メニュートレンド:ありそうでなかった1人1鍋 韓国や中国の味もラインアップ
鍋料理といえば「グループ客注文」「冬季限定」が当たり前。そこに1人前で提供する「小鍋立て」スタイルを採用し、一年中食べられる鍋料理の新たな価値提案をしているのが、東京・東中野の「小鍋立て専門 なべしろ」だ。
●1人鍋でもボリューム満点!
完成までキッチンで調理した鍋を速やかに客席まで運び、ふつふつと湯気がこぼれ出る鍋蓋を目の前で取り外す。グツグツと料理が沸き立っている様子は鍋料理の醍醐味で、動画映えも抜群だ。
「コロナ禍の時期に話題になった“1人しゃぶしゃぶ店”が発想のヒント」とYT FOODSの林鷹成社長は開発のきっかけを振り返る。
鍋料理に目を向けると、2人前以上の注文が原則の従来の鍋は、客の1人が火加減の調節や料理の取り分けをしなければならず、ゆっくり食事を楽しめない。また、鍋つゆや締めのバリエーションがあっても、自分の好みを選びづらい。さらにはコロナ禍以降、シェアして食べることに抵抗感を抱く客も増えた。従来の鍋メニューに対するこうしたマイナス要因を解消すべく考案したのが、1人1鍋で提供する「小鍋立て」というわけだ。
小鍋立てメニューは8品をラインアップ。スタンダードな寄せ鍋的位置付けの「たっぷり野菜の小鍋立て~みぞれ風~」(税抜き1200円)もあるが、韓国料理や中国料理を鍋料理にアレンジしたものなど、自由度の高い味が揃う。
人気商品の「本格麻婆の小鍋立て」は、豆腐1丁をそのまま盛り付けたビジュアルがインパクト大。中国料理の経験も豊富な中島悠料理長の自家製ショウはスパイスの香りが刺激的で、本場さながらの味わいが特徴だ。
「ねぎまみれの小鍋立て~すき焼き風~」など野菜をたっぷり摂れるヘルシーな鍋も多く、「野菜嫌いの子どもにこそ食べてほしいので、鍋つゆは甘めの味付けを意識している」(林社長)という。
1人客も気兼ねなく利用できる点も「小鍋立て」のメリット。現在、単身世帯の割合は34%と子育て世帯よりも多く、今後も増加傾向が続く。1人鍋は時代にフィットした提供法といえる。
●店舗情報
「小鍋立て専門 なべしろ」
経営=YT FOODS/店舗所在地=東京都中野区東中野1-15-3 1階/開業=2024年12月/坪数・席数=20坪・25席/営業時間=11時30分~15時(平日のみ)、17時~23時。水曜休/平均客単価=昼1200円、夜3000円
●愛用食材・機器
「万能 ブレンド中厚削り」 フタバ(新潟県三条市)
絶妙な配合バランス
鍋つゆのベースとなるだしの主原料に採用。イワシ、サバ、ムロアジの節を独自に配合。鍋つゆに最適な、深みのあるうまみとほど良い甘味を引き出す。中国風のパンチを利かせた調味にも負けないだしが取れることも決め手。
規格=1kg
【写真説明】
「ねぎまみれの小鍋立て ~すき焼き風~」 1,400円+トッピング牛肉 500円
「本格麻婆の小鍋立て」 1,350円+トッピング野菜100円(すべて税抜き)
写真手前の「本格麻婆の小鍋立て(+野菜トッピング)」は、辛さを抑えているが+150円で辛口にも対応する。奥の「ねぎまみれの小鍋立て~すき焼き風~(+牛肉トッピング)」は九条ネギ、万能ネギ、長ネギと牛肉をすき焼き風の鍋つゆで仕上げてあり、卵にくぐらせて食べる。中島料理長のコレクションでもある猫の箸置きが心を和ませてくれる