海外通信 外食ビジネスの新発想(91)ロボットの作るバーガー
●生産性・一貫性・正確性向上、人件費削減に Made by Robots.Loved by Humans
カリフォルニアのシリコンバレーにオープンした「バーガー・ボッツ」は、注文に応じて、目の前でロボットがバーガーを作ってくれる。ベジタリアンのインポッシブル・バーガーから、エビのバーガー、韓国風プルコギ・バーガー、フライドチキン・バーガー、豆腐バーガー、ベトナム風バンミー・バーガーなど、メニューにはいろいろなバーガーが並んでいる。注文前にスタッフまで声をかけるか、オンライン注文時にメモを残せば、ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリーにも対応。すべてポテトフライ付き。
同店では、2台のロボットを使っている。QRコードの注文情報をもとに、トマトや玉ネギ、レタスなど野菜を選択し、バンズの上にのせるフレックス・ピッカーと、バンズにソースを種類・分量とも注文通りに注いでバーガーを仕上げ、箱を組み立てるデュアル・アームだ。
スイスに本拠を置くグローバル企業、ABB社製のロボットは、在庫システムとも直結しているので管理がしやすい。ロボットのすべての動作は最適化され、品質の維持、人間のエラー削減、一貫性の維持、衛生基準の順守を可能にしている。
同店では、パティを焼く作業は人間が行っており、バーガー作りは、人間とロボットの共同作業だ。一部をマニュアル作業で対処した方が効率がいいのだろう。マイ・バーガーをロボットが作り上げていくプロセスは、ガラス越しに見ることができ、客引きにもなる。実は、外食産業では、寿司ロボットやバリスタ・ロボットなどさまざまなロボットが採用され、すでに活躍している。
連邦の最低賃金は、時間給7$50¢で、日本円でほぼ1050円。カリフォルニア州の最低賃金は16$(約2300円)。ニューヨーク州では、15$50¢で、ニューヨーク市および近隣の最低賃金は16$50¢、来年にはそれぞれ50¢ずつ上がり、ほぼ2500円になる。労働集約的な外食産業では、売上高の約3割を人件費が占める。ロボットの初期投資は大きいが、長期的にはコスト効率がいい。ロボットは、年中無休で文句も言わずにひたすら働き続けてくれる。
ロボットが調理するゴースト・レストランも操業している。デリバリーとテイクアウトに特化した「ベター・デイズ」がそれだ。ファストフード並みの価格と利便性を提供しつつ、フルサービスのレストランと同等の品質と味を特徴とする「ファスト・ファイン」コンセプトを追求、ロボティクス、AI、調理工学を融合させて、手頃な価格でパーフェクトな食事を提供するとしている。
ロボットは、特にファストフード、ファストカジュアルなどの人に見えないキッチンで単純作業に使われてきたが、今後は、客に見えるところにもロボットが進出してくることだろう。すでにバリスタのロボットが、完璧なコーヒーを客にサーブする店もあり、料理を運搬するウエイター・ロボットもいる。調理などレストラン業務の8割以上が今後、ロボットに置き換えられるだろう。(外海君子)
◇概要
店名=バーガー・ボッツ(BurgerBots)
所在地=160 W Main Street Los Gatos, CA 95030