ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(91)Ivan Ramen アメリカ人が作る正統派日本ラーメン

2014.11.03 428号 08面
 「東京醤油ラーメン」(半熟卵+2$を加えて計15$)、「キューピー・エビ」(14$)、「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(15$)(写真:Daniel Krieger)

 「東京醤油ラーメン」(半熟卵+2$を加えて計15$)、「キューピー・エビ」(14$)、「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(15$)(写真:Daniel Krieger)

店の外観(写真:Daniel Krieger)

店の外観(写真:Daniel Krieger)

 ◆フラッグシップ店NYにオープン 各メディアに取り上げられ、評判に

 日本から逆輸入のアメリカ人による日本の正統派ラーメン店、「アイバン・ラーメン」のフラッグシップ店が、今年春にニューヨークの下町、ロウワーイーストサイドにオープンした。日本でラーメン店を開いて話題になったアイバン・オーキンさんが、ゴーサム・ウエスト・マーケットにアメリカ第1号店をオープンしたのは去年のこと。

 アイバンさんは、ニューヨークタイムズやCBSニュースなどアメリカ各メディアにも取り上げられ、ラーメンの専門書も出版、アメリカでのラーメンの認知度をますます高めている。(外海君子)

 ●酒を飲み、会話を楽しむアメリカ流ラーメン店

 「アイバン・ラーメン」フラッグシップ店は、ラーメン店というより、ポップで清潔なダイナーといった感じ。壁のコラージュもウルトラマンや食い倒れ人形などもあって、全体が明るくて、楽しい。客も大多数が、同店の評判を聞いて来たアメリカ人だ。

 日本のラーメン店と徹底的に違うのが、サラダやアペタイザーなどラーメン以外の食事も出していること、そして、日本酒やワイン、ビールも飲めるバーがあること。何しろ、日本人より時間をかけて食べるアメリカ人には、ラーメン以外の選択肢が要る。酒を飲みながら、会話をしながら、食べる環境が要るのだ。

 メニューは、ランカスターお好み焼き(くず肉をコーンミールなどと混ぜたスクラップル、リンゴのピクルス、メープル・キューピーなどを使ったお好み焼き)やあん肝の焼き飯、バターミルク・ドレッシングをかけたポークのミートボールなど、多種多様。

 ●正統派日本ラーメンに加えオリジナルメニューも豊富

 メーンのラーメンは、昼夜とも、「東京塩ラーメン」(海塩、だし+鶏ベースのスープ、チャーシュー、ライ麦麺=13$)、「東京醤油ラーメン」(醤油、だし+鶏ベースのスープ、チャーシュー、ライ麦麺=13$)、「ベジタリアン・ラーメン」(醤油+野菜ベースのスープ、エノキ、ロースト・トマト、ライ麦麺=13$)、「スパイシー・レッドチリ・ラーメン」(だし+鶏ベースのスープ、ポークのミンチ、つぶした卵、ライ麦麺=14$)は共通。これに、昼は、「レッドホット・コールド混ぜ麺」(スパイシーセサミ+チリソース、エビ、ライ麦麺=17$)、「コールド・レモン塩ラーメン」(海塩、だし、ロースト・トマト、シソ、ライ麦麺=14$)の2種が、夜は、「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(豚骨スープ、チャーシュー、全粒粉の麺=15$)、「チーズ混ぜ麺」(モヤシのピクルス、チャーシュー、全粒粉の麺=15$)の2種がメニューに上がる。

 ユニークなラーメンもあるが、東京塩ラーメン、東京醤油ラーメンは、正統派の日本のラーメン。どれも、アメリカ最高峰の調理師学校、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカでフランス料理を勉強し、料理の基礎をしっかり身に付けたアイバンさんが、日本で独学でラーメン作りを始め、作り上げたラーメンたちだ。

 ●ライ麦添加の麺によく合う丁寧に作られたスープ

 アイバンさんによると、アメリカの粉は日本のものに比べてよくなく、いろいろ試した結果、ライ麦をある程度加えることによって、コシのあるラーメンの麺らしい麺を作ることに成功したという。ライ麦は、そばのように、かむと風味が出るし、食感も違う。

 スープは、トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺とベジタリアン・ラーメン以外は、鶏ベースで、イカ、いりこ、ウルメ、サバ、カツオ、その他もろもろを加えて作っている。アメリカで手に入らない材料は、日本から取り寄せている。きちんと丁寧に作られたことがわかるスープだ。NYで主流の豚骨のこってりしたスープとは違い、淡泊で繊細。それにライ麦の麺がよく合う。

 トッピングのチャーシューは、分厚く、今にもとろけそうな自家製。千切りにしたネギもたっぷりのっている。半熟卵やうま味たっぷりのロースト・トマトは、それぞれプラス2$で加えることができる。

 充実したバーには、常陸野ネストビールなどのクラフトビールも揃えてある。ビールやワインを飲みながら、ゆっくり楽しむラーメン。ニューヨークの下町で、日本のラーメン店とは違った流儀で、ニューヨーカーたちが日本の国民食を堪能している。

 ●人気メニュー5

 「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(15$)

 「スパイシー・レッド・チリ・ラーメン」(14$)

 「東京塩ラーメン」(13$)

 「ピクルド大根XO」(6$)

 「ポーク・ミートボールズ」(9$)

 ●事業データ

 アイバン・ラーメン(Ivan Ramen)/所在地=25 Clinton Street New York NY/開業日=2014年5月/営業時間=昼・正午~午後3時半、夜・午後5時半~翌午前0時/席数=65

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