Column:高齢者施設で外食の味を サ高住の「スシローの日」

2025.10.06 560号 16面
「通常メニュー」はマグロ、エビ、サーモン、煮アナゴ、ビントロ、活締めハマチ、活締め真鯛、イクラ軍艦の8貫セット

「通常メニュー」はマグロ、エビ、サーモン、煮アナゴ、ビントロ、活締めハマチ、活締め真鯛、イクラ軍艦の8貫セット

「生もの抜き」はウナギの蒲焼き2貫、牛塩カルビ、エビ、エビチーズ、煮アナゴ、卵、シーサラダ軍艦の8貫セット

「生もの抜き」はウナギの蒲焼き2貫、牛塩カルビ、エビ、エビチーズ、煮アナゴ、卵、シーサラダ軍艦の8貫セット

エビ、卵、ウナギ、鯛、サーモンのムース食の寿司も提供している

エビ、卵、ウナギ、鯛、サーモンのムース食の寿司も提供している

「スシローの日は外出をしないと決めている」という入居者も多いという。普段は刻み食だが「寿司は普通に食べたい」と、この日だけは通常メニューを希望する入居者や、この日だけは残さず完食するという入居者も。「スシローの日」の楽しみがあるため、転居する際にもアンジェスの別施設を希望した、という例もあったようで寿司の魅力は偉大だ

「スシローの日は外出をしないと決めている」という入居者も多いという。普段は刻み食だが「寿司は普通に食べたい」と、この日だけは通常メニューを希望する入居者や、この日だけは残さず完食するという入居者も。「スシローの日」の楽しみがあるため、転居する際にもアンジェスの別施設を希望した、という例もあったようで寿司の魅力は偉大だ

「スシローの日」に寿司を楽しむ入居者の様子

「スシローの日」に寿司を楽しむ入居者の様子

 T.S.I(本社:京都市)が運営するサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」は、あきんどスシローと連携し、同施設35拠点で毎月第3水曜日を「スシローの日」として昼食にスシローの寿司を提供するイベントを展開している。このイベントは今年で3年目を迎え、入居者には大好評だ。

 ●寿司にみんなにっこり

 提供される寿司は同イベント用にメニュー開発した8貫握りセットで、定番ネタを揃えた「通常メニュー」のほか、「エビ・貝・カニ・卵抜きのアレルギー対応」「魚、青魚抜き」「生もの抜き」の4メニューあり、価格は1食510円~620円という。そのほか、ムース食タイプや刻んだネタ(刺身)をおかゆにのせた特別メニュー(いずれもスシロー商品とは異なる)、寿司が苦手な人向けには松屋の牛丼を用意している。

 実施の経緯について、T.S.Iの施設管理部次長、椎葉晴宣氏は「以前から『寿司が食べたい』という声が多かった。生の魚は衛生面でハードルが高く、施設の食事では提供が難しい。だからこそ要望も多く何としても実現したかった。ほぼすべてのアンジェスで実施できるよう法人契約を前提に宅配寿司店などにも相談したが、どこも難色を示した。スシローさんだけが唯一、細かく対応してくれた」と話す。実施に当たっては30分以内で施設に持ち帰るというルールを設け、小規模施設はスタッフが直接取りに行き、大人数の施設は配送プラットフォーム「ピックゴー」を活用。「各地のどこのアンジェスにも30分圏内にスシローがある事実に驚いた。スシローさんの規模は大したもの(笑)」と椎葉氏は感心する。

 最も苦労した点は、アレルギー問題だ。「アレルギー食材が入っていない、というだけでなく同じ調理場で扱ってもNG。スシローさんは積極的に情報開示してくれ、安心してお願いできた」(椎葉氏)という。

 この取り組みはスシローにとっても初の事例だった。あきんどスシローの営業企画部法人営業マネージャー、藤原祐二氏によると「当社は法人向けでは会議や葬儀会場などに寿司を提供しているが、高齢者施設は初。現場ではリスクを懸念する声も上がったが、こうしたニーズは今後増えていくはず、と取り組んだ。噛み切りづらいイカ、タコなどを使わないなどネタのバリエーションを工夫しましたが、寿司自体は通常店舗で提供しているものと同じ。アンジェスさんなど高齢者施設は衛生面でも取り扱いが丁寧で、問題はまったくない」。

 アンジェスとの連携が好事例となり、スシローでは現在、約900の高齢者施設に不定期で寿司を提供している。今後はより多くのさまざまな高齢者施設を想定し、半分量のネタや冷凍寿司の開発にも乗り出しているという。

 アンジェスの「スシローの日」は今や名物イベントで、入居者にとって毎月の大きな楽しみ。日本人にとって寿司はやはり、特別な魅力があるようだ。と同時に、高齢者施設で外食の味が楽しめるという喜びも存外大きい。高齢者施設と外食店のコラボは今後、ますます拡大していくのではないだろうか。

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