関心を持ち、文字通りにも比喩的にも新しいものにチャレンジするタイプの人が多いことと関連しているのだろう。ある映画で、インテリの二人が文学論を戦わせながらテイクアウトのランチを食べるシーンで、一人はサラダ、もう一人は寿司を箸を使って食べ、二人とも飲むものはペットボトル入りの水であった。
バガス(サトウキビの搾りかす)など食産業の廃棄物は多く、これからはさらに技術革新が進み、よりユーザーフレンドリーな環境保全型の食器が開発されることだろう。