外食史に残したいロングセラー探訪(85)ねぎ焼 やまもと「ねぎ焼・すじねぎ」
◆ねぎ焼の元祖 収穫したばかりのネギをたっぷりと 母が作った味を7人兄妹が守る
大阪を代表する味のひとつ「ねぎ焼」。大阪の下町・十三(じゅうそう)に、ねぎ焼の発祥店「ねぎ焼やまもと」がある。来年の2015年、創業50周年を迎える同店は、7人の子どもの母である山本高恵さんがご主人の他界をきっかけに創業した。山本家の母の味が、今では、並んでも食べたい大阪の味として多くの人に支持されている。
●商品の発祥:まかない料理から
ご主人を亡くした高恵さんは、家族を養うため、1965年、カウンター6席のお好み焼きとおにぎりの店を実家で開業した。
学校から帰った子どもたちに、水で溶いた小麦粉にネギをたっぷりのせたものを焼き、カウンターの端で食べさせていた。「気分良く店の手伝いをするように、工夫して食べさせてました。いわゆるまかないですな」と、長男で現社長の山本美徳さんは振り返る。それを客が見て、「おいしそう」と注文が入るようになり、次第に「ねぎたっぷりのお好み焼き」がメニューに加わり、3年後には「ねぎ焼」として名物になっていた。
●商品の特徴:新鮮なネギがたっぷり
やまもとのねぎ焼は、鉄板に生地を薄く敷き、刻み青ネギをたっぷりのせる。青ネギは、収穫したばかりの鴨頭(こうとう)ネギ。契約農家から鮮度を保つため、洗わず出荷。翌朝5時、セントラルキッチンに到着。調理をして、その日のうちに各店の開店までに送る。
人気メニューは、国産和牛のスジ肉と国産コンニャクを甘辛く煮たものを入れた「すじねぎ」。紅ショウガは高知県産を使い、「こだわりの食材もウチの特徴です」と、美徳社長。
ねぎ焼は、特製醤油とレモン果汁をかけていただく。さっぱりした味わいが特徴である。
●販売実績:毎月1.6tのネギを使用
看板メニューのねぎ焼は、売上げ全体の60~65%を占める人気ぶり。4店舗合計で、月平均2万1000枚出るという。「フランチャイズにするという考えもありますが、当社はしません。目の届く範囲で、お客さまにいいものを提供したい」と社長の美徳さんは語る。高恵さんは他界され、7人の兄妹たちは現在、各店舗やセントラルキッチンなどで重要な立場を担っている。創業者であり、母親である高恵さんが作ったねぎ焼は、子どもたち全員で引き継ぎ、大阪の味になった。これからも、ねぎ焼の元祖として、大阪の味として支持され続けていくだろう。
◆企業データ
(株)ねぎ焼やまもと/本店所在地=大阪市淀川区十三本町1-8-4/店舗数=5店舗(2014年1月現在1店舗休業。今春再開予定)/事業内容=ねぎ焼、お好み焼きを中心とする飲食業。「ねぎ焼」は、同社の登録商標。マスコットキャラクターは、ねぎ焼シスターズで、山本家兄妹の上から4、6、7番目の3人姉妹がテコを持って踊っている様子を表している。