海外通信 外食ビジネスの新発想(88)ヘルシーな和食FF SNS映えするオニギリ・サンドイッチ

2025.05.05 555号 13面
人気のラーメン風味12.25$

人気のラーメン風味12.25$

セットメニューは15.75$~。味噌汁、枝豆、大学芋など付け合わせによって値段が変わる

セットメニューは15.75$~。味噌汁、枝豆、大学芋など付け合わせによって値段が変わる

左から「サーモンエッグ」11.50$、「唐揚げマヨネーズ」10.75$、「キンピラ」10.50$

左から「サーモンエッグ」11.50$、「唐揚げマヨネーズ」10.75$、「キンピラ」10.50$

いろいろと試してみたくなる美しいビジュアル。友だちと行って半分ずつ交換したくなる

いろいろと試してみたくなる美しいビジュアル。友だちと行って半分ずつ交換したくなる

帯のようなラッピングもかわいく手土産にも。元テキスタイルデザイナーのオーナーのセンスが光る

帯のようなラッピングもかわいく手土産にも。元テキスタイルデザイナーのオーナーのセンスが光る

ランチタイムは近くで働くビジネスマンや学生で行列が絶えない

ランチタイムは近くで働くビジネスマンや学生で行列が絶えない

オーダーが入ってから手作りするオーナーの辛川知さん(中央)はフレッシュでおいしいことにこだわる

オーダーが入ってから手作りするオーナーの辛川知さん(中央)はフレッシュでおいしいことにこだわる

 ●SNS映えするオニギリ・サンドイッチ

 ここのところすっかり世界の大都市で市民権を得たおにぎり。それに続くセカンドウエーブとしてSNSを中心に人気が出てきているのがおにぎらずだ。日本でも数年前から朝ご飯やお弁当に便利な家庭料理として人気だが、色とりどりの具を挟んで半分にカットしたときの断面の美しさから「映え」を重視するSNS世代から火が付き、ヘルシー志向かつ多忙なニューヨーカーの心をつかんだ。サンドイッチのように片手で食べられて具が1つでなく野菜、タンパク質、ソースまで加えられる完全栄養食であるのも魅力だ。

 2018年にマンハッタン、イーストビレッジでコーヒーショップとしてスタートした「トクヤマッチャ&オニギラズ・バー」。主力商品は店名の通りオニギラズ=オニギリ・サンドイッチだ。SNS世代の若者が多いイーストビレッジの1店舗目で新しさと見た目の美しさで火が付き、じわじわとランチタイムの行列が伸びていった。24年にビジネス街のフラットアイアン地区に待望の2店舗目をオープン。若者が客層の中心である1店舗目と比較すると、ランチタイムにテイクアウトをしてオフィスに戻るビジネスマンが目立つという。ランチはもちろんのこと、帰宅前に夕食用として購入し、持ち帰るケースも少なくないそうだ。

 オニギラズと並んで人気商品の抹茶ドリンクも、本当においしいことを追求しているというオーナーの辛川知さん。どの商品も作り置きはせず、オーダーが入ってから作ることにこだわり、デリバリーのオーダーであっても配達人が顔を出してから作る。フードロスの観点からも大事にしているポイントだ。

 人気メニューは「サーモン・アボカド」10.75$、「ガーリックチリ・チキン唐揚げ」11.25$だが、ほかにもラーメンスープで炊いたコメにチャーシュー、なると、ゆで卵を挟んだ「ラーメン風味」12.25$、ヘルシー志向の進むニューヨークで必須だという大豆ミートを焼肉風に味付けた「ヴィーガン焼肉」10.50$など、20種類あるオニギラズはまんべんなく人気だ。色とりどりの美しい断面を眺めていると次はこれを試してみたい、という気持ちになりリピーターが毎回違うものを頼むのであろうと納得できる。メニューに登場する味噌や梅干しはスーパーフードとして認知されているため、抵抗を示す客は少ないという。海苔も大豆ラップへの変更が可能だがリクエストされることは少ない。

 同店のオニギラズが日本オリジナルのおにぎらずと大きく異なる点は、何といってもそのボリュームだ。丼1杯分程度のボリュームがアメリカ人にも好評で、サンドイッチの平均価格が14$であるマンハッタンではコスパのよさでも話題になっている。

 寿司、ロール寿司、丼物、オニギリ、おにぎらず、と根を伸ばすジャパニーズフードの新たなブーム。次はいなり寿司だろうか、手まり寿司だろうか、楽しみだ。(井澤歩)

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