企業トップinterview:物語コーポレーション・加治幸夫社長
『個』の尊厳を『組織』の尊厳より上位に置く企業。物語コーポレーション社員が携帯するクレド(行動指針)「The Monogatari Recipe」の冒頭に書かれた一文だ。14期連続増収増益、9期連続既存店売上高増収、平均離職率13%と華々しい数字が躍る同社の強さの秘けつは何か、加治幸夫社長に聞いた。
●「おせっかい文化」強みに グループ売上高1500億円目標
–国内の市況は。
外食産業を取り巻く環境は、人口減少による市場縮小に加え、宅配サービスなどの新業態の台頭や冷凍食品の品質向上などによって競合環境が激化。さらに、お客さまの消費に対するめりはりが鮮明になりつつある中で、あえて外食に行く価値を創造できるか、問われる時代になっている。
直近では、消費増税の影響を聞くが、我々は価格戦略によって差別化を図る小売業とは異なるため、これまでと同様、ほぼ影響ないと分析している。確かに10月単月では、台風などの影響で若干苦戦を強いられたが、要因ははっきりしているため、不安はない。
–事業展開について。
店舗数は19年10月末時点で、国内が焼肉239店舗・ラーメン155店舗・ゆず庵71店舗・お好み焼き37店舗・専門店4店舗の計506店舗、海外は中国に18店舗。さらに今後はインドネシアにも展開予定だ。そのうち、焼肉業態を中心に直営店が56%。フランチャイズはオペレーションや必要人員などが比較的容易であることからラーメン業態が多くを占める。
得意とするのは、郊外の大型店舗だが「立地条件」「規模」が合致すれば、まだまだ出展の余地があると考えている。国内では年間約50件の新規出店が目標。具体的には、小型店舗「きゃべとんラーメン」や、都心繁華街型の「熟成焼肉肉源」を出店することを検討中で、立地に応じた引き出しを増やすことを試みている。重点エリアは、まず地域の一等地。業態別では「丸源ラーメン」を九州、焼肉業態を東北で拡大したいと考えている。
–業績は。
19年6月期の単体売上高は約590億円。14期連続増収増益に加え、既存店売上げも9期連続増収を継続中です。既存店売上げを重視する考え方は私が2年かけて浸透させた。
今期はここまで、焼肉業態は既存店売上げ前年比1%増で推移。ラーメン業態も、「丸源ラーメン」を中心に好調だ。名物メニューと豊富な品揃えに加え、季節限定品を投入することで飽きさせないのが秘けつだ。専門店業態は、高級居酒屋である「魚貝三昧げん屋」が13期連続増収を続けるなど、チェーン業態とは一線画す地域密着型経営という価値が評価を得ている。一方でお好み焼き業態は正直、苦戦中だ。ただ現状、お客さまの60%が食べ放題を来店理由に挙げており、もう一歩上の価値を創造できればさらなる飛躍が期待できると踏んでいる。
–強みは。
現代は企業が描く展望に対して実現の可否を厳しく問う、意識の高い若い世代が増え、従来のやり方は通用しない。経営方針を決定するまでの過程を座学で伝えるとともに、疑問や意見を自由に発信できる環境と挑戦をサポートする体制を整え、「人をベースにした開発」に力を注いでいる。
また、各店舗でお客さまへ最もおいしい食べ方のアドバイスや、要望や不満を収集する「おせっかい係の可視化」を図ることで付加価値を生むとともに、価値のブラッシュアップを図っている。近い将来、「おせっかい文化」を当社の戦略的な強みへと昇華できればと考えている。
–展望は。
創業当時からの考え方として社内で脈々と受け継がれてきたDNA「物語的大家族主義」に共感し集まった多種多様な人材が「亜僑(※)」の考えのもと、人による付加価値を生み出す「開発型集団」となると同時に幸福を感じられる企業となることが理想。数値的には25年6月期、グループ売上高1500億円、連結売上高1000億円、中国500億円、20期連続増収増益の達成を目指している。
※「亜僑」=創業者である小林佳雄(現特別顧問)が提唱する造語。それぞれのアイデンティティを尊重し合い、国籍や人種などの枠にとらわれない生き方は人生をよりイキイキさせるという考え方。
●物語コーポレーション
物語コーポレーション/「焼肉きんぐ」「焼肉一番カルビ」「丸源ラーメン」「お好み焼本舗」「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」「源氏総本店」など、さまざまな業態を全国に展開するフードビジネスカンパニー