電化厨房特集:専門店電化厨房最前線=カストール「レストラン カストール」
1984年、東京都渋谷区上原にオープンしたフランス料理店「レストラン カストール」。ガス厨房から始まったが、10年以上前から改装のたびに電化厨房機器を増やしていったという。そして2005年に京橋に移転開業した新店舗では、シェフの思い通りの電化厨房となった。
●10年以上前から電化厨房機器の導入を始める
「新店舗の厨房をほぼオール電化にした最大の理由は、労働環境を考えてのこと。私は現在56歳ですので、若いころと比べて確実に体力が低下しています。夏場ともなると軽く45~50℃を超える厨房内で1日中働くことは、この先、体力面や健康面で厳しくなるでしょう。そこで、温度と湿度をコントロールして、汗をかかない、疲れない環境を求めた結果、電化厨房を採用しました」と藤野賢治オーナーシェフ。
現在、導入している電化厨房機器はIH調理器2台、平釜2台、スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、真空パック器、ホイロ、ウォーマー、洗浄機、サラマンダー、赤外線ヒートランプウォーマー、スモーカー各1台。そして厨房の中央に設置された、船舶用鋳物鉄板を使ったヒートトップレンジ(プラック)は特注品。IH調理器のように全体を均一温度に保つことではなく、場所によって高温・低温の差があることを求め、個別に温度調節のできるプレートを4枚並べたものだ。厚さ約2cmの鉄板内部にはニクロム線が入っており、400℃まで加熱できる。温度差を利用して、1台で沸騰・加熱・保温と同時進行で調理できる。
以前の約3倍の広さという12坪の厨房にかかったイニシャルコストは4500万円。
「『個人経営の店で厨房にこんなに金をかけて…』という意見もありますが、自分の思うように設計し、満足しています。ランニングコストに、この快適な環境で得られるさまざまな効果も含めるのならば、結果として電気の方がコストパフォーマンスはいいのでは」と藤野氏。さらに、空気が汚れないことで空調をはじめとした設備が長持ちすると見込む。
しかし、「すべてにおいて電気が優れていると言うつもりはない」とも言い、例えば、大量の洗い物を処理するための給湯設備には、ガスを選択。料理の種類、作業内容などによって、電気・ガスそれぞれの利点を生かした厨房作りとなったようだ。
◆現場のコメント:「カストール」オーナーシェフ 藤野賢治氏
私が感じている電化厨房の3大メリットとは、「燃焼のための酸素がいらない」「鍋の周辺がガスより熱くならない」「短時間で湯を沸かせる」ことです。
私の目指した、汗をかかない厨房の効果として、以前と比べてコック服がさほど汚れなくなったというのは、一番分かりやすい例でしょう。体の疲れ方もまったく違いますね。
◆使用機器紹介:(株)フジマック「IHコンロ(FIC456050F)」
鍋自体を発熱させる電磁誘導加熱方式で、80~90%という優れた熱効率を発揮する。
発熱量(火力)は、ダイヤル操作でトロ火から強火まで自在に調節することが可能である。発熱量を一目で確認できるLED表示。
消費電力=3相200V/5kW
◆店舗メモ
「レストラン カストール」/所在地=東京都中央区京橋2-4-14 BUREX京橋1階