ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(8)マカロニ&チーズ専門店「S’Mac」

2007.06.04 329号 12面

アメリカにおける家庭の味の代表格であるマカロニ&チーズ。パスタは、低炭水化物ダイエットの大流行中は敬遠する人も多かったが、ブームもやや下火になり、カムバックした気配だ。台所が外へ出てしまった今、家庭の味を求める人は多い。ありそうでなかったアメリカの「お母さんの味」、マカロニ&チーズの専門店「スマック」は、各メディアにも取り上げられ、いつも多くの人でにぎわっている。(外海君子)

サリータとシーザー・エクヤさん夫妻は、ある日、ニューヨークのグリニッチ・ビレッジにある有名な「ピーナッツバター・カンパニー」でピーナッツバターとジャムのサンドイッチを食べていた。ピーナッツバターとジャムのサンドイッチは、子どもが学校に持っていくランチの代表格だ。妻のサリータさんは、「ピーナッツバターとジャムのサンドイッチとか、グリルド・チーズ(パンにチーズをはさんでバターを表面にぬり、フライパンで焼いたサンドイッチ)とかマカロニ&チーズの食べられるレストランがあったらどんなにいいかしら?」と夫のシーザーさんに冗談を言った。2人はそのときは笑い合うだけで終わったが、このアイデアが頭から離れず、その9ヵ月後にはマカロニ&チーズ専門のレストランを開いていた。

周囲の人々は、マカロニ&チーズの専門店なんて失敗するに決まっているからやめたほうがいいと忠告したそうだが、いったん火のついた2人は引き返さなかった。そもそも、2人は外食産業の経験は皆無だ。サリータさんは機械工学を、シーザーさんは電気工学を専攻し、プログラマーとして働いていた。

「専門知識が役に立ったのは、店の設計のときぐらい」とサリータさんは言うが、ほとんどの人が開店直後につまずくロジスティックスでも、エンジニアの2人は理路整然とシステムを構築していった。

定番のマカロニ&チーズは、アメリカンとチェダーチーズを使ったものだが、サリータさんは、チェダー、モツァレラ、ゴルゴンゾーラ、ゴート(ヤギ)、グリュイエル、ブリ、パルメザン、ミュエンスターなどチーズ各種を使って、それぞれの特性を生かしたオリジナルのマカロニ&チーズのレシピを作った。

一番人気のチーズバーガーは、牛ミンチ、玉ネギ、ニンニク、ケチャップ、マスタードを使ったマカロニ。アメリカ人の大好きなハンバーガーとチーズ&マカロニをコンビにしたメニューアイテムだ。モツァレラのマカロニは、モツァレラやローストしたトマト、生のバジルを使って、ナポリ風ピザの味を再現している。バリエーションの豊かさで、連日来ても飽きがこない。また、チーズ、肉類、野菜・ハーブ類から好きなものを選んで、自分好みのマカロニ&チーズを作ることもできる。

その昔、アメリカでも外食は特別のことだったが、今や、アメリカ人は食費の半分を外食に費やすようになっている。料理をしない人も増え、レストランでの食事のほか、テークアウトやケータリングなどの利用が広まった結果、家庭料理を口にすることが少なくなった。昨今のコンフォート・フードのはやりは、古き良き素朴な家庭料理へのあこがれがあるのだろう。

スマックでも、売上げの4割はテークアウトかデリバリー。家庭の味を家に持って帰って楽しむ人が多い。

●事業データ

店舗名=スマック(S’Mac)/所在地=345 East 12th Street, New York, NY 10003 /開業日=2006年6月/営業時間=日~木、日11:00~23:00 金、土11:00~翌朝1:00/面積=600平方フィート/席数=30/客単価=12~15ドル/一日来客数=平日200~300人、週末400~500人/スタッフ数=20人

●人気メニュー

(1)チーズバーガー(小5ドル75セント、中8ドル、大14ドル)=アメリカンとチェダーチーズ、牛ミンチ、玉ネギ、ニンニクのマカロニ。

(2)オールアメリカン(小4ドル25セント、中6ドル50セント、大11ドル)=アメリカンとチェダーチーズのマカロニ。

(3)バッファローチキン(小7ドル50セント、中11ドル50セント、大20ドル)=チェダーとアメリカンチーズ、チキン、バッファローウイング・ソースのマカロニ。

(4)モツァレラ(小5ドル75セント、中8ドル、大14ドル)=モツァレラ、ローストしたトマト、ニンニク、新鮮なバジルのマカロニ。

(5)ケイジャン(小6ドル75セント、中9ドル、大16ドル)=チェダーとペッパージャックのチーズ、ソーセージ、ピーマン、玉ネギ、セロリ、ニンニク、ケイジャン・シーズニングのマカロニ。

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