外食史に残したいロングセラー探訪(37)柿家鮨「特製きりこみばら寿司」

2010.02.01 368号 10面
柿家鮨の定番中の定番「きりこみばら寿司」。人数分の握り寿司にプラスして、みんなで取り分けて食べるといった需要もあるようだ

柿家鮨の定番中の定番「きりこみばら寿司」。人数分の握り寿司にプラスして、みんなで取り分けて食べるといった需要もあるようだ

 ◆大人気メニューの前身は回転寿司時代に登場

 デリバリー専門の寿司店として、品質感、おいしさにこだわり続けてきた柿家鮨。中でも、看板商品として10年以上、人気を博しているのが「特製きりこみばら寿司」であり、有名百貨店の催事でも大評判という。さまざまなネタがふんだんに盛り込まれ、それらが一体となったときに生まれる絶妙な味わいが魅力のメニューである。

 現在、東京を中心に26店舗展開する宅配寿司チェーン、柿家鮨。だが、この店のスタートは、1998年4月、原宿にオープンした回転寿司の店であった。

 「回転寿司ですので、握り中心のメニュー構成でしたが、その年の夏から、小分けでばら寿司を始めたところ、ガラスの容器に盛ったスタイリッシュさが受けたのか、とても好評でした」と、(株)フォーシーズ/柿家鮨事業本部の干田真珠子本部長。

 翌年5月に、デリバリー専門店を日吉にオープンする際、人気のあったばら寿司をメーン商品に据え、オープン時に配布したメニューの表紙も飾った。

 以来、きりこみばら寿司は柿家鮨の定番商品となり、メニューのバリエーション、具の種類やサイズ展開などさまざまな改良が行われてきた。「旬の握りメニューが年4回変わるのに合わせ、旬のばら寿司を提供していた時期もありました」(干田氏)

 「特製きりこみばら寿司」のほかに、同社の「ピザーラ」において、カニが人気の食材だったことも参考にし、2000年から「ずわいがにきりこみばら寿司」が始まり、現在はこれら2品を常時提供している。

 そして今年2月中旬からは、女性に人気のネタである、アボカドやサーモン、エビの入ったきりこみばら寿司がスタートする。

 「きりこみばら寿司」の具材は、“づけまぐろ、いくら、ほたて、いか、子持ち昆布、刻み穴子、玉子、とびっこ、かいわれ”の全9種類。マグロ、ホタテ、イカは生臭みがなくなるようにヅケにしている。

 干田氏は、「ばら寿司の特徴は、具材を同じ大きさに切りそろえて、バランスよく盛り付けることで、食べたときにすべてが一体となったおいしさにある。そのため、具材の切り方や、あえる順序を変えただけで味が違ってきてしまう」と言う。

 日吉店出店時、すでに多店舗展開を視野に入れていたため、アルバイトであっても、どの店でも味に変わりなく、同じおいしさを出せるようにオペレーションの均一化をはかることを命題としたという。ネタをあえる順序も、大切な“おいしさの秘訣”であり、徹底されている。

 「きりこみばら寿司は、10年間大切に育ててきた商品。これからもマイナーチェンジを重ねておいしさを保っていきたい。そして、話題性のある新メニューの開発も行いたいと思う」(干田氏)

 ◆店舗データ

 「柿家鮨」/経営=(株)フォーシーズ/本社所在地=東京都港区南青山5-12-4/第1号店開業=1998年/店舗数=26店舗(2010年1月現在)

 ◆こだわり食材:マグロとシャリ

 きりこみばら寿司に限らず、握りメニューにおいても「マグロ」にこだわるという柿家鮨。現在、マグロは天然のバチマグロの赤身を使用。魚体の大きさにより味も変わるため、バイヤーが確認して常に同レベルのものを選別している。

 シャリには、その年の出来によってコメをブレンドして使う。そして、酸味の立ち方や、ネタの味を生かすように、酸味と甘さのバランスを考えて作られた合わせ酢でシャリを切る。さらに、現在では、シャリにアナゴを混ぜ込み、ほのかな甘さと香ばしさを付け、ネタとのなじみをよくしている。

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