アポなし!新業態チェック(99)フリーハンド アオヤマ(freehand AOYAMA)

2015.07.06 436号 13面

 ●グローバル出身の急成長企業「コマザワ パーク カフェ」と同時オープン

 2010年の会社創業と同時に、2店舗同時オープンという離れワザを見せて業界をアッと言わせた株式会社easygoingの濱野浩一氏が、この3月、また東京・青山と駒沢公園にほぼ同時に2店舗を出店した。

 濱野氏はグローバルダイニング出身。企画部門のリーダーとして、業界のカリスマとして知られる長谷川耕造氏の直属で店づくりに携わった。同社を退社してすぐに2店舗を開業し、今回の出店で現在は5店舗を運営する。

 今回、駒沢公園「コマザワ パーク カフェ」のオープンが3月1日、そして「freehand AOYAMA」のオープンは3月9日と、その間わずか1週間あまり。店舗開発に関する卓越した力量がなければできないスケジュールだ。

 同店は「ユーロアジア」というコンセプトで、西洋と東洋を融合させたメニューを提供する。メニューブックには、店内でつくる「フライド生ポテト~エスニックスタイル~」(700円)、「ニース風サラダ」(780円)、「青パパイヤとトマト、リコッタのサラダ」(880円)、「アヒージョ」(2種類、各880円)、「シラスとギンディージャのペペロンチーノ」(1100円)などが並び、ほかにも「ガパオ」や「パエリア」など、さまざまな分野の料理が違和感なく同居する。また、ワインリストのボトルワインは小売価格プラス530円で提供されるリーズナブルな価格設定。ランチも1000円から取り揃えられている。

 ランチタイムから深夜4時半まで営業を行っており、すでに都心で夜を過ごす人々の新しいスポットとして話題を集めている。

 ★けんじの評価

 濱野氏の店舗と会社は、独特な雰囲気を持っている。たとえば、同社には公式ホームページが存在せず、各店舗の公式サイトはすべてフェイスブックと食べログが担当している。会社や店舗の表記は横文字が基本で、メディアの取材やパブリシティー効果などをまるで意に介していないようだ。「ラクレットオーブンで香ばしく暖めたラクレットチーズ!!」(1800円)といった豪快なネーミングや、「濱ちゃんおすすめ!」と濱野氏の名を冠した「本物ドライエージングビーフ」(100g1900円、200g3800円、300g5700円)のような大胆なメニュー提案。下地がむき出しの部分と、緻密に計算された意匠を組み合わせた独創的な店舗デザイン。

 小さな冊子のように綴じられたメニューブックや、遊び心にあふれたインテリアデコレーションの数々。子ども連れ客や愛犬を受け入れる店でも、利用ルールは厳格に決め、来店客に提示する。等々、そのすべては濱野ワールドであり、これこそがカフェ文化を昇華した大人の飲食店と感じさせる。大衆にこびることなく独自の価値観で魅力ある店舗をつくり上げれば、それが時代をけん引する繁盛店になるのだ。業界の前提や過去の常識にとらわれない行動力だけが、次世代の基準を生み出すことができる。

 同社のスタッフは、グローバルダイニング出身のメンバーが要所を固めている。ポリシーを共有できるチームだからこそ成立する組織といえるのかも知れないが、拡大を続けるためには新しいビジョンが必要になる時期も訪れるに違いない。今後の展開から目を離せない注目企業だ。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

 ●店舗情報

 「フリーハンド アオヤマ(freehand AOYAMA)」

 開業=2015年3月9日/所在地=東京都渋谷区神宮前5-51-8 La Porte AOYAMA B1F

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