アポなし!新業態チェック(66)「生パスタ工房 ネオジパング」関内イセザキモール店
○つぼ八手掛けるクイックパスタ店内で製麺、ソースも自家製
来年、創業40周年を迎える居酒屋チェーンの老舗、つぼ八が、去る3月末に生パスタの新業態「生パスタ工房 ネオジパング」を開業した。1号店は横浜のイセザキモールに出店。世田谷の経堂に2号店もオープンしている。
ホルモン焼肉の「伊藤課長」や小型居酒屋「新八」など、意欲的に新業態を開発している同社だが、今回の業態はファストフードという日常食の世界。居酒屋マーケットの縮小を踏まえた新展開といえるだろう。同店は、「ファストフード化に余地があるパスタ」をクイックサービスで提供するというスタイルで、生パスタは押し出し製麺機により店内で製麺、自家製ソースも作るという手作り感で差別化を図る。生パスタは乾麺に比べて含水率が高いため、3分程度のゆで時間で調理できる。このため、約5分で提供するというクイックパスタ業態が可能になるのだ。オペレーションは食券販売機を用いて人員を減らし、500円からという価格を実現した。
メニューは、「アーリオ・オーリオ ペペロンチーノ」(500円)、「つるしベーコンとたっぷりチーズ 濃厚カルボナーラ」(780円)、「仕込みにじっくり48時間 太陽のトマトソース」(580円)など、定番10品の他、季節のメニューを2品用意する。「並盛」は240gだが、+100円で「大盛」320gに、+300円で480gの「W盛」にすることも可能だ。
同社では、月商540万円を見込み3年で投資回収するモデルを想定。直営とフランチャイズで展開し、「5年で100店舗の出店」を目指すという。
★けんじの評価
店はイセザキモールのかなり奥の方に位置している。今回の臨店では、乗り継ぎの関係もありイセザキモールの入り口である関内駅ではなく、京急線の日ノ出町駅から歩いて向かった。営業時間を調べずに行ったのだが、店の前にはもうのぼりが何本か立てられ、店舗のドアも開いていたので入ろうとしたところ、何とまだ開店の30分も前。イセザキモールを一往復して、ようやく開業後の店舗に入ることができた。開店時間前に店の入り口を開けっ放しにしておくのは、何か販促の一環なのだろうか。
開店して間もない時間のせいか、客数の割には従業員の数が多いようだ。パスタは生麺のもちもち感が感じられる平打ち麺。少しばかりオイリーではあったが満足できるおいしさだ。特に、使われているベーコンの味はなかなかのものだった。
ただし、メニューの価格帯はかなり高いと感じられる。ペペロンチーノが500円とワンコインなので、それだけ見れば安く感じるが、その他は680円、780円のメニューが大部分だ。これでファストフード業態と呼ぶには、少し無理があるような気がしないでもない。
全体的に見て、何か新しさのある業態ではないことが気にかかる。パスタを売る店は全国に星の数ほどある。いったいどういう新しい価値をお客に提供するのか、その部分がいまひとつハッキリ見えないのだ。
ちなみに、この記事を書く際にネットでリリースを確認したのだが、何と店舗の所在地も連絡先も記載されていない。リリースとしては少し不備だと思うのだが、これも意図的なものなのか。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
●開業=2012年3月31日/所在地=神奈川県横浜市中区伊勢佐木町2丁目78番地 スミビル1階
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。