トップインタビュー:日本環境財団理事長・高見裕一氏

2001.07.16 232号 15面

学生のころから市民運動を推進し、全国ネットの市民団体「日本リサイクル運動市民の会」や有機農産物のネットワーク「らでぃしゅぼーや」を立ち上げるなど、地球環境をテーマに、活動を続けてきた高見裕一氏。現在は日本環境財団の理事長として、人と自然の共生、持続可能な社会づくりのため、だれでも共感でき参加できる具体的行動プログラムの開発を行っている。二一世紀は環境元年といわれ、外食産業も企業の責任で、環境対策に取り組まなければならない時代だ。今回の参院選では、民主党から再び政界入りを目指す高見氏に、企業として、国として、いま環境問題にどう対応していったらいいのか聞いた。

‐‐環境三法が施行され、外食産業はいま食品リサイクル法への対応が課題です。

高見 これまで企業の社会的責任とは、良いものをつくって売り、たくさん儲けることだと思われてきましたが、これからは、環境負荷が少ないものをつくる、廃棄物をきちんと管理する‐‐までを果たして、社会的責任が完結します。

今の日本社会のパラダイムは残念ながら、経済成長優先です。でもそのことで反対に持続不可能な社会になっていくことに、そろそろ気が付かないといけない。外食に限らず日本の経営者は、儲かればいいという考えで、業界の自主的な発想の転換を待っていては、二〇〇〇万tもの食品廃棄物の問題は解決しません。

堆肥化には議論もありますが、まず始めの一歩を踏み出すことが肝要です。

私が心配しているのは、大規模システムに頼りがちな日本人の性質です。例えば大規模公益下水道システム。年間三兆六〇〇〇億円ものお金を投入しながら、一向に整備率が上がらない。広域なエリアを一ヵ所の大規模システムでまとめようとせず、個別のシステムをマンション、町内会などコミュニティーの単位でつくれば建設費は一〇分の一で済むんです。でもやらないのは、ゼネコン、特殊法人、族議員の既得権益を守るため。

エコロジーというと聞こえはいいですが、循環に関する法律が、これと同じような既得権益の温床になることを懸念しています。

‐‐外食産業からは、リサイクルするために、政府の具体的後押しが必要という声も出ています。

高見 社会の仕組みを下支えするものに予算をつけることは必要です。でも現場が求めるならば、業界の中で、政策提言能力を養っていかないと。

日本人はお上依存で、お上の言うことを聞いていれば、何となく良くしてくれると思っている。でもデモクラシーというのは、自分たちの意見を政治に反映させていくことです。

外食産業は政治的触媒はいらない、関係ないと思っているかも知れませんが、世の中というのは、はしの上げ下ろしまで法律で決められているんです。そこに意見を言える回路を持たないまま、文句を言ってもだめだと思う。

私も環境問題をやって、行政や企業の壁にぶつかりながら戦ってきました。できるだけ問題の本質を明らかにして、代案を提示するようやってきた。でも、行政は政治で決めたことの執行機関にすぎないと、はたと気づいたんです。政治から逃れてはいけないと痛感しました。

‐‐食の安全保障を訴えていますね。

高見 冷戦が崩壊した後、市場経済が世界を席巻しています。世界中のあちこちで小さな紛争が起きている。いま人類の持続可能性を考えたときに、南と北の格差をもっと真剣に考える必要があるでしょう。日本は世界の富の二〇%を、たった〇・一%の国土で、一%の国民が握っています。それが南北の格差を助長し、国際秩序を危うくしている。

これからの国際秩序には、民族、宗教、文化、部族のほかに、必ず水と食糧が加わってきます。日本はこの国際秩序にどう関わるかを意識しなければならないのに、その視点が抜けているのです。これが問題。

日本の役割としては、無駄な食品を大量廃棄、大量輸入をしないこと。大量の食品輸入は、水も大量に輸入していることになる。

国際マーケットはこれからどんどん困窮してきます。とくに中国が輸入国に転換して、アジアの食糧事情は、悪化の一途をたどっていくでしょう。

いつまでもこんなわがままな飽食の時代が続くはずがない。自分たちが恵まれていることになぜ気が付かないのか。一〇年先の日本を想像すると、どれほど怖くて寒いものがあるか。

リサイクル法も、国家としてのフィロソフィーが本当は問われているのです。

論じられるべきことは、食、水、エネルギーを自己完結できる仕組みを、日本の国家安全保障としてつくっていかなければいけないということ。国家のグランドデザインとして今何をすべきか。そこが語られず、自分たちが儲かった、損したという話ばかりじゃダメなのです。

◆「財団法人日本環境財団」=東京都千代田永田町二‐一四‐三、赤坂東急プラザビル7F、03・5521・1774 http://www.jefnet.of.jp

食品リサイクル法関連では、日本土壌協会と堆肥の作り方、できた堆肥の品質評価などの基準作りを進めている。現在セブンイレブンのお弁当のベンダーで組織するデリカフーズ協会が生ごみの堆肥化を進め、この堆肥はホームセンターで販売されている。

◇プロフィル

◆たかみ・ゆういち=一九五六年神戸市生まれ。八四年日本リサイクル運動市民の会を設立。九三年衆院議員を一期務める。九八年

日本環境財団を設立し理事に就任。著書に阪神大震災の体験をまとめた『官邸応答せよ』『出る杭になる』がある。二〇〇一年7月、第一九回参議院議員選挙では、民主党の比例代表選出議員候補。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら