新興ご当地グルメ奮戦記:黒豚わっぜえか丼(鹿児島) すごい!を丼料理で表現
●失敗を糧に再出発 原則緩和と個性尊重が成功のカギ 最終目的は共通課題への取り組み
「わっぜえか」とは鹿児島県の方言で「すごい!」を意味する。そのわっぜえかを題目に、鹿児島県料飲業生活衛生同業組合鹿児島支部に加盟する各店は「黒豚わっぜえか丼」なる共通料理を提供し、地域活性化に取り組んでいる。料理の原則は(1)鹿児島県産の黒豚を使った丼であること(2)わっぜえか(すごい)工夫をした店一番のお薦め丼であること。つまり、薩摩気質の豪快な丼料理で、ご当地グルメと地産地消を両立しようとする試みだ。
決起大会が行われたのは、九州新幹線全線開業を半年後に控えた2010年9月。市内32店が参加してスタートし、3年後の現在、26店が継続して提供している。数字的には減っているが、黒豚わっぜえか丼プロジェクトの肥田木康正会長(康正産業社長)は「第1関門は突破した感じ」と自信を深めている。
実は04年にも同様の企画が実施され、参加店・約40店でスタートしたものの、数年後には3店に激減し、自然消滅してしまった苦い過去がある。失敗の理由は、(1)黒豚わっぜいか丼の料理原則が詳細過ぎた(2)県内全域を対象としたため意思の疎通が欠けていた(3)イベントへの参加意識が希薄だった、など。
それらを反省材料に、(1)料理原則を緩和し各店のオリジナリティーを尊重(2)参加店一丸となれるよう市内に限定(3)積極的にイベントに参加しメディアにもアピール、などに取り組み、及第点の成果を得られたというわけだ。
先般行われたプロジェクト集会では、「黒豚わっぜえか丼の量が多すぎるのでは」との指摘に賛同が集まり、ハーフサイズの「もせか丼」(もぜか=鹿児島弁で“かわいい”)を展開する検討も始まった。また、学生を対象とする調理コンテストも模索中だという。
肥田木会長は「原則は大切だが、外食による地域活性には、各店の個性を打ち出せる余地、臨機応変な柔軟性が欠かせない」と説き、「プロジェクトに参加店が結束することで、地産地消や安心安全など、食文化に対する共通課題に取り組める。それがなによりの最終目的」と見据える。
かつての失敗を糧にした再出発は功を奏し、プロジェクトをリードする名物料理も現れ始めている(写真参照)。試みが最終目的に昇華するか否か、これからが本番だ。
●「黒豚わっぜえか丼」をリードする新名物3品
○うなぎのふじ井 「黒豚丼のご飯の中にウナギ蒲焼き」1,500円
黒豚の照り焼き丼と思いきや、ご飯の中から大隅産ウナギかば焼きが登場。鹿児島特産の両雄を1杯で食べられると大人気。
所在地=鹿児島市荒田2-41-1 パルセス・ユニ1階
○焼肉と韓国家庭料理古宮庵アミュプラザ店 「ドーンとスペアリブ250g」850円
特製だれに漬け込んだスペアリブ250gを白飯250gにトッピング。副菜にサツマ芋。繁忙期は日販・約20食に達する。
所在地=鹿児島市中央庁1-1 アミュプラザ5階
○味処むじゃき亭 名物・白熊とのセットが売れ筋 1,150円
鹿児島名物・白熊(かき氷)の発祥として60年以上の歴史を誇る名店。黒豚、鶏そぼろ、錦糸卵を盛った丼とのセットが人気。
所在地=鹿児島市千日町5-8