外食史に残したいロングセラー探訪(1)ばんどう太郎「みそ煮込みうどん」

2006.11.06 321号 12面

創業当時から根強いファン層をつかんでいる「ばんどう太郎」の「みそ煮込みうどん」。このメニューが登場した当初は、「うまい!」と言った客はいなかったというが、しかし「なぜか、もう一回食べたくなる」とやみつきになったリピーターが続出。今ではすっかり「ばんどう太郎」の顔として、なくてはならない一品となっている。

茨城県下をはじめ、関東地区に28店舗を(2006年9月現在)展開する「ばんどう太郎」の名物といえば、「みそ煮込みうどん」(890円)である。

一般的に煮込みうどんというと、冬期メニューのイメージがあるが、同店の「みそ煮込みうどん」は季節を問わず、1年を通して売上の上位に位置している。

26年前の創業当時からあるという「みそ煮込みうどん」は、常連客にはすでに、“おふくろの味”となっており、「親孝行企業」を目指す(株)坂東太郎グループならではの看板メニューともいえる。

この「みそ煮込みうどん」にはさまざまなこだわりがあるが、何よりも「味噌とダシと加減が大切」という。

ダシは、うま味、甘味、風味を大切にしたオリジナルブレンドの鰹節がベースであり、さらに具の鶏つくねから出るダシがコクを加えてくれる。以前は具として鶏肉を使っていたのだが、ダシも取れるようにと、今では鶏つくねに変えたそうだ。

鶏つくね以外にも具材が盛りだくさんで、長ネギ、インゲン、白菜、椎茸、赤板、天かす、卵などの具を使用している。これらの具材ひとつひとつには、それぞれ意味があり、例えば「天かす」で甘みを「半熟卵」でまろやかさを出す…といった具合だ。

これらのダシ、具材、うどん、味噌を合わせて、約7~8分煮込んで完成する。

「みそ煮込みうどん」に使用する器にも、「アツアツ感」を演出するための工夫の歴史がある。鍋敷き、鍋、ふた、コンロと改良に改良を重ねると同時に、お客はもちろん、スタッフにとっても安心して扱えるように配慮している。

13年前からは、「激辛みそ煮込みうどん」(960円)もメニューに加わった。唐辛子を使った辛さが後を引き、これもリピーターが続出しているという。「激辛みそ煮込みうどん」を提供する際には、ジョッキ入りお冷を一緒に出して「辛さ」を演出している。

定番メニューではあるが、時代やお客の好みの変化に合わせて常に進化を続けているからこそ、飽きられることなく、この「みそ煮込みうどん」は、ロングセラーを続けているのだろう。だが、マイナーチェンジを続けてはいるものの、「決められたレシピ通りに作ること」を徹底しているからこそ、いつ食べてもおいしいうどんを提供できるのである。

●企業データ

「ばんどう太郎」/企業名=(株)坂東太郎/総本店所在地=茨城県猿島郡境町長井戸 297─1、0280・87・3016/事業内容=「ばんどう太郎総本店」をはじめ多業種を手掛ける。茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉に28店舗を展開(2006年9月現在)。

◆料理の決め手:富山県産大豆など 赤味噌と白味噌をブレンド

「みそ煮込みうどん」の味の決め手は、やはり味噌。ばんどう太郎では、まず、味噌の原料となる大豆からこだわり、現在では富山県産を中心に数種類の大豆を使用している。そして厳選した赤味噌と白味噌をベースとする、オリジナルブレンドの味噌を作り、みそ煮込みうどんに使っている。このオリジナルブレンド味噌はセントラルキッチンで約3カ月寝かせ、熟成の頃合を見て各店舗に供給される。保管や管理の方法により味が違ってくるというほど、デリケートな味噌だ。

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