飲食店独立開業特集:個店編・松本芳幸さんの場合 和食「清川」

2001.06.18 230号 2面

松本芳幸さん(45)が、工場ロボットなどを扱う優良企業・東京ナショナル産業機器の退職を決意したのは三一歳の時だ。

「まず、飛び込み営業が肌に合いませんでした。そして、四〇代半ばの上司の給料袋をのぞいたら、自分とたいして変わらない。ひょっとして俺も三〇年間勉めて、こんなものなのだろうか」

「将来を考えると飛び込み営業の嫌気が増すばかり。食いっぱぐれのない料理人になって自分の店を持とうと決心し、辞表を出しました」と独立開業の経緯を語る。

そして、館林市近隣のドライブインに修業のため再就職した。だが、三〇歳過ぎてからの肉体労働はきついばかり。NHK大河ドラマの放映で「足利ブーム」の当時は、観光バスが着くたびに、二〇〇人、一五〇人という目のまわるような忙しさ。

しかし、その多忙極まる大量調理の経験が松本さんの料理人としての腕を磨いた。気がつけば、三年の月日が流れていた。新店舗の責任者を任せられるほど腕を上げた松本さんは、この機に独立を考えた。

平成9年2月、館林市郊外の地元ホームセンター向かいの一二坪の貸し店舗と契約し、和食居酒屋の独立開業を果たした。

奥さんは、小さい子供をおぶいながら必死に働いたが、月商は一四〇万円~一六〇万円と不満足な結果で、三年前、実家の土地に建坪三二坪の店を開業した。すぐ裏には、大きな寺があり法事宴会が見込め、最大四〇人の法事宴会ができるようになったという。

新規開業後の売上げは平成11年度二八〇〇万円、平成12年度二五〇〇万円と好調に推移。開店三周年の今年は、販促イベントに注力し、営業を盛り上げたい考えだ。

根っからの料理人ではない松本さんは、以前の会社で覚えた計数管理を強化し、経営が丼勘定にならないよう注意をしている。優良企業を辞め、三〇歳過ぎからの板場修業と独立開業。現状に満足することなく、今後も店の発展に挑戦し続けるという。

◆奥さんからの一言

もとは幼稚園教諭だったのです。プロポーズの言葉は、「絶対つぶれない会社に勤めているから…」。でもすぐに、この会社を辞めて自分の好きな道を歩きはじめたのです。裏切られましたね。でもこうなったらもうやるしかないと思い、今はお店の女将(おかみ)として割り切ってやっています。

★将来の夢/もっと売れる店にしたいと思い、初めての販促やイベントを実施し、大勢お客様を呼びたいですね。

★和食「清川」/業種業態 =和食割烹/所在地=群馬県館林市羽附町五七四‐一 /オーナー=松本芳幸(45)/開店日=平成10年2月/坪数=敷地約五〇坪(建坪三二坪)/投資額=三五〇〇万円/売上高=平成11年度二八〇〇万円、平成12年度二五〇〇万円/資金調達法=実家の土地を担保に、環境同業融資を受ける/売れ筋メニュー=一位・天丼・七〇〇円、二位・特選ちらし寿司・九八〇円、三位・法事宴会・客単価四五〇〇円

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