関東業務用食品卸覆面座談会 外食・業務用流通課題と展望を探る
◇減る飲食店、迫る調達危機 持続性向上へ共通課題山積
コロナ明けの活況から2年半。外食・業務用流通市場に再び大きな変化の波が押し寄せている。25年はインバウンド需要の続伸や大阪・関西万博の開催で大都市・観光地を中心に盛り上がりを見せた一方、慢性的な人手不足や実質賃金の伸び悩みによる生活者の外食頻度の低下を背景に、個人店の撤退が加速。コメを中心に特定食材の不足・高騰も相次いだ。業界はこの荒波をどう乗り越えるのか。関東有力業務用食品卸3社の幹部に課題と展望を聞いた。(司会・文=横田弘毅)
◆人手不足が深刻化 店舗間格差拡大の一因に
–25年の外食市場はインバウンド需要が引き続き大きな盛り上がりを見せた一方、飲食店の廃業増加や日本人の外食支出の抑制による息切れも目立った。1年を振り返って、印象に残ったのは。
A氏 われわれのお客さまも24年あたりから人手不足がかなり厳しいようで、極端なケースだと店を閉めてしまうところもある。最低賃金の引き上げもあって、夜間は時給1500円以上じゃないと人が集まらない。個人店の場合、年末年始の繁忙期も人手不足で長く休むところが目立つ。価格の高騰も深刻だ。毎月のように何らかの商品で値上げがアナウンスされている。コメも25年産の新米が出回り始めてからさらに上がっている。足元では冷凍水産品の不足・高騰が一段と進んでいる。輸入冷凍野菜もタイの水害などで必要な数量が揃わない状況だ。
B氏 価格と需給の問題は本当に悩ましい。原材料のひっ迫でさまざまな品目が異常な値段になっている。温暖化や異常気象が食に直結していることをひしひしと感じる。こうした中で最近はバター、チーズ、でんぷんなど、さまざまな食品の代替品が増えている。これは自然な流れだと思うし、安定供給と価格対応の両面でわれわれ卸にとっても重要な商材になりつつある。今後の開発にも大いに期待している。
明るい話題としては、やはりインバウンドの続伸だろう。25年の訪日客数は9月までに3000万人を突破した。その需要をつかむためにホテル・飲食店もあの手この手の工夫を重ねており、そのことがさらなる活況につながっている。ただ、最近は訪日客の人々も賢くなり、むやみに高いモノを買わなくなっている。ホテルで2000円の朝食ビュッフェをパスし、コンビニで済ませる人も多いと聞く。今後は訪日客に選ばれる価値の追求が大切になるだろう。
C氏 先ほどAさんから年末年始の繁忙期に休む店が増えているという話があったが、私どもは多少違った傾向を感じている。当社は24年の最終営業日、12月30日に過去最高売上げを更新した。例年、最終日は午前中に出荷を終えて午後は洗車などに時間を割いていたが、24年に関してはその余裕がなかった。また、年末にかなりの商品を納めたのに、1月4日の営業初日の受注も例年を上回っていた。人手不足で年末年始に開けられない店がある一方、開けている店にはお客さんが殺到しているようだ。ゴールデンウイークや旧盆にもこれと似た傾向が見られる。
–最近、都心のカフェ不足がよく話題になるが、これはインバウンドで客が増えたからではなく、コロナ禍を境にカフェの絶対数が減って残存店舗に客が殺到しているからだという見方もある。外食市場も一概に語れなくなってきた。皆さんが活動する関東でもエリア格差・店舗間格差が急速に広がっている。
A氏 首都圏の駅前や繁華街だと、店が閉まっても居抜きですぐに新しい店ができる。一方、郊外は閉店したらそれっきりというケースが増えている。ショッピングモールもテナントの歯抜けが非常に目立つ。
B氏 同感だ。都内は依然として飲食店の新陳代謝が非常に激しく、繁盛しているのに契約の関係で新店に切り替わるケースもある。地方は閉店の割合のほうが大きくなっているが、必ずしも人手不足や後継者難の影響ばかりとは言い難い。テナントビルの解体や再開発に振り回されて存続できなくなる店も多い。われわれも得意先の閉店で取引を失う場面が増えている。頑張って新規を開拓してもなかなか追いつかないのが悩ましいところだ。
–厳しい話が続いたが、逆に今の外食環境の中で盛り上がっている業態や商品は。
B氏 イベント系は元気だ。大きな野外イベントに得意先の飲食店が出店すると、メニューに使う特定の食材が爆発的に動く。イベント期間中に切らさないよう、ある調理冷凍食品を毎日10ケース以上届けたこともある。真夏は暑すぎてイベントの開催自体が難しいが、最近は3~11月ごろまで野外イベントがめじろ押しだ。商機は広がっている。
C氏 おっしゃる通りで、イベント系の瞬発力は目を見張るものがある。われわれも東京スカイツリーのイベントに出店した得意先に1日何便も届けたことがある。イベント限定の割高なキャラクタータイアップメニューが空振りに終わったこともあるが。
A氏 イベント出店やキッチンカーで単品が爆発的に売れるのは間違いない。ただ、花火大会のような大きなイベントが豪雨で当日中止になることもあるので、リスクは大きい。
少し視点が変わるが、最近の外食の動きで注目しているのは、居酒屋がここへ来て復調してきたこと。25年は30~40人規模の宴会予約が結構入り始めた。コロナ禍で激減した大人数の新入社員歓迎会なども復活しつつある。ただ、多くの居酒屋はコロナのころに個室スタイルに改装しており、以前のような大箱がだいぶ減っている。急速な宴会需要の広がりに、どう対応していくかが今後の課題になるだろう。
