看板料理に学ぶヒットの秘訣:味の工房 菜苑 本店「純レバ丼」

2012.08.06 401号 09面
大盛り長ネギの迫力にビックリ。やや小さめにカットされたレバーはたれの辛味を考えた大きさでレバーの味を生かすポイント

大盛り長ネギの迫力にビックリ。やや小さめにカットされたレバーはたれの辛味を考えた大きさでレバーの味を生かすポイント

 「純レバ丼」(1,100円・ランチタイム800円)

 「味の工房 菜苑 本店」

 東京都台東区浅草3-10-6

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 ●浅草、元祖ご当地B級グルメ 鶏レバーを長ネギでおいしく

 筆者の知る限り、この純レバ丼と同様の商品はおそらく存在しないはず、東京・浅草のごく一部の限られた店で売られている一種のご当地メニューともいえるが、その発祥とされるのが、この店の純レバ丼だ。

 レバー料理といえば普通使用されるのは牛か豚のレバー。ところがこの店のレバーは鶏を使用しているのが最大の特徴だ。鶏レバーは牛、豚と比較して一般的には人気がなく、飲食店のメニューにもあまり登場しない。独特の香りやネットリとした舌ざわり、扱いにくい形状などがネックといわれるが、逆にそのクセの強さが好きな人間にとっては強烈な魅力ともなる。

 純レバ丼はその名の通り、鶏のレバーのみを調理したもので、他に加えるのは薬味の長ネギだけ。調味料を除けば、鶏レバー、長ネギ、白飯の3種の食材のみで作られる。シンプルきわまりない商品だ。厳密にいえばもう1種類、鶏の心臓(ハツ)も入っているが、これは鶏レバーの部位どりの習慣上、レバーにつけたまま流通するのが普通だからだろう。

 醤油ベースのやや甘口のたれで炒め煮したレバーは、それだけではやや鼻につくし、量は食べづらいはず。純レバ丼を人気商品にのし上げたのは、タップリと、ほぼ1本分に近い量がのせられた長ネギの効果といえる。これが絶妙のバランスで、鶏レバーの味を引き立てる。食べ始めれば不思議に止まらない。一種の麻薬的味わいがお客を引きつける。洗練とは無縁だが、元祖B級グルメの味といえそうだ。

 ●プロフィル

 押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。

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