近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:下町の洋食 時代屋「レモンステーキセット」
「レモンステーキ」は、長崎県佐世保市の「ふらんす亭」を発祥とするステーキ料理。熱々の鉄皿に薄切り牛肉をのせ、醤油ベースのレモンソースをかけ、ジュージューのシズル感たっぷりに提供するもので、佐世保名物のひとつに数えられている。かたや、のれん分けされた弟子が東京で「ふらんす亭」をFC事業化するなど、知名度も高い。
発案は、洋食コックとして独立を目指していた東島兄弟。1963年、「レストラン門」に勤めていた兄・紀孝氏は、経営者から「精の付く軽い肉料理を作れ」と命じられ、米軍海兵隊クラブに勤めていた弟・洋氏がレモンソースを開発し、レモンステーキが世に生まれた。後に兄弟で「ふらんす亭」を開業。多くの弟子が巣立ち、佐世保にレモンステーキが広まった。そして弟が「時代屋」を開業。現在は弟の息子兄弟が2代目を引き継ぎ、元祖本流の味を守り続けている。
◆営業の概況:7割がレモンステーキを注文 価格引き下げで潜在ニーズ開花
時代屋の立地は、佐世保市街から約10km離れた、高速・三川内インター付近の国道沿い。30台の駐車場を有するドライブインの典型で、45坪・54席で平日50~60人、休日200人前後を集客している。お客の5割が「レモンステーキセット」(1100円)、2割が肉量1.7倍の「スペシャルレモンステーキセット」(1800円)を注文。客層は、平日は地元客8割、観光客2割、休日はそれが逆転する。
かつてはコース料理主体で客単価5000円以上の高級店だったが、04年のBSE騒動で和牛価格が高騰。やむなく豪牛に切り替え、価格を引き下げたところ、客数は倍増したという。
2代目長男の東島寿明氏は「価格の壁、潜在的な人気を実感しました。いまは多くの皆さまにレモンステーキを味わっていただくため、リーズナブルを念頭に取り組んでいます」と言う。
◆特徴と調理:レモンソースはまぜて寝かせるだけ ブレンドとストックに黄金比率
牛肉は、豪牛サーロイン140g、肉厚約5mmで3~4枚。調理方法は、熱した鉄皿を火から下ろし、牛肉をのせ、ソースを100mlほど注ぎ、玉ネギとレモンのスライスをのせるだけ。そのまま運ぶと、客席でソースがジュージューと弾け、30秒ほど熱々のシズル感が楽しめる。お客はその間に牛肉をひっくり返し、両面焼きにする。ひっくり返さず片面焼きのままだとレアーが味わえる設計となっている。
決め手のレモンソースは、濃い口醤油をベースにレモン果汁、ニンニク、砂糖、数種類の調味料をまぜたもの。まぜるだけで、3日間寝かせた後、使用するという。仕込みサイクルは1週間に1度。シンプルなだけにブレンドとストックに秘伝の黄金比率があるそうだ。
◆発祥と展開:すき焼きと焼き肉をヒントに ステーキに添えるレモンに着目
発祥は1963年。佐世保の洋食の雄「レストラン門」のチーフコックを務めていた兄・東島紀孝氏は、経営者から「夏場にさっぱりと食べられる肉料理を考えてほしい」と頼まれた。そこで弟・洋氏に相談。弟は東京のホテルなどで修業を積み、帰郷後は米軍海兵隊クラブのコックとしてステーキを焼き続けていた。弟は「分厚いステーキは日本人にはなじまない」と助言。そこで兄弟は、日本のすき焼きと韓国の焼き肉の共通項、「薄く食べやすい牛肉」と「シズル感を演出できる鉄皿」に着目した。課題はソースだった。ステーキ漬けだった弟は、「ステーキにはレモンとバターの付け合わせが定番」ということに気づき、レモン果汁と醤油のブレンドを考案。試行錯誤を繰り返しレモンソースが完成した。当時兄弟は「日本、韓国、米国の3ヵ国を1皿に」とうたったそうだ。
レストラン門で看板料理に定着した後の72年、兄弟は、ふらんす亭を開業し念願の独立を果たした。以降、レストラン門、ふらんす亭で修業した料理人が多く巣立ち、佐世保市内には、各店独自の工夫を凝らしたレモンステーキが広がっていった。
そして、ふらんす亭は3店舗に増え、有名になり始めたころ、ある青年が現れた。田舎から大学に上京するため佐世保に立ち寄った松尾満治氏である。ふらんす亭を訪れた松尾氏は、東島兄弟の温かいサービスとレモンステーキの味に感銘し、大学を休学して1年間、ふらんす亭で修業することを決意。兄弟は「ただ働きでも勉強したい」という松尾氏の意気を受け入れた。この松尾氏が兄弟の許可を得て、東京でふらんす亭をチェーン事業化した。現在は営業譲渡で松尾氏の手から離れているが、エムグラントフードサービス傘下のFF事業として、約50店舗を展開している。
ふらんす亭はその後、火災や兄の病気などにより閉店。弟は86年、「時代屋」を新規開業した。そして昨年、子息兄弟が2代目を継承。長男・寿明氏がマネジャー、弟・寿海氏が料理長を務め、元祖本流の味を守り続けている。
●店舗情報
「下町の洋食 時代屋」 所在地=長崎県佐世保市吉福町172-1/敷地・席数=45坪・54席/営業時間=午前11時~午後9時、月定休
◆エバラで再現!模擬レシピ「すき焼のたれ」でやってみよう!
○作り方(1人前)
「すき焼のたれ」(80ml)、レモン果汁(30ml)、ニンニクおろし(2g)をまぜ合わせてレモンソースとする。
○使用食材:「厨房応援団 すき焼のたれ マイルド」
汎用力抜群の和風調味料
本醸造醤油をベースに砂糖と昆布、かつおを程よくブレンドしたまろやかな甘さのすき焼のたれです。
規格=ボトル1リットル