関西版:イートアンド、「大阪王将」軸に全国展開目指す

2006.08.07 317号 6面

外食各店はライバル店と戦うだけでなく、中食の動向にもアンテナを張り、取り寄せをはじめ内食トレンドも気になるところ。垣根が低くなりつつある3チャネルだが、お互いに牽制し合う状況は続いている。だが、外食と中食をうまくコラボさせる(株)柿安本店や、外食と内食を同時に伸ばすイートアンド(株)は店舗のブランド化に成功している。

イートアンドは、先代社長がターゲットを餃子に絞り、大阪の京橋に「大阪王将」1号店を出店してから今年で37年になる。関西では町の中華食堂として認知度の高い大阪王将を主軸に、ラーメン「よってこや」、カフェ「コートロザリアン」など現在13業態を展開。「食べること(イート)」の提供に加え日常の生活食文化に貢献する気持ちを「プラス(アンド)」したいと、02年に社名を大阪王将からイートアンドに変更した。前期売上高は90億円、うち大阪王将の店舗売上げが40億円、その他の外食業態が20億円、大阪王将の冷凍食品の販売で30億円を上げている。

大阪王将は「安くてうまくて清潔で、お腹いっぱい食べられる」をコンセプトに、2年修業してのれん分けする方式で関西圏を中心に店舗数を増やしてきた。03年には「のれんチャイズ」をスタートし、関東や地方にも積極的に店舗出店を始め、前期23店舗、今期26店舗を加え、今期末には180店舗展開を計画している。

FCシステムとのれん分けを融合させたのれんチャイズとは、開業から1年間は本部が指導を行うが、看板代の1%だけでロイヤルティ制度をなくし、フランチャイジーに運営責任を持たせるというもの。チャーミングな店舗デザイン、店舗別のメニュー構成でそれぞれが地域特性を生かした店づくりをしている。

「新事業を始める上で、FCシステムは買い物をするように気軽にスタートできる半面、うまくいってもいかなくても発生するロイヤルティが後々ストレスとなる。ストレスをなくし、店舗運営の責任の所在を明確にした」と文野直樹社長。「店舗数を追うわけではない」としながら、「多店舗展開する理由がひとつだけあるとすれば、餃子の原価を下げられること」とし、当面は原価を下げる分岐点の200店舗、最終的には500店舗展開を目指している。

全社売上高の3分の1を占める小売部門は、大阪王将の看板商品「餃子」を国内の提携4工場で生産し、唐揚げなどの中華メニューは中国・青島周辺の工場4ヵ所で生産している。冷凍食品の小売効果や、「食い道楽」イメージの「大阪」が名前に付くことも、他地区でのスムーズな出店につながっている。

一時、勢いが落ちていたイートアンドの急激な盛り返しは、日常食として大阪王将をブランド化したことや、のれんチャイズ、小売量販店販売だけが理由ではない。昨年末にはレストランとライブハウスを融合させた「ベロニカ」、今年5月にはカジュアルフレンチ「ル・プレ」など次々と新業態でトレンドをつくることも強い企業体質の源となっている。

ラーメンブーム時に業績を牽引したのは、海外にも3店舗出店し現在59店舗展開のとんこつ醤油「よってこや」。今後は、よってこやをラーメン業態の核に据え、新ブランドの鶏パイタンらーめん「よりみち屋」を年内に8店舗オープンさせ、その後、手打ち担々麺、付け麺の専門店と「らーめん」ブランドで多角化を図る。カフェ業態は、香港にも展開している「コートロザリアン」の進化版「アロハス」を、この夏東京で出店させ新しいカフェ需要に備える予定。

イートアンドは新たに、新規出店に備えて店舗内什器などを中国から仕入れる輸入業部門の開設や、調理、インテリア、外国人向けの日本語接客サービスといった、飲食業に本気で携わりたい人への教育アカデミー部門の立ち上げに取り組む。外食企業が一方的に仕掛けるのではなく、個人と企業のアライアンスも目指している。さらに、飲食業への人材派遣業もこの秋に開始する計画だ。

「生活に根ざし、町になくてはならない日常食の店づくり」を信条としながら、今期売上高100億円、08年度の上場も視野に入れ、09年には売上高130億円を目指している。

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