トップインタビュー:クーニーズ・アソシエ 青島邦彰社長

2009.04.06 355号 09面

 クーニーズ・アソシエ代表取締役社長の青島邦彰氏は、これまでに300店を超えるカフェ・レストランをプロデュースしてきた、ヒット店の仕掛け人だ。あえて店を持たない生き方を選んだ青島氏の言葉には、古い慣習にとらわれない自由な発想と、常に時代の最先端を走り続けている厳しさが同居している。固定された「店」の固定された「料理」ではなく、時代と地域に合った「新しさ」を提供し続ける彼に外食産業の「今」を俯瞰(ふかん)してもらった。(さとう木誉)

 ●料理を作るだけの時代ではない

 –クーニーズ・アソシエは、店舗プロデュースやメニュー開発など「ソフト」面から外食にかかわっています。飲食店を構えるのではなく「プロデュース中心」の業務スタイルにした理由は?

 青島 調理場にいた20代のころは、旧態依然とした料理人の在り方に疑問を持っていたんです。お客さまの顔の見えないバックヤードキッチンで、理不尽な上下関係があって「(お客さまに)本当にバリューを感じてもらえているのか?」と気になっていました。

 レストランだけでなく貴賓客へのケータリング、レストランウエディング、そしてニューズデリのプロデュースなどを経験していきながら、次世代のコックの在り方を提案しようと設立したのが弊社です。

 –青島氏が考える「次世代のコック」とは?

 青島 エンタテインメント性のある料理人になろう、料理だけでなく企画や管理など店をまるごとプロデュースできる料理人になろう、というのが僕の考える次世代のコックです。僕が料理人だった当時は、何年も皿洗いなどの下積みをしてやっと包丁が持てる。これがまだ当たり前でした。あれから15年ぐらいたちましたけど、やはり料理だけしていればいいという時代ではなくなりました。

 ●コストをかけず不振脱出

 –軒並み前年割れや閉店が続く外食産業の現状をどう見ていますか?

 青島 厳しいというのは、本当にそうだと思います。資金調達のめどがつかなくなったとか、既存店業績悪化などの理由から新規出店をやめるなどという話をよく耳にするようになりました。でも、ずっと厳しいのかといったら、決して僕はそうとは思ってないです。

 今年の夏ぐらいまではおそらく閉店する店舗が出てくるかと思います。さらに物件取得における不動産も地域によっては下がってくるところもあるでしょう。すると不動産取得コストはこれまでより下がり、出店における初期投資の部分が下がれば、がぜん出店しやすくなりますからね。今は店舗プロデュースの仕事は減っていますが、来年からまた忙しくなりますよ。今から来年の準備を始めています。

 –既存店は、何とか閉店になるのを食い止めようとしています。

 青島 不振店からの相談は僕のところにもよく来ます。新店をオープンさせるのとは違った難しさがあります。いったんダメな店になってしまうと、ダメな体質が染みついてしまう。それを変えるために、僕だからできることは何か、どんな手法が有効なのか考えるようになりました。

 去年、福岡にある居酒屋の再構築を手がけました。メニューと店名だけという最低限のリニューアルで3ヵ月後から2、3倍まで伸ばすことができました。

 –すごいですね

 青島 いわゆるダイニング系の居酒屋だったところを、コラーゲンスープで食べるしゃぶしゃぶ店にしたんです。女性を引きつける分かりやすいコンセプトをしっかりと打ち出したことで、雑誌や情報番組からも注目されて。

 –再構築のコストはどれくらい?

 青島 その店が改装リニューアルなどの再投資を検討しているときに、ご相談をいただきました。改装はコストが高く、店の背負うリスクが大きいですよね。不況といわれる現段階では、そのような再投資を始める前に、コンセプトのブラッシュアップやメニューのリストラクチャリングなどで集客の足がかりを作ることができるんです。

 この店は看板替えてメニュー替えただけ。改装費用は100万円くらいしかかかってません。

 –たった100万円でできるんですか?

 青島 「金をかけずにやる」と決めたからできた好例です。運営会社の経営上の理由により、それ以上はかかわれなかったのが残念でした。僕自身としては、店を絶対的な利益体質にするところまでもっていきたかったのですが。

 多店舗化が可能なレベルのパッケージを作りあげるところまでが、本当の意味での再構築だと考えています。僕の手を離れても、自動的に店を増やしていけるようにしてやっと成功したといえると思います。

 ●流行の真逆にある「本質」見失うな!

 –これからの外食をどのようにイメージされていますか?

 青島 雑誌やメディアでもてはやされているのは、プライベート感のある内装だったり、見たことも食べたこともない味だったりするのですけど、じっさい求められているのはそれとは真逆なんじゃないでしょうか。

 なじみのある料理で、手ごろな価格で、コミュニティーがあって、というのが本当のニーズなんだなと思う。もちろん、立地とか業態とかで違いがあるとは思いますが、根本的な部分では変わらないと思うんです。

 –流行やトレンドとは真逆の発想ですね。

 青島 昨年、青山にオープンしたロイヤルガーデンカフェという店にメニュー開発で参加しました。総合プロデュースは入川スタイル&ホールディングスの入川代表。入川氏とはパートナーズとしてメニュープロデュースを担い仕事を組んでおります。われわれの作るカフェのスタイルは「地域に密着して、地域に貢献して、カフェというコミュニティーを作ろう」という部分で強い共感を感じます。どんな「コミュニティー」を作るのかが、これからの時代に選ばれる店を作るうえでも欠かせないと思います。

 ロイヤルガーデンカフェでは、「これからの外食の在り方」を象徴するようなさまざまな実験的な取り組みをしています。その中でも、春から開催する朝市は、新しいコミュニティーの在り方だと思って期待しているんです。

 お店の料理の材料になっている野菜を店のテラスで売るんです。実際に栽培している生産者が来て。食べるお客さまは自分の目で安全を確かめられますし、生産者も食べているお客さまの笑顔を見たら、もっとおいしいのを作ろう、もっと安全なのを作ろうと、元気になってくれるとうれしいですね。

 ◆プロフィール

 あおしま・くにあき=1970年神奈川県出身。昼はとび職人、夜はバーテンダーという異例の経歴から料理人の道へ。レストラン、貴賓客へのケータリングを経て、(株)フェイバリットではレストランウエディングでの出向シェフとして参加。後に、news DELIを大ヒットさせ、カフェブームの立役者となる。2003年にコックが二ーズに応えるプロデュース会社「クーニーズ・アソシエ」を設立する。

 ◆企業メモ

 (株)クーニーズ・アソシエ(本社=東京都渋谷区渋谷3-15-5、グリームビル5階)設立=2003年9月/資本金=1000万円/公式サイト=http://cooneeds.com/top.php

 ◆事業内容

 「コックがニーズに応える」をコンセプトに、店舗プロデュースやメニュー開発、コンサルティングなど、飲食店のあらゆるニーズに対応する。

 有楽町イトシア「横濱蒸籠」、信濃町「カフェ・シェーキー」など300を超える飲食店のプロデュース、メニュー開発を手がける。

 また直営レストランとして、「J44イッツクリスマス」(山口県下関市)と「一茶一坐」(東京都渋谷区)がある。

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