エルヴェ・ティス氏が初来日 「分子ガストロノミー」論講演

2006.03.06 311号 6面

フランス国立農学研究所(INRA)の物理学者、エルヴェ・ティス氏が初来日し、服部栄養専門学校で「分子ガストロノミー」の講演を行った。

「分子ガストロノミー」とは、科学で料理を解き明かすという研究。現在料理に科学を取り入れたエルブリのフェラン・アドリア氏や、フランスを代表するミシュラン三ツ星シェフ、ピエール・ガニエール氏らの料理が高い評価を得ているが、ティス氏は彼らに影響を与えた人物として知られている。特にピエール・ガニエール氏とは、週に1度は互いに意見を交換し合い、ティス氏の理論をガニエール氏が実践して、常に新しい料理を生み出しているという間柄である。

「分子ガストロノミー」研究は、1988年、オックスフォード大学教授の物理学者とともに、ティス氏が創設したものである。まず、歴代の料理本のレシピの検証と科学的実験を行い、中身を分類することからスタートした。さらに、フランス料理の伝統的なソース350種をすべて作り、それぞれの分子構造を顕微鏡でチェック。これらのソースに秩序を見つけ、数式化すると23の種類に分類できることを突き止めた。

ティス氏のレシピの材料リストには、通常の食材や調味料のほかに、液体窒素、エタノールアルコール、試験管などが並ぶ。調理方法は化学式だ。食材の状態をG(気体)、W(液体)、O(油脂)、S(固体)で表し、それぞれの分子のつながりを、/(分散)、+(併存)、⊃(包含、結合)、σ(重曹)で記す。この2つの要素を組み合わせることで、あらゆる料理の成り立ちが説明できるという。

理解するのは難しいが、実際にティス氏の理論は世界中に広がりを見せており、現在では、1年おきに「分子ガストロノミーに関する国際ワークショップ」を開催している。

1999年からはフランス国内での「分子ガストロノミーデー」や、2000年から「分子ガストロノミーの月例セミナー」を開催している。最近では世界中から講演依頼も多い。

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