◆目に余る出荷制限 メーカー、供給責任果たせ
–冒頭でBさんがおっしゃっていたように、25年はさまざまな商品が品薄になった。物流需給の悪化に伴ってメーカーの配送条件の見直しも一段と進んだ。新年を迎えるに当たり、メーカーに求めることは。
B氏 このところ出荷制限が多すぎる。包材が間に合わないとか、テレビで取り上げられて需給の読みが狂ったとか、ささいな理由でギブアップ宣言を出す。納品リードタイムが伸びて卸の発注・在庫管理が難しくなっているのに、メーカーがこのような調子では困る。供給責任を果たしてほしい。
A氏 全く同感だ。お客さまのメニューに組み込まれている食材で出荷制限がかかると、お客さまはそのメニューを休売にせざるを得ない。代替品を探す負担もばかにならないし、切り替えが利かない場合もある。
C氏 出荷制限の問題もそうだが、納品リードタイムの延長なども最近は一方的な通達のような形でくる。委託物流業者が翌日納品は無理だと言っているので、延長に応じてくれと。もちろん、通常時のリードタイムが1日延びる程度なら、われわれも協力する。その代わり、供給責任をキチッと果たしてほしい。それから、メーカーは発荷主として対価を払って物流業者に配送を委託しているわけで、先方の代弁者のようにわれわれにサービスレベルの引き下げを求めてくるのはおかしい。荷主の立場が弱くなっているのも理解できるが、物流業者ではなく、われわれに寄り添ってほしい。
–メーカーと物流業者の間でサービス水準の維持に向けた密な協議が行われているのかは疑問。
B氏 ここ数年、企業のAI活用が急速に進展している。食品メーカーもAIをどんどん取り入れれば、製販調整や需要予測の精度が上がるはずだ。納品リードタイムも縮められるかもしれない。サービスレベルを下げないと物流を維持できないという考え方に固執すべきではない。
C氏 先日、日本食糧新聞にニチレイフーズの繁忙期の物流対応に関する記事が載っていた(25年10月15日付)。ほとんどのメーカーはゴールデンウイーク、旧盆、年末年始の長期連休中に受注・配送を止めてしまうが、ニチレイフーズは連休中も地域の需給実態に合わせて配送可能日を設けることで、連休前の荷量波動を抑えている。これによってニチレイフーズ側のオーバーフローを回避できるだけでなく、卸側の入荷作業と在庫の平準化にもつながる。そういう内容だった。この記事は食品物流の在り方を見直す契機になるかもしれない。われわれもメーカーの人々に記事を紹介し、社内でニチレイフーズの手法を共有するようお願いしている。委託物流業者との前向きな話し合いが進むことに期待している。
–弊紙の記事が物流の最適化に少しでもお役に立てるのなら、望外の幸せ。最後に皆さまの会社の新年の重点課題を。
A氏 リードタイム延長の影響もあって在庫が増えているので、アイテムの絞り込みを急がなければならない。以前から在庫対象アイテムについて一定の基準を設けてはいるが、ちょっと持ちすぎた感がある。唐揚げとギョウザだけでも相当数に上る。ここを圧縮していけば、倉庫作業の簡素化・合理化にもつながる。減らすべきものは思い切ってカットする。
B氏 システム更新の流れと並行して受発注のオンライン化に力を入れていく。当社はお客さまに積極的にオンライン化を呼び掛けてきたわけではないのだが、最近はお客さまのほうからスマホでの発注を求められる場面が増えている。コロナ前とは環境が大きく変わってきた。当社側の業務効率化にもつながることであり、今後はより能動的に取り組んでいく。一方、当社からメーカーへの発注については、まだFAXのウエートが高いが、メーカーはオンライン受注分を優先的に処理する方向に向かっている。FAXだと納期案内を送ってもらえないケースもある。納品リードタイムの圧縮を再度検討してもらうためにも、オンライン化でお互いの処理時間を縮めていく必要があるだろう。
C氏 当社はコロナ後の回復が早く、売上げもここまで順調に伸ばすことができた。しかし、値上げの追い風はひと頃に比べだいぶ弱まっており、今後は大きな伸びが期待できない。その中で選ばれる卸であり続けるためにも、サービスを強化してお客さまに入り込んでいく必要がある。今まで以上に近い距離感でお客さまとの信頼関係を築き上げる年にしたい。
●A氏おすすめ
雪印メグミルク「絞って焼くだけ!ベイクドチーズケーキの素」
幅広い業態でニーズの高い簡便調理デザートの新顔。北海道産クリームチーズを配合したぜいたくなスペックで、25年秋の発売直後から活発に動いている。さまざまな素材との組み合わせでバリエーションも広がる奥深い一品。規格=500g(冷蔵)
●B氏おすすめ
テーブルマーク「ダージーパイ風大判から揚げ」
台湾の伝統的な屋台料理、ダージーパイをモチーフにした大判タイプの唐揚げ。花椒や唐辛子の風味とざくざくした食感がオリエンタルムードを演出。屋外イベントに採用され、爆発的な出数を記録したことも。規格=800g/4枚(冷凍)
●C氏おすすめ
ちゅらゆーな「早摘み生もずく」
沖縄いぜな島で育ったぬめりとコシのあるプレミアムな生もずく。味付けされていない自然な風味で、夏はそば代わりに、冬は鍋の具材にと、使い方豊富。産地訴求でメニュー価値を高められるのもポイント。規格=1kg(冷凍)












