クローズアップ現在:行列をつくる背徳グルメ デカ盛りとの差別化が鍵

2026.01.05 563号 15面
“背徳グルメ”の元祖ともいえる二郎系はすっかり浸透し、インスパイア系の店舗も次々と開店している

“背徳グルメ”の元祖ともいえる二郎系はすっかり浸透し、インスパイア系の店舗も次々と開店している

「シェアレストランアワード2025」で銀賞を受賞した「COFFEE AND TOAST(コーヒーアンドトースト)」の「“ぽっかぽか”えびと帆立のグラタンぱん!」(2,980円・税込み)

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原宿竹下通り店に続き、都内では2店舗目となる渋谷肉横丁店を10月にオープンしたボリューム系サンドイッチ専門店「チャームサイドサンドイッチ」の一番人気商品「ミートボックス(ポテト付き)」

原宿竹下通り店に続き、都内では2店舗目となる渋谷肉横丁店を10月にオープンしたボリューム系サンドイッチ専門店「チャームサイドサンドイッチ」の一番人気商品「ミートボックス(ポテト付き)」

 誰もが一見して「食べたら太りそう」と思えるような高カロリー料理は、それでも食べてしまう。いや、だからこそ食べたくなるのだろう。食べた時に「我慢できなかった自分への罪悪感」を覚えるのか、はたまた「食べきった達成感」を得るのか。人によって分かれるのも“その分野の料理”の特徴だろう。そんな背徳感のあるグルメ「背徳グルメ」が最近人気だ。専門店もできている。健康志向、ヘルシー志向といわれる中、なぜその逆発想ともいえる高カロリー高脂質メニューが人気なのだろうか。

 ●ラーメン二郎はデカ盛りがウリの料理ではない

 以前、マリトッツォが大流行りしたときに、筆者はそれらを「ギルティフード」と命名した。健康を促進するとは思いにくいグルメであり、そういったマイナス要因が一目瞭然にわかる形態、形状であるにもかかわらず、なぜ行列に並んでまで食べたい人が多数いるのか。当時はコロナ禍の心理的な影響があるのだろうと解説した記憶がある。

 料理の各ジャンルに背徳グルメは存在すると言っていい。例えばラーメンの背徳グルメの“老舗”といえば、「ラーメン二郎」ではないだろうか。

 豚骨ベースのスープは背脂がたっぷりで、麺量は小盛りで300g、通常のラーメンの2~3倍といわれている。1968年のオープン以来今もそのスピリッツは健在で、系列店舗は行列をつくる。2003年に商標登録を取得し、ラーメン二郎の影響を受けたラーメンは、二郎系、二郎インスパイア系などといわれ、ラーメン二郎のファンは「ジロリアン」と呼ばれる。それほどまでにラーメン二郎はブランド化されているのだ。

 ●女性が好むカフェにおける「背徳グルメ」

 東京・三軒茶屋にある「COFFEE AND TOAST(コーヒーアンドトースト)」は、背徳料理の専門業態といえる店だ。店内の壁いっぱいに背徳メニューのイラストが貼られており、右も左も背徳グルメ。筆者などはメニューのイラストを見るだけでお腹がいっぱいになってしまう。カフェなので基本的にはカフェメニューなのだが、トーストが厚さ5センチ以上の厚切りだったり、ホイップクリームがあふれんばかりにのっていたり、ボリューミーなのだが盛りつけはきれいにまとまっていて、女性が好きそうなビジュアルになっている。

 24年12月、東京・原宿竹下通り店をオープンした「チャームサイドサンドイッチ」は一見してわかりやすい背徳グルメサンドイッチがウリだ。厚さ5センチ以上あるトンカツを挟んだサンドイッチや卵サンドも相当に厚い。いずれのサンドイッチもパンがやけに薄く見える。

 「シカゴピザ&スフレオムレツ Meat&Cheese ARK2nd 新宿店」では、たっぷりのオムレツに皿からはみ出るほどのとろけるチーズがのっているメニューや、チーズがあふれてピザ生地を覆い隠しているシカゴピザなど、チーズをふんだんに使ったメニューが人気となっている。中でも「ボルケーノシリーズ」は背徳感が強いメニューだ。チーズのお風呂(のように見える)につかった“チーズまみれの”パスタなどインパクトが強い。

 外食に限らず食品メーカーでもメーカーの商品を使用した背徳メニューを訴求すると商品が売れるという。外食では機会がないが、家では食べたいという人も多いのだ。

 ●「背徳グルメ」と「デカ盛りグルメ」はどう違うのか

 「背徳」という言葉は不思議だ。“惹かれる”人もいれば、“引く(ドン引きの意)”人もいる。背徳グルメをストレス発散に食べる人もいれば、映えを重視して注文する人など、背徳への認識もさまざまだ。

 背徳グルメとデカ盛りグルメの違いは何だろうか。

 そもそも確立された定義は存在しない。とにかく極端な大盛りに盛り付けられた料理がデカ盛りだとすると、背徳グルメは美しさや映えも求められる。

 また、単にボリューミーなのではなく、高カロリー、高脂肪であることが背徳の必須条件だと考えられている。高カロリーな食材同士がひとつの料理の中に混ざり合い、一体感が出ていることが重要なのだと筆者は思う。

 ある程度の見た目や味のバランスも条件となる。デカ盛りに挑戦する時の“挑む”ような感覚とは異なる。そのため、料理によっては若い女性が好んで食べ、トレンドになっていくのだ。

 ●食のトレンドは心理と社会を反映させていく

 さらに背徳グルメはデカ盛りと異なり「いつも頑張っている自分に今日はご褒美で。チートデーだから」といった「言い訳」が成り立つ。高カロリーだけれどおいしい料理をたまには食べて元気を出す、という一連の心理面の流れの中で、人々はプチストレス発散をさせていく。そのため、食べ終わった後に幸福感をもたらしてくれる背徳グルメは人気が出やすい。

 人間が食に求める要素は時代を映し、個人の状況や環境を映していく。その度に何かしらの要因があって人間は「その料理」を求める。背徳グルメが今、人気を呼んでいるということは、現代のストレス社会を表している側面もある。と同時に物価高の人々の日常的な発散手段の“予算”がどれほどかも映し出しているのだろう。

 (食の総合コンサルタント トータルフード代表取締役 メニュー開発・大学兼任講師 小倉朋子)

